甘えられると嬉しい
前話のディルク視点になります。
仕事から可愛いお嫁さんが待つ自宅に帰宅した。今日は一緒に帰れなくて少し寂しいけど、可愛いお嫁さんが待ってくれていると思えば足どりは軽い。
「ただいま~」
「おかえりなさぁぁい!」
玄関を開けるなり、勢いよく可愛いお嫁さんに突撃された。これはもはやタックルでないかと疑うレベルの衝撃だったけど、うまく衝撃を受け流してお嫁さんを抱きとめることに成功した。
危ないからやめなさいと言うべきなんだろうけど…たまにこうやって抱きつかれるのが正直嬉しいくてやめないでほしい。俺がちゃんと抱きとめればいいんだから、と結局は今日も言わないんだ。
「…熱烈なお出迎えだね?」
「ディルクぅぅ、聞いてぇぇ!」
あれ?なんかロザリンドが涙目じゃないか!
「うん?わかっ『アンギャオオオス!!』
「「……………」」
「ディルクのギャオス(盛大な腹の音)を鎮めるのが先だね!ディルクにひもじい思いはさせないよ!食べながらにしよっか」
「…いやもう、ごめんなさい」
空気読めよ、俺の腹の音!!
しかし、ロザリンドは俺の腹の音に名前までつけている。やめてくれ。確かにギャオスみたいな鳴き声に聞こえるけども!
俺はロザリンドをお姫様抱っこに抱き直してリビングに移動した。ギャオ…じゃなかった腹の音にびっくりして涙はひっこんだみたいだ。よかった。
「じゃ、降ろすよ?」
俺はロザリンドを席に降ろそうとした。しかし、可愛いお嫁さんはしがみついてきた。
「やだ。ディルクのお膝で食べる」
ナニコレ、超可愛い。
ぎゅうっと俺にしがみつくロザリンド。仕事から疲れて帰ってきた俺へのご褒美ですか?
ロザリンドと頑張ったお陰でずいぶんマシになったものの、まだまだ獣人差別は残っている。悪意を感じても…いや、悪意ある相手だからこそしっかりと相手をしなきゃいけない。今日もそんな人を何人も相手して…………
「……………だめ?」
か わ い い 。
考え事がスポーンと飛んでいった。おねだりする俺のお嫁さん、マジで天使!いや女神!!
俺にしか出さない甘えた声で『ねぇ、いいでしょ?』と首をかしげる。
もちろん、いいです。むしろ、なんでもします。あああ、俺のお嫁さんが可愛すぎてつらい…!!
「ぐうっ…!?ど、どうしたの?」
「…今日はディルクに甘えるんです。べたべたイチャイチャするの!」
俺にしがみつくロザリンド。俺は顔をそらして衝動に耐えていた。
か わ い す ぎ る !
「……わかった。べたべたイチャイチャしようね」
俺はどうにか笑ってロザリンドを抱えたまま自分の席に行き、ロザリンドを自分の膝に乗せて席に座った。少し照れてるとこがまた可愛い。
俺は今、鼻の下を伸ばしているに違いない。
「ディルク、あーん」
「ロザリンド、あーん」
互いにご飯を食べさせあう俺達。美味しいご飯に可愛いお嫁さん…最高の組み合わせだね!
ああああ、癒される!満たされる!幸せ!今、俺は幸せです!ロザリンドもニコニコしている。可愛いなぁ。少し大きめに切ると、戸惑いながらも上目遣いで俺をうかがうのが…エロ可愛い。
「えへへ、ディルクだぁい好き!」
「くっ………お、俺も好き…あ、あああ愛してるよ」
ロザリンドの額にキスをした。いかん、可愛すぎて押し倒しかねない。
「えへへへへ」
しかし、なんで俺のお嫁さんはこんなに可愛いんだ…!ロザリンドにスリスリとすり寄る。彼女は俺にスリスリされるのが好きらしく、嬉しくてたまらないと言ってくれそうな表情になった。
「で、何があったの?」
ロザリンドから今日の出来事を報告されしました。
アルディン様…ついに告白したのか。本人はロザリンドを姉と思い込もうとしていたけど、ついに自覚したんだな。
ロザリンドはそれを断るのを心苦しいと思ったようだ。ロザリンドから聞いていた『げーむ』の話では、アルディン様はロザリア…ロザリンドと結ばれるはずだった。本当なら彼女は侯爵夫人ではなく王太子妃になるはずだった。どう考えても王太子妃の方が身分も上だし、彼女ができることの幅も広い。
本当に俺でよかったの?その疑問を、ロザリンドは吹き飛ばした。
「レティシア嬢に悪気はないでしょうけど、私は超・見る目がありますからね!うちのディルクは世界一素晴らしい旦那様なんだから!ディルクに比べたらアルディン様なんぞヒヨッコですから!」
「……え、そこ?」
そこが大事!とロザリンドは怒っている。アルディン様より、俺がいいなんて…ロザリンドは見る目がないよ。彼は俺より真っ直ぐで無垢だ。
でも、どうしよう。
すごく嬉しい。
「そこです!ディルクは私の最愛・最高の旦那様なんです!」
「……うん。ロザリンドも俺にとって世界一可愛いお嫁さんだよ。最愛のお嫁さんだよ」
「うえへへへへ」
ロザリンドは俺じゃなくても、誰かを愛したならその人と…きっと幸せになったと思う。
でも、それはあくまで『タラレバ』の話だ。俺はロザリンドを諦めない。彼女『と』幸せになるって決めたんだから。
「それで今日、やたらと甘えんぼうさんなのはどうして?」
「なんか罪悪感と当て馬感とディルクを微妙に落とされたモヤモヤ解消のために甘やかしていただこうと思いました。ディルクにちょっと甘やかしてもらえれば、私はご機嫌です」
「…俺もロザリンドに甘えられると嬉しいから、いつでも甘えてね」
なんて可愛いお嫁さんなんだろう。毎日甘えてくれていいのに。お世辞でも社交辞令でもなく、本心から甘えられたい。
「ああ、サービスしようか。今日は完全獣化で寝てあげるよ。ブラッシングもする?」
ロザリンドの瞳がキラキラと輝く。俺、獣人で良かったなぁ。他人に嫌われてもロザリンドが好きだと言ってくれるから、今ではこの毛皮が誇らしく思えるんだ。
「する!」
だよね。ロザリンドはモフモフもブラッシングも好きだもんね。
俺もロザリンドのブラッシングとマッサージが好きなんだよ。喉がついついゴロゴロ鳴っちゃうんだ。しかもこの後、ロザリンドが満面の笑みで抱きついてくる。天国は、ここにある。
「あああああ…幸せすぎる…!」
うんうん、同感。俺も幸せすぎるよ…。うっとりとロザリンドにすり寄る。ロザリンドは俺の腹を枕にするのが好きだ。俺もロザリンドと寝るのが大好きだ。
「…ロザリンド、甘えられると俺も嬉しいんだ。また甘えてね」
ぺろりと可愛いお嫁さんのほっぺを舐めた。はあ……なんて可愛いんだ。蕩けそうな笑顔は、本当に魅力的で毎日みていてもときめいてしまう。
「…うん」
ロザリンドは本当に最高のお嫁さんだ。しかしこのあと、ちょっと…だいぶスイッチを連打された結果、やり過ぎてしまった。俺のお嫁さんが可愛すぎるから仕方ない。
学校を無理矢理単位制にしといてよかった。俺がやり過ぎたせいでロザリンドが卒業できない…なんてこともあったかもしれない。
そんなことを考えながら、愛しのお嫁さんをベッドで堪能するのだった。
やり過ぎたとアワアワした俺に、可愛いお嫁さんは今日も可愛く笑ってくれる。今朝もとっても幸せだ。あ、もちろんちゃんと仕事に行ったよ。ロザリンドのおかげでものすごーく捗ったから、今日は早く帰れそうだ。
ロザリンド的に、ディルクは余裕のある大人なのですが、内心はそうでもないディルクでした(笑)
ちなみにディルクはアルディン様の無意識な恋に気がついていた、というお話。




