長く生きてても、わかんないもんはある。
久々にはっちゃけました。ルランの兄ドラゴン、ルルド視点になります。今回初登場です。
俺はルルド。ルランの兄ドラゴンだ。クリスタルドラゴンの成体仲間で人間のオンセンとやらに遊びに来たら、スタンピードに巻き込まれた。弟の恩人で友人のロザリンドに頼まれ、仲間と魔物をひたすら倒していると、獣人の武装集団が現れた。
「クリスタルドラゴン殿!助力を感謝する!皆、行くぞ!!」
『うおおおおおお!!』
金色獣人女の号令で、獣人達が突撃した。おお、なかなかやるなぁ。踏み潰したりしないように気をつけないとな。
「天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ!悪を倒せと人が呼ぶ!ツッコミ戦士☆カナッタマン!!」
なにあれ。
なんか、赤いピッタリした服を着た男がポーズを決めていた。他の仲間もなにあれと思ったらしく、ポカーンとしている。長く生きてても、わかんないことってあるんだなぁ。あんなにピッチピチの服を着るなんて…えっと…変態!きっと変態に違いない!
「てりゃああああ!」
変態、強いな。パンチ1発で魔物数体ブッ飛ばしてる。しかし、動きが変だ。なんというか、弱そうな無駄がある動きだが強い。仲間達も変態が気になるらしく、チラチラ見ている。
「あ、やば!」
変態が普通の人間になった。
「あかん、死ぬ!マジで死ぬぅぅ!!」
魔物に追われて逃げ惑う元変態。先ほどの素早さはないし、丸腰だし、このままだと本当に死ぬだろう。助けようとしたら、黒い影が元変態を助け出した。
「影に生きるは我が運命…悪に鉄槌を!ウルファネアシャドウ!!」
変態増えた。
でも、さっきの変態よりなんか目立たない。あんまりピチピチもしてない。
「ジャスパー殿!我が夫を助けてくれて感謝する!!」
金色獣人女が黒い変態に話しかけた。
「ジャスパーではありません!ウルファネアシャドウです!」
否定する黒い変態。名前、隠してるのか?変態だって知られたくないのか?
「そうですよ、おじょ…じゃなかった奥様!!ジャスパー様は死んだことになってるんだから、ジャッシュ様って呼んであげないと!」
なんか金色獣人の子供にまとわりつかれた獣人の男が叫ぶ。
「だからウルファネアシャドウですから!!」
「つーか、なんでうちの子供ら連れてきたんや、アンドレェェ!!」
「だ、だってお子様達…連れていかなきゃチョン切るって脅すんですよ!?むしろどんな教育を施してんですか!?」
チョン切るって何を?恐ろしい子供達だな。
「申し訳ない!お前達、アンドレをいじめんのはやめなさい!!」
「はっはっは、我が子達は元気だな!」
多分、子供がああなのは嫁のせいじゃないだろうか。ちゃんと叱れ。しつけは大事だぞ。
というか、あの子供らは金色獣人女と変態の子供だったのか。
「やだ!」
「アンドレはパパをしごとにつれてく、わるいやつだ!」
「だからいじめるのだ!」
「おなかすいたー」
大混乱である。
「…とりあえず、魔物を倒すのが先では…」
俺の言葉により戦闘は再開された。変態は薬で魔力を回復していた。
「変身!ジュアッ!」
変態は銀色になった。あと何個ぐらいパターンがあるんだろう。気になる。
「カナトラマンですか…確かそれ、3分しかもたないんですよね?」
「ジェアッ!」
頷いてた。3分しかもたないとか、ナニソレ。仲間達も興味津々だ。こいつ面白いなぁ。
多分3分経った辺りでピコピコと胸が点滅して鳴り出した。
「ジュアッ!ヘアッ!!」
「わかりました!皆さん、カナトラマンが広範囲攻撃をします!!下がってください!!」
黒いのは、なんでカナトラマンが言ってる言葉がわかるんだろう??
※全異常無効アクセサリーによる効果です。カナトラマンがしゃべれないのは状態異常扱いになるらしいです。
「ジュアァァァッ」
カナトラマン?の腕からなんか出た。敵がどんどん溶解していく。なんて恐ろしい攻撃だ!見た目もえぐい!!
『ぴんぽんぱんぽ~ん♪アシッド光線は酸性です。有毒ガスを発生する恐れがありますので、他薬剤との併用はおやめください』
「そも、他薬剤使わんわ!」
変態はよくわからんことを言っていたが、また弱そうな人間に戻った。頭は悪くないらしく、すぐ下がって何かを飲んだらペンみたいなやつを掲げた。さっきもやってたな。
「変身!!」
『おめでとうございます!大当たりぃぃ!!』
「は!?」
変態は大魔法使いみたいな格好になった。なんだ、普通じゃないか。
「ロザリンドちゃん!忙しいとこ悪いけど、大当たりって何!?初めて見るんやけど!」
変態だった弱そうな男はロザリンドに魔具で連絡しだした。ドラゴンは耳がいいから、ロザリンドの声もばっちり聞こえる。
「大当たり??ああ、魔力・力が10倍になります。おめでとうございます。適当に魔法を使ったら?」
「お、おう…ファイヤーボーるぅぅぅ!?あかん!全員退避ぃぃ!!」
特大の火球に魔法を使った本人がビビっていた。この人間、超面白い。
「あかんやんか!むっちゃ周囲が危ない!」
「適当に加減してください。考えるな、感じろですよ。最悪杖で殴るだけでも強いですよ、それ」
面白い人間は早速ぶん殴ることにしたらしい。オーガを杖でぶん殴ったら、オーガに穴があいた。
「すぷらったぁぁぁ!!あかん!殴ってもあかん!!」
自分でやっといて大騒ぎする男。とりあえず殺されないように近くにいた魔物を尻尾でブッ飛ばしてやった。
「ロザリンドちゃん!魔法は周囲が危ないし、物理はエグい!!使いにくいわ!」
「ワガママだなぁ」
「ワガママ違う!なんかどっちを選んでも人間として大切な何かが減る!!」
「じゃ、支援魔法使えば?」
「使ったことない」
「大丈夫、バイ○ルトとかピ○リムとかス○ラとか適当でも発動するから」
「そんな適当な…ほな、ピ○リム」
獣人達がものすごーく速くなった。いや、俺もか。しかし、速くなってもちゃんと対応できる。この魔法、すごいな。
「あかん!効きすぎや!いや、いいのか?ぶつかったりはしとらんし……」
アワアワしている元変態は本当に面白い。ちょっとほっこりしていたら、仲間達が慌てて叫んだ。
「ルルド、ボス個体が出てきたぞ!見たことないやつだ!気をつけろ!!」
確かに見たことないやつだ。ドラゴンのブレスも効かない。ゴースト系?いや、我々のブレスはゴースト系にも効果があるはずだ。あれは…なんだ?
複数の魔物を子供が無理矢理くっつけたかのような歪な魔物。尻尾で弾き飛ばせるから、実体はあるようだが…ダメージは無いようだ。
「はあっ!」
「ギイイイイ!?」
おお、金色獅子獣人の女の剣は効くようだ。しかし、他の獣人の剣は効果がない。あの剣…不思議な魔力を感じるな。
「カナタ!私に強化を!」
「よしきた!バイ○ルトォォ!!」
そして、女がでかくなった。
「シュシュ!?俺の、俺のシュシュがぁぁぁ!?」
いや、よく見たらでかくなったのではないな。
「なんでムキムキにぃぃ!?」
そう、金色獅子獣人の女は、筋肉ムキムキになったのだ。自分でやっといて嘆き悲しむカナタ…だったかな?面白すぎる。仲間達も雑魚を駆除しながらプルプルしている。面白いよな、あいつ。
「お母様、素敵」
「まま、つよーい」
「おかーさま、やっちゃえぇ」
「おなかすいたー」
子供達には好評らしいな。1名やたらマイペースなのがいるようだが。
あ、なんかボス個体をアッサリ一刀両断した。強いな、カナタ?の嫁。
「あかぁぁぁん!!これはあかんやろ!ロザリンドちゃん、攻撃力弱める呪文なんかなかったっけ!?シュシュが、俺のシュシュがムキムキにぃぃ!!」
「ええ?ムキムキに??えーと、えーと…思いつかない…フ○ーハ?」
「それはブレスとかを緩和するやつや!」
「ス○ラ…」
「防御力上げてどーすんの!」
「いや、毒をもって毒を制す的な…」
「悪化する未来しか浮かばんわ!」
「奇遇ですね、私もです」
「俺は本気で困ってんのにおちょくらんでやぁぁぁ!!」
「ぶふっ」
「ぐひゅっ」
ついに仲間達が吹き出した。ロザリンドもカナタも面白すぎる。
「…効果切れを待てばいいんじゃないか?」
「それや!」
「それだ!」
金色獣人は、翌日までムキムキだったらしい。なんか討伐を手伝ったお礼にちょこれいとなる菓子をもらった。
クリスタルドラゴンにちょこれいとは流行り、カナタ達と俺たちはとても仲良くなるのだった。
たまにうっかりドラゴンのまま買いに行って大騒ぎになり、カナタにしばかれる。しかし世界広しといえどもドラゴンに紙で作った武器で挑むのはカナタぐらいだと思う。あの武器、派手な音がするわりに痛くないんだよな。
我々はロザリンドに続き、愉快な人間の友を得た。人間の生は短いが、本当に面白い。彼らの命が尽きるまで、よき友として見守りたい。
クリスタルドラゴンは好奇心が強く、面白い人間が大好きなようです。
彼方さんは本当に動かしやすくて楽しかったです。




