ランチタイム
お昼は皆でとります。天羽故ちゃんは基本クラスメイトと食べてます。貴族クラスですが、別クラスです。たまに一緒に食べますが、今日は来ないと聞いてます。
兄、アルフィージ様、凛花、ラヴィータ、シーダ君はいつも一緒に食べてます。クラスは兄とアルフィージ様が一緒。凛花とラヴィータとシーダ君が一緒。凛花とラヴィータはウルファネア王家というか、ジューダス様が後見人になっているので貴族クラスです。ただし扱いは低位貴族。
ちなみに最初は高位貴族扱いで国賓だったのですよ。なにせ世界を救った勇者様なんだもの。
「高位貴族なんてハイソな世界は無理ッス!自分は庶民ッスよ!?」
しかし根っからの庶民な凛花には色々無理だったらしい。ジューダス様に直談判した結果が今の待遇である。ラヴィータも凛花と居たいと同じクラスになった。今でもこの学校が合わないらしく、昼食時に愚痴っている。
「無理ッスよ…自分には無理なんスよ…」
なんというか、確かに令嬢よりは仕事に疲れた呑み屋のおっさんみたいだなぁ。
「諦めたらそこで試合終了だよ」
※やたら渋いおっさんボイス
「…ロザリンド先生…バスケがしたいです…」
「ばすけ?」
アルディン様が首をかしげた。凛花の世界のスポーツですよと説明したら、アルディン様がやりたそうだった。
「道具がないから、今度やるッスよ!」
頼まれたので道具をつくってあげた。しかしミセス・サリーとディッツ君に叱られたらしい。足を出すのがはしたないとのこと。ドレスでバスケをやった凛花も悪いと思う。いや、そもそも淑女はバスケをしないかな?
「さて、凛花さんに大事なお話があります」
「はい?」
「ディッツ君」
「はい…これからよろしくお願いいたします」
優美に礼をとる美青年。
「はい??」
展開についていけない凛花さん。
「今日から凛花の従者さんでーす」
「はいぃぃぃぃ!?」
あ、馬鹿!そんな大声…あ、ミセス・サリーが見逃してくれた。ありがとうございます!
「色々あって、ジューダス様がつけてくれた従者候補生ですよ。優秀だからありがたく色々教えてもらいなさい」
「え、や、嫌ッス!別に自分は困ってないッス!」
「リンカ様、それでは私が困ります。私は家族のために働いているのです」
「……え?」
そして若干私が盛りつつディッツ君ちの事情を話した。ディッツ君は貧乏男爵家の長男で、家族のために、妹が嫁ぐために必要な持参金を稼ごうと頑張って働いているそうなのです。
「…リンカ…俺からも頼む」
貧乏で本当に食うに困るレベルの困窮をしていたシーダ君が同情したのか頭を下げた。家族のために働くお兄さんを思い出したのかもしれない。
ミルフィもお願いしますわと頭を下げた。
「………わ、わかりましたッス!よろしくお願いしますッス!」
「…はい」
ディッツ君は穏やかに微笑んだ。
さて、今日のお昼は…鴨のローストがメインみたいですね。ダンには劣るが、ここのシェフが作るランチはなかなかだ。サラダも毎回ドレッシングが違うし、勉強になる。手間がかかった贅沢ごはん。今日のはすりおろしリンゴが入ってるな。皆が黙々と食べている。うむ、おいしい。
「リンカ様、カトラリーはそっちですよ」
コソッと教えるディッツ君。凛花も素直に頷いている。これはなかなか当たりな人材だったかも。
「そういえば……」
アルフィージ様に話しかけたらにっこり笑ってくる。嫌な笑顔だなぁ。
「私はルーから聞いてるよ。なかなか楽しいことになっているようだね。ロザリンド嬢が転校するなら、もちろん私も行くよ。その方が楽しいだろうから」
「えっ!?」
ディッツくんが驚いた。
「貴方を含めて中途半端に放り出して転校したりはしませんよ。シーダ君達はどう?」
「俺は…まあ学校はどこでもいい」
シーダ君、ウルファネア出身の低位貴族だから、わりと絡まれるらしい。ただしミルフィの婚約者だから、表立って絡む輩は少ないけど。
「自分は転校したいッス!」
凛花は勢いよく挙手した。ラヴィータは苦笑している。
「僕は凛花についていくよ。どこだって、凛花が居たら楽しいからね」
「ラヴィータ君…」
ラブラブですね。というか私も…私もディルクといちゃつきたいぃ!!ディルクぅぅ!!
「あの、リンカ様とあちらの方は…」
ディッツ君がこっそり聞いてきた。
「恋仲なんだよ。一応ウルファネア国王の養子だから王太子?もしかしたら彼の従者としてつくこともあるかもだから、仲良くしといた方がお得だよ」
「なるほど」
なかなか空気も読めるし、ディッツ君は本当にお買い得物件だったかも。
そんなことを考えながら絶品の紅茶を飲む。今日の紅茶もおいしい。今後について考えながらも紅茶を堪能するのでした。
もう面倒だからいっそ転校したいんだけど、そうもいきません。どうしたもんかしら?
「あ、何かやらかすなら参加するから是非声をかけてね?」
「やらかす前提はやめてください!私は、私は平穏な学校生活が欲しい!」
アルフィージ様がイイ笑顔で言いやがりました。ちくしょうめ!
「…無理でしょ。自分からトラブルに突っ込んだじゃない。さっきも」
「兄様!?」
「そうですわね…そこがロザリィの良いところなのですが…結果的に平穏を自分で遠ざけている気がしますわ」
「ミルフィ!?」
「…俺もロザリンドのおかげで助かった部分があるからなんとも言えないが…自分でトラブルを起こすことも多いよな?」
「シーダ君ひどい!」
「まあ、ロザリンドちゃんッスからねぇ」
「ロザリンドだからな」
「お嬢様ですからねぇ」
「み、皆して『私だから』ってなんだああ!?」
「付き合い短いけど、なんかわかる気がします」
「ですねえぇ」
リリアンとリリアーナまで!?大人達も苦笑している!味方がいないんですけど!皆酷いと思います。帰ったらディルクに慰めてもらおう…ディルクが恋しいです。
もはや魔法の呪文となりつつある『ロザリンドだから』大概がこれで解決する不思議です。
認めないのはロザリンド本人だけですね。