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できる旦那様

 ディルク視点になります。

 フィズとユエさんの婚約披露パーティのため、ロザリンドはとても頑張っていた。ユエさんの指導や、先輩としてパーティ開催の注意事項なんかも解りやすくなるよう資料を作ったりしていた。

 それに水をさすなんて許せない。俺はとても怒っていた。出来る限り素早く動き、ただひたすらに賊を捕縛していく。賊を全て捕らえた時、凛とした声が響いた。



「皆様、余興はいかがでしたか?」



 うちのお嫁さん、超美人。思わず見惚れてしまうほど、ステージに立つロザリンドは綺麗だった。これが余興ではないことなど、フィズを含めた主催者達は理解している。

 しかし、賊が婚約披露パーティに出たなどフィズにとって…ロスワイデ家にとって不名誉だろうし、ロザリンド達が頑張ったパーティをこんなことで台無しにしたくはない。


 ロザリンドは全力でこれはあくまでも余興にして、無かったことにするつもりなのだろう。


 ロザリンドが俺にウインクした。大丈夫、任せてと俺は頷いた。こういう時『繋がっている』のは大変便利だ。ロザリンドの意思をくみ取り、俺は迅速に行動した。


「実は今回、バタフライ・ローズの革命的最新ドレスの発表とモデルとして、こちらの故様にご協力いただきました」


 ロザリンドの綺麗な声を聞きながら、俺はパーティ会場を後にした。





 しかし、流石はロザリンド。魔獣に戦闘を任せたときに違和感があった。普段の彼女なら率先して戦うはずなのにと思ったのだ。俺の手には映像記憶魔具が2つ。


 さっさと片付けて、パーティのために着飾った可愛いお嫁さんを愛でよう。



 不本意だが、俺はナイト・ヴァルキリーに変身した。騎士を辞めた俺に断罪する資格はない。だが、可愛いお嫁さんが頑張って準備したパーティを台無しにしようとした愚か者は許せない。その結果がコレだ。なんだかんだで便利に使い分ける自分に苦笑してしまう。




 仮にも騎士団長を勤めているフィズ。ロスワイデは武家貴族で、騎士団長を多く輩出している。そんな家の警備を、盗賊崩れが突破できるか…答えはノー。

 カーティスや俺、ロザリンドレベルならまあ…突破するだろうが、凡人には不可能。つまり、賊は出来るはずのないことを成し遂げたわけだ。


 だが、何事にも例外は存在する。内通者がいたなら話は別だ。警備にだって小さな穴はある。いや、それ以前に潜んでいたという可能性だってある。


 騎士達が賊に尋問していたが、賊は内通者について知らなかったようだ。しかしロザリンドがあらかじめ設置していた映像記憶魔具に手引きした人間が映っていた。

 ロザリンドはどこまで知っていたのだろうか。

 それから、騎士団のナイト・ヴァルキリーへの信頼度、まずいレベルな気がする。情報をあっさり開示してくれた。いや、助かるんだけどさ?けど、それでいいのかな?絶対よくないよね!?


 俺はアルディン様の護衛騎士・ヒューとアデイルに相談して連携することにした。ヒューがアルディン様を警護し、アデイルが協力してくれることになった。主犯はまだパーティに参加している。手引きした犯人は、とある貴族の従者だった。騎士達に確認したが、あれから帰宅した貴族はいないので、犯人は確実にパーティ会場内だ。


 実は、ロスワイデ家はいまだに俺に対して低姿勢だったりする。フィズが昔俺にやらかしたことを重く考えていて、ロスワイデ侯爵はいまだに会うたび頭を下げる。しかも今回ロザリンドの協力も大変恐縮されたらしい。なのでちょっとお願いをさせてもらった。商談のために一室客室を借してほしいと侯爵に頼んだのだ。侯爵は快諾してくれた。


 ふとステージに目をやる。うちのお嫁さんは今日も綺麗だ。特にロザリンドの脚線美は素晴らしい…客もロザリンド達の脚線美に釘付けだ。拐って帰りたい。あの脚は俺だけのものなのに…


「あたっ!?」


「小娘の脚なら帰って存分に愛でればいいでしょ!さっさと探す!」


「…はい」


 アデイルに叩かれ正論を言われてしまい、素直に頷いて目的の貴族を探した。





 目的の貴族はすぐに見つかった。おいこら、お前らうちの嫁を眺めてるとか余裕だね?いかんいかん、殺気を出したら逃げられるかも。


「ごきげんよう、ワースト伯爵」


「え?あ、ああ。ごきげんよう、バートン侯爵」


 できるだけにこやかに、友好的にを心がける。


「その、ワースト伯爵…少しご相談がありまして。実は我がバートン家で手がけている事業があるのですが、聡明な貴殿に協力していただきたいのです。話だけでも聞いていただけませんか?」


「バートン家のですか?喜んで!」


 よし、釣れた!バートン(うち)の事業に参加したい貴族は多いから、失敗しないとは思っていたけど良かった…


「では…ここでは話ができないので一室用意していただいています。そちらでお話ししましょうか」


「ええ」


 その笑顔、いつまでもつかな?





 そして、別室に待機したアデイルが、部屋に入ったワースト伯爵本人と従者を素早く捕縛した。猿ぐつわも忘れない。叫ばれたら厄介だからね。


「むー!?」


「すいません、ワースト伯爵。騙したんです」


「むむむ!?むむ!?」


 何故って言ってるのかな?何故って聞かれたら、答えてあげるが世の情け…かな?


「だって、先に貴方がフィズ…ロスワイデとロザリンドを裏切ったから」


 俺はにっこり笑った。


「知りませんでした?俺は妻や友人を害するモノを許さないんです。仕方ないですよね、ロザリンド達がもし居なかったら…フィズが死ぬ確率はゼロじゃなかったのですから。妻が頑張って作り上げたモノを台無しにしようとしたのですから…私に報復されたって仕方ないですよね?」


「うわぁ……おっさん、正直に全部話せ!この男、今なら生皮剥がして酢をぶっかけるとか、爪を1枚ずつ剥いで回復魔法かけて延々痛みを与えるとかしかねないぞ!」


「……………」←怯える伯爵と従者。


「……………」←複雑な俺。


 あのさ?アデイルは俺を何だと思ってるの?しないよ?物理的にやる必要ないから。確保だけしてロザリンドに夢でやってもらうのはアリかもしれないけど。

 しかし相手が怯えたのは好都合だから表情が読みにくい獣化した状態でワースト伯爵を見つめた。


「素直に、しゃべってくれるますよね?」


 それはもう聞いてない悪事まで話してくれた。後は騎士の仕事だからとアデイルが伯爵と従者を連行してくれることになった。


 これでロザリンドのとこに戻れる。俺は上機嫌でパーティ会場に戻った。






 うちのお嫁さん、なにしてんの?






「ロザリンドさまぁぁ!」


「ユエさまぁぁぁ!!」


「ミルフィリアさまぁぁぁ!!」


「リンカちゃああああん!!」


 うちのお嫁さん、めっちゃキャーキャー言われてました。しかも男女問わず。

 いや、わかるよ?ロザリンドさんたらテンション間違えて歌とダンスまで披露しちゃったんだね?ミルフィリア嬢達もノリノリだね。

 俺の感情を感じとったロザリンドは、即座に方向を修正して婚約披露パーティを本来の進行に戻した。




 うちのお嫁さん、無駄にスゴい。能力の無駄遣いな気がした。



 しかし、やはりロザリンドが脚を他人に晒した事が気に入らなかった俺。帰宅したら、全力で脚を含めて愛でまくってやろうと思った。

 働いたぶん、ご褒美も貰わなきゃね。

 フィズに私の婚約者の脚が気になると相談されたので、むしろ気にならなかったら男としてまずいと言っておいた。そしてナニかを思い出したらしく、走り去った。

 なんだか、過去の自分を見てるようでとてつもなくいたたまれない。


 今他人事だから冷静だけど、昔の自分の醜態を思い返すと………あらゆる意味で痛い。

byディルク

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