私をレディにしてください!(本番編)
フィズから婚約披露パーティの招待状が届きました。ついに、婚約披露パーティです。
ディルクにエスコートされて会場を歩きます。立食スタイルなのですが、貴族達が我先にと料理を取っています。大変珍しい光景…かと思いきや、そうでもない。ローゼンベルクまたはバートンのパーティでもこんな感じです。
故ちゃんが大変だろうと食事メニューを引き受けたかいがありました。米・和食布教計画は順調です。
食べて美味しい、備蓄としても優秀な米は少しずつ他領地にも広がっています。
「おいしいわぁ。このお料理、確かバートン邸で食べた気がしますわ。バートン夫人、ぜひ我が家でもご協力願いたいですわ」
「ふふ、今日は親友達の晴れの日ですから、特別にシェフを貸し出しましたの」
いや、本当は私が教えたんだけどね!しかしロスワイデ家のシェフは優秀で、レシピと完成品を見せると問題なく料理を再現してくれた。
他に呼ばれても面倒なのであくまでも『友人の特別な日』だから『特別な友人』だからと言っておく。
「あら、ロスワイデ侯爵子息の婚約者様とも…ですの?」
「私の贈り人と同郷なんですの。故郷の料理でもてなしたいとおっしゃるので、助力したのですわ」
「まあ…」
バートン侯爵夫人…私は故ちゃんの味方だと示しておいた。まあ、そうそう私を敵に回したい貴族はいないでしょうから、故ちゃんのためでもある。
どうやら主役が出てきたようだ。会場内がざわついた。
「申し訳ございませんが、挨拶にまいりますので妻を返していただきますね」
ディルクが少しおどけて夫人に断りをいれてから私をエスコートしてくれる。いや、うちの旦那様、マジで最高。
幸せそうにフィズにエスコートされるユエちゃん。白はウェディングドレスにとっておこうと、大人びたワインレッドと黒のドレスにしました。故ちゃんの黒髪によく映えて美しい。とてもセクシーなドレスです。フィズと対のデザインになっています。彼も色素が薄いのでよく似合う。
今回の婚約披露パーティは、互いに婚約申請書にサインして、王の代理として来たアルディン様が受領して成立となる。私はまだ自分が社交界デビューしてなかったのもあり内々での祝いだったけど、婚約披露パーティは様々な思惑からする貴族が多い。
今回は正式にフィズの婚約者だと認識させ、ロスワイデの後ろ楯が彼女にあると示すためのものと思われる。
アルディン様が婚約申請書を受領し、宣言した。
「この二人の婚約を認める!」
そして、事件が起きた。
「この女を殺されたくなければ、動くな!」
野太い声が響く。故ちゃんを人質にとられてフィズは動けないようだ。
「へへっ、オレぁアンタに復讐する機会を狙ってたんだよ、団長サマ。オレらの仲間を殺した罪、オレらに詫びてもらおうか!テメェをいたぶって、この女も売り飛ばしてやるよ!」
「ユエは関係ないだろう!」
「ああん…そんなにこの女が大事か?そいつはイイコト聞いたなぁ…」
男は盗賊の残党かなんかだろう。よくここの警備を抜けたものだ。
「………が」
「ああん?姉ちゃん、なんつっ…だぁ!?」
「この下衆が!」
故ちゃんは男のわき腹に一撃いれて、さらにハイヒールで足を踏みつけた。怯んだところにスカートに隠されていたギミック…実はスカートは外側が巻きスカートになっており、取り外せるようになっている。外すと中はチャイナ服風のスリットスカートになる。そして故ちゃんはかの有名なセクシーヒロイン『ミネ・フ○コ』スタイルの太腿ガーターベルトに武器を仕込んでいた。故ちゃんは鞘付きのまま仕込んでいた短刀で殴り屈みこんだ男を気絶させ、さらに会場を占拠した男達を倒していく。
そして当然、大人しくしている私達ではない。
「カモン、可愛い子達!」
私も素早くスカートを外して機動性を確保しつつ、私の魔獣さん達を召喚して貴族を守らせる。
「大事な婚約披露パーティになんてことをなさいますの!許しませんわよ!」
ミルフィも激おこです。私の武器では威力が危ないからか、スカートに仕込んでいたボウガン(折り畳み式)と魔法を使っています。ミルフィはプリンセスラインのドレスだったのですが、巻きスカートを外すとミニスカートになります。さらにパニエの隠しポケットに色々仕込めるので同じタイプを着ているラビーシャちゃんのドレスは異様に重かったです。
「自分も負けてらんないッス!支援特化なめんなッスよ!」
凛花のスカートもミルフィと同じプリンセスラインだが、凛花は故ちゃんと同じようにあの呪いの杖を仕込んでいたようだ。凛花はディルク、シーダ君、フィズに支援魔法を使ってサポートしつつ、貴族達を結界で守った。
そして、全員賊を捕縛した時点で、私は高らかに宣言した。このメンツに勝てるのは、神レベルであろう。
「皆様、余興はいかがでしたか?」
真っ赤な嘘である。
しかし、賊が婚約披露パーティに出たなどフィズにとって…ロスワイデ家にとって不名誉だろう。故ちゃんが頑張ったパーティをこんなことで台無しにしたくはない。
私は全力で誤魔化した。ディルクにウインクすると、できる旦那様は頷いた。こういう時『繋がっている』のは大変便利である。
「実は今回、バタフライ・ローズの革命的最新ドレスの発表とモデルとして、こちらの故様にご協力いただきました」
上手な嘘をつくコツは、真実も混ぜることである。
「今や女性は清楚可憐なだけでは駄目なのです!戦う女性こそ至高の美!凛々しく戦う女性こそ美しい!そしてバタフライ・ローズは、新たなる挑戦をいたしました。はしたないとこの美しい脚を隠すのは勿体ない!むしろ伴侶を…意中の相手を普段は隠した脚で魅了する魅惑のドレスを発表いたします!」
嘘八百である。
しかし、意図を察したらしいミルフィや故ちゃんはモデルとして私の側に立ってくれた。凛花はマゴマゴしていた。ばかたれ。
「す、素敵ですわ!」
「素晴らしいですわ!」
「うむ…美しい…妻は着てくれるだろうか」
ドレスはとてつもなく好評だった。私が注目を集めたおかげで賊は余興とされ、なんとか誤魔化せた。その後は問題なく進行し、ユエちゃんの婚約披露パーティは無事終了したのでした。
さらに脚を見せたデザインのドレスがクリスティアで流行し、脚フェチが増えたのはまた別の話です。
俺の婚約者の脚がとても綺麗だった。隠したいが眺めていたい気もする…むしろ触りた……いかんいかん!トレーニングして煩悩を発散せねば!
byフィズ




