私をレディにしてください!(パーティマナー編です)
「パーティマナーはぶっちゃけ実践あるのみ。どこが足りないかを実際やってみて学びましょう。慣れれば失敗してもフォローできますし、具体的に何が苦手か知ることが大事です」
というわけで、実際のお披露目パーティに近いホームパーティをバートン邸(本邸)で開催することにしました。
どこから情報を仕入れてくるのか、参加したいと言う貴族もいたので参加していただきました。身内ばかりだと緊張感が薄くなりますしねぇ。
身内メインパーティとはいえ、手を抜けません。バートン領が豊かであることや商品の売りこみに大切な場であるからです。今回のウリはもちろん、例のアレです。
「パーティ、フィズは出られますか?」
「出ると言っていたよ」
「細かな部分はディッツ君にフォローをお願いしてあります。大まかな部分はフィズに頼んでくださいね」
「わかった」
あっという間にパーティ当日。主催者としてディルクにエスコートされつつ挨拶まわりをする。今日もディルクはイケメンです。さっきなんかはにかみながら『その…今日もとても可愛いよ、ロザリンド。このまま誰にも見せないで、拐っていきたいぐらいだ』とか言われちゃいました!きゃー!!
うっかり拐って!マイダーリンとお願いしそうになりました。ディルクが…私の旦那様がイケメン過ぎて辛い!後でイチャイチャしよう!そうしよう!
ざわめきと共に美男美女が入ってきました。フィズと故ちゃんです。背後にディッツ君が控えています。すごいな、ディッツ君。ジャッシュ並みに気配がない。
フィズはともかく、故ちゃんが誰なのかとかフィズとどういう関係かとか、皆様興味津々みたいで注目を集めています。
故ちゃんはアイスブルーのマーメイドラインドレスを着ています。スレンダーな故ちゃんによく似合っていますね。こちらに来てから伸びた髪は綺麗にまとめられ、百合の花飾りがあしらわれている。黒髪に白い百合が映える。
マーメイドドレスにも同じモチーフがあしらわれ、清楚で可憐な印象を与えている。実はこのドレス、メイドインロザリンドの新商品なのだ。ノーコルセットドレスなんですよ!
窮屈なコルセットをやめたい。
しかし、美しいボディラインを作りたい…機能性と着心地、美しさを兼ね備えた夢のドレスなのです!
難があるとすれば、それは素材でしょうか。実はウエスト部分の伸縮素材がウォーターフロッグという魔物の皮。蛙の魔物の皮なんですよ。こっちでも蛙とか爬虫類は嫌われるので、貴族女性に受け入れられるのは難しいかな…?
「故ちゃん、着心地はいかがですか?」
「苦しくないし、動きやすいよ」
「バタフライ・ローズの最新作ですからねぇ」
バタフライ・ローズとは私とミス・バタフライのたちあげたブランドである。服・下着・おしゃれ小物を扱っている。一番人気は勝負下着です。バタフライとローゼンベルクからローズになりました。母もたまーにデザインを出してます。
ちなみに凛花とミルフィもノーコルセットドレスを着ていますが、こちらはプリンセスラインの甘ロリ風。ふわっふわのフリルとレースでボリュームを出しているのでコルセットがなくとも体型を誤魔化せるし可愛い。
個人的には凹凸がない人に似合うと思います。あとぽっちゃりな人。
「まあああ、バタフライ・ローズの最新作ですの!?」
ご婦人がめっちゃ食いついてきた。贔屓にしてくれているセレスタ伯爵夫人だ。故ちゃんはめっちゃドン引きしている。
「ちょっと素材が一般受けしないので、試験的に彼女にモデルをしていただいたんですの」
「んまあ、そうでしたの!でも、素敵ですわ!」
セレスタ伯爵夫人、鼻息がすごいわ。夫人だったらこのドレス、確かに着こなすだろうけどなぁ…
「ドレスは無料で差し上げますから、試着していただけます?」
「喜んで!」
私は貴族を甘く見ていた。それが蛙の皮だと聞かされても、セレスタ伯爵夫人は故ちゃんと同じ素材で作った紫色のセクシースタイルドレスを着こなしてくれた。このドレス、実はギミック付きなのだ。ギミックを教えたら嬉しそうに…艶然とセレスタ伯爵夫人は微笑んだ。
「夫を誘惑してまいりますわ!それから、このドレスを数着予約いたします!」
セレスタ伯爵夫人はドレスのお礼にと積極的に宣伝してくれたため、蛙の皮ドレスはこの後とても流行して、ミス・バタフライが死ぬほど忙しくなっていた。
ちなみに一般向けにウルファネアシルクに特殊な伸縮を持たせる織り方で作ったドレスもあったのだが、そちらはどうしても高額で蛙ほど着心地がよくないので、普通だった。恐るべし、蛙!!
さて、私がようやくセレスタ伯爵夫人から解放されると、故ちゃんが質問攻めにあっていた。ミルフィとフィズがフォローしていたようだが…
「ユエ様素敵ですわ…」
「ユエ様ぁぁ」
なんか、様子がおかしい。これは関わらない方が…とディルクのとこに避難しようとしたが、許していただけませんでした。
「ロザリィ、貴女もお話ししませんこと?」
逃がしませんわよ?と言われた気がしました。どうも故ちゃんはフィズファンの女子を故ちゃんファンに上書きしてしまったようだ。故ちゃん…恐ろしい子!
なんか故ちゃんファンをやたら作って故ちゃんの初パーティは終了した。
忍者化していたディッツ君から報告を受けました。
「パーティマナーは俺が見た限りでは問題ありませんが、ロザリンド様達…いわゆる身内との会話が親密すぎたのが気になりますね。本来のパーティではぎりぎりマナー違反になるかどうかという感じでしょうか」
「なるほど」
故ちゃんとしばらくは丁寧な会話をすることにしました。さらに上下関係をわきまえた会話のしかたを教えてパーティマナー実践編は終了となりました。
俺のユエはすっかり立派なレディになっていた。努力を誉めたら照れる婚約者が可愛くて仕方がない。
ディルクがロザリンド嬢にデレデレになっていたのも仕方ない!隠したいとか言ってた気持ちがよくわかる!
俺の婚約者が可愛すぎて辛い!!
byフィズ




