私をレディにしてください!(婚約者のお仕事編)
ディルクにお願いして、フィズからパーティの形式を確認しました。お披露目パーティは立食形式だそうです。
ロスワイデ侯爵家の本邸で発表し、そのまま立食スタイルのパーティをするらしい。
ただ、本来ならこういうのをしきるのって奥さんの仕事なんだよね…もちろん侯爵夫人も手伝うだろう。フィズが実家を継がないつもりなら…いや、継がなくてもパーティをしきるのは本来妻の役割だ。婚約だとまだ相手が未成年だとかの理由でしないこともあるけど、故ちゃんは本当ならパーティも主催側じゃないとまずいんじゃないだろうか。
一応故ちゃんに確認しました。
「それが、私はここに来て日も浅いしフィズが全て手配しているんだ…」
「なるほど。故ちゃんの考えは?準備を手伝うのはフィズの妻になるならいつかはしなくちゃいけないことです。パーティ、夜会、茶会をしきるのは基本的に妻の仕事ですからね」
そして、これはかなり重要な仕事だったりする。妻のセンスや気配り、更にはその家の資産や情報収集力、人脈等さまざまな評価がされる場でもあるのだ。
ちなみに実家と我が家はパーティも茶会も大人気です。
「…フィズと私の婚約パーティなんだ、準備にも関わりたい」
「では、そのようにフィズに言ってください。大変でしょうが、いい経験になると思います。フィズは頑固ですからねぇ…ちょっと小技を伝授しますね」
「そ、そんな高度な技が……私にも使えるだろうか…ロザリンドちゃんだからこそ、ではないのか?」
「いいえ、効果は抜群のはずです。騙されたと思ってやってみてください」
「……わかった。多分普通に頼んでも、フィズは聞いてくれないだろうから…やってみる」
故ちゃんは覚悟を決めたらしい。頑張れ、故ちゃん!
「…何を教えたの?」
「のわっ!?」
背後からディルクが来ていました。け、気配を感じなかった!
「ん?」
私はぶりっこをした。
「ディルク、お願いがあるの」
胸の前で両手を組み、ゆっくりとディルクを見上げる。目を潤ませ、じっとディルクの瞳を見つめた。
「…えっと…」
「ロザリンドのおねだり、聞いてくれる?ね、お願い…ディルクぅ」
ディルクに甘えつつ、おねだりをする。
「……うぐっ可愛い…で、できる範囲でなら…」
「やった!なら今日は放課後デートしよ!こないだは結局故ちゃんの指導で流れちゃったし」
「…デートならおねだりまでしなくても、断るわけないのに…」
私はクスッと笑った。
「だから、教えたのよ。大好きな相手におねだりするやり方」
「…………………え?あああ!?」
ディルクは私を抱きしめたまま遠い目をしていた。
「……フィズ、頑張れ…あのさ、ロザリンドさん」
「はい」
「さっきの方法はね?用法用量を間違うとユエさんが危険です」
「大丈夫、フィズですよ?」
「大丈夫だけど大丈夫じゃないんだよ!あああ、己の耐え続けた日々を思い出す!友人に無駄な試練を与えないであげてよ!ただでさえユエさんが最近さらに可愛くなってて辛いって愚痴ってたのに!」
私は首をかしげた。
「…いや、嫁(婚約者)が可愛いのはいいことでは?」
「1つ屋根の下、無防備で可愛い婚約者と暮らしてるんだよ!?」
なんか、昔の漫画の設定みたいだわぁ…と思いつつ、適当に相づちをうった。
「えー?うん」
「手を出したいけど出せないんだよ、好きだから!頼むから耐えてる狼に更なる苦行を与えないであげて!」
「……前向きに検討します」
「それ、絶対検討した結果やめないでしょ!」
「てへ」
流石は旦那様。ばれたか!私はテヘペロをした。
「こらあああ!」
「…だってさぁ、私は故ちゃんの気持ちが解るからさぁ…好きな人のために頑張る女の子…しかも友人が困ってたら知らんぷりはできないよ」
「ロザリンド…」
「それに、なんかフィズはディルクと同じ失敗をしてる気がするんだよね」
「うぐっ!?」
何やら心当たりがあるらしく、しゃがみこむディルク。
「まぁ、それだけ相手を想ってるんだろうけど、ね」
あんまり介入しすぎないようにしつつ、しばらくは様子見かな?と思いました。
翌日、故ちゃんはおねだりに成功したらしく、笑顔で報告してくれました。入れ知恵したのがばれて、フィズには叱られました。
俺の婚約者が最近凶悪なまでに可愛くて、本気で辛い。いつか押し倒してしまいそうで怖い。
byフィズ




