私をレディにしてください!(ダンス編)
学校についたら、故ちゃんが興奮した様子で私に駆け寄ってきました。
「ロザリンドちゃん、ありがとう!ロザリンドちゃんのおかげでフィズと婚約できたんだ!」
故ちゃんは心底嬉しそうです。よかったね、故ちゃん。でも、私を抱っこしてぐるぐる回るのはやめようか。めっちゃ目立ってるよ。
「よかったね。うまくいったのは魔法で見てたよ。でもあくまで私はなにもしてないよ。クラリンの力と、故ちゃんが頑張ったからだよ」
「いや、ロザリンドちゃんは私の相談に何度ものってくれた!そして励ましてくれたじゃないか!」
いやだから、くるくる回らないで…まあ、友人が喜んでるみたいだから誰のおかげとかはいいか。
「故ちゃん、おめでとう。婚約のお披露目はするの?それとも内々?」
故ちゃんはようやく私をおろしてくれた。
「………お披露目……するんだ」
「そっか」
「ロザリンドちゃん…お願いがあるんだ!私を立派なレディにしてくれ!フィズに相応しい女性になりたいんだ!」
故ちゃんは必死です。
「…先生の個人レッスンとか、専任の家庭教師をつけてもらうじゃダメなの?」
「それが…」
家庭教師をつけてもらったが、何故か男性のマナーを学ばされてしまったらしい。イケメン女子に仕込みたくなるのは解るが、仕事はちゃんとしようぜ!
「…では、私だけではなくマナーについてでしたらミルフィやレティシア嬢にも協力していただきましょうか」
「ありがとう!」
故ちゃんはやはりイケメンでした。クラリンのラブ集めもあるが、故ちゃんのお披露目は期限がある。クラリンに相談した。
「ロザリン、クラリンは自分でラブを集めるわ。ユンユンのお願い、聞いてあげて。クラリンはそっちが終わってからでいいわ」
「ごめんね、クラリン」
「ううん、クラリンはユンユンのおかげでパワーアップできたもの。それに、お披露目でまたラブが貰えるかもしれないわ。クラリンは優しいロザリンが大好きよ。本当はクラリン一人で頑張るべきなのに手伝ってもらって…うん、クラリンはロザリンに甘えすぎていたわ!」
「クラリン…」
故ちゃんの件が済んだらまた協力することを約束して、教室にいたミルフィとレティシア嬢に教師役を依頼した。
「私でよければ喜んで」
「わ、私も!?が、頑張りますわ!」
ミルフィは快く引き受けてくれました。レティシア嬢は気合い入ってます。
4人で話し合い、ダンスホールを借りて先ずはダンスのレベルを確認。相手役はアルディン様。わりとでかくなったアルディン様は、フィズと背格好も大体一緒です。ディルクも丁度空き時間だからと来てくれました。
早速アルディン様と踊ってもらったが……
「硬い」
「……確かに、硬いですわ。ステップも問題ありませんのに…」
「姿勢もよいのですが…」
「なんというか……男らしい感じ?」
私、ミルフィ、レティシア嬢、ディルクの順に発言しました。
「なんだろ…剣道やってるせいか筋力があるからかな?ディルク、お手本!」
「え?うん」
ディルクとダンスは久しぶりだけど楽しい。軽やかにステップを踏む。ディルクはダンスも上手なので安心して身を委ねる。
「あの…えと…」
「あ、あわわわわ…」
「……うう…」
「エロい」
「「…………」」
故ちゃんの感想に、場が凍りついた。エロかったらしい。ま、まあ…夫婦だし?
「い、いやでもあの柔らかさが必要ですわ!」
ミルフィが慌ててフォローした。しかしエロいへの否定はなかった。やはりエロかったらしい。レティシア嬢とアルディン様はあわあわしている。なんかごめん。
「よし、故ちゃん!私と踊るよ!」
「へ!?」
私は指輪で男装すると、めちゃくちゃにステップを踏む。鍛えているから故ちゃんぐらいなら余裕で支えられる。身長はやや故ちゃんが高いのでちょっと踊りにくい。
踊りにくい、のだが…
「あははははははは」
「ふっ、あはっ、あははははは!」
故ちゃんが笑いだした。うむうむ、それでいい。
「ミルフィ、曲を」
そして、教えたステップを互いに踏む。男性パートは滅多にやらないから、たまに私が間違ったが故ちゃんはほぼ完璧に踊りきった。
「素晴らしいですわ!」
「素敵ですわ!」
興奮した様子のミルフィとレティシア嬢。
「動きの硬さはなかったね。後はたまにパートナーに任せるのも手だよ。ぶっちゃけダンスは男性が上手ければ、女性はくるくる回るだけで誤魔化せるから」
「そこは否定しない。案外わからないものだぞ」
とは、アルディン様。なんでもアルフィージ様が習ってないのにラビーシャちゃんにダンスを強要したらしいが、案外さまになっていたとのこと。とりあえず、後でアルフィージ様は叱っておきます。
「フィズはダンスが上手いから、これだけ踊れれば大丈夫だと思うよ」
しかし故ちゃんはもう少し習いたいというので基本的なダンスステップを教えた。私はなんとなく思いつきで故ちゃんに言ってみた。
「剣道の型みたいなものと思ったら覚えやすいんじゃない?」
「………!!確かに!」
そこからの故ちゃんは凄かった。あっという間に複数のダンスステップを覚え、緊張してカチカチだった面影などなく、中級~上級者向けダンスまで会得した。
流石は本来のヒロイン、ハイスペックである。今は余裕でアルディン様と踊っている。
「故ちゃん、凄いわ~」
「…私はロザリィの手腕が凄いと思いますわ。ユエ様も凄いですけど」
「私もミルフィリア嬢と同じ意見ですわ」
「へ??」
「…ロザリンドだからねぇ」
キョトンとする私に、ディルクが苦笑した。別に普通に教えただけですが??とりあえず、後は微調整ぐらいでダンスは大丈夫そうですね。
ちなみにミルフィとレティシア嬢にねだられたので私は男性パートを何回かミルフィ達と踊りました。楽しかったです。
わりとどうでもいい補足。ロザリンドは勘違いしていましたが、フィズがつけた家庭教師は故ちゃんが男性だと勘違いしてただけ。趣味ではありません。
故ちゃん自身が普段は楽だからと男装していたから勘違いされたと理解しており、途中で気がついて言い出せなかったようです。




