表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/192

忘れ去られた○○

 カミサマンに聞いたところ、この村はいわゆる狂い咲きの花………複数の特徴をもつ獣人なんかを受け入れてきたというか、拐うことで成り立っているらしい。昔の方が狂い咲きの花への迫害が酷く、産まれてすぐに殺されるか、かろうじて生かされるかの二択だったのだそうだ。それに心を痛めた、聖女様なこと姉ちゃん。狂い咲きの花を集め、この村を作ったそうだ。

 狂い咲きの花に害意がある者を弾く結界と、村を守るために認識阻害系の結界を使っているそうだが、最近認識阻害の結界がおかしくなっているらしい。


「なるほど。直せるかもしれないから、見せてくれる?」


「こちらです」


 案内された先は、村の中心部。聖堂のような建物に入った。そこには、見覚えのある木が中央に一本。我が家の庭にもあるんだよねー。そう、ユグドラシルさんである。ユグドラシルさんのいる部分だけ土があり、その周囲には石造りの床が広がっている。ユグドラシルさんを中心に、床には魔法陣が刻まれている。

 どうやらユグドラシルを動力として魔法陣で結界を持続させているようだ。その魔法陣だが内側はいいけど、外側が劣化している。あ、ここが欠けたせいでおかしくなったんだね。経年劣化なのだろう。石はボロボロで、他もいつ崩れてもおかしくない。


「………よし。コーティングしようかな」


 色々考えたが、欠けた部分だけ彫り直し、上から全体をコーティングしよう。こういう作業はポッチの方が上手いけど、私もやれなくはない。修復する部分にはスライム素材を流して硬化させた。コーティングは色々考えたが、栗栖君の…………あれを溶かして固めた。硝子のようだが強固な素材で、ジェラルディンさんのキックにも耐える。熱に弱いが、ここに火の気はないし高温でしか溶けないから問題ないだろう。


「ついでに修復しようかな」


 せっかくなんでヴァルキリーと……………あれ?ヴァルキリーが普通に人型だ。


「村に入ってから、魔力が普通になりました。この結界、外側の陣が魔力を狂わせていたようです」


「………付喪神なヴァルキリー達を狂わせるって相当ヤバいんじゃない?」


「常人ならば……恐らくは発狂しますね。あの森に入れるのは、曇りなき魂ぐらいでしょう」


 該当者としてアルディン様とジェラルディンさんが浮かんだ。どっちもルディンな王族だね。ジェラルディンさんはともかく、アルディン様は来たらまずい。

 そんなことを考えていたら、隠れ家の鍵が点滅している。ナビィ君からの合図だ。鍵に魔力を込め、ナビィ君だけを出した。


「マスター、感謝シマス。座標確認。…カミサマンノエリアト確認。マスター、緊急事態(エマージェンシー)デス。今スグ隠レ家ニイラシテクダサイ。世界ガ滅ビマス」


「は!?」


 慌てて隠れ家に駆け込むと、通信魔具がけたたましく鳴った。この忙しいときに!とりあえず通話をオンにした。


「ロザリンドちゃああああああん、ロザリンドちゃああああああん!!ロッザリンドオオオ!!」


「凛花!?凛花!」

「ロザリンドちゃああああああん!!ロザリンドちゃああああああん!!ロッザリンドオオオ!!」


「凛花!!凛花!?」

「筋肉ムキムキロッザリンドオオオ!!マッスル従えロッザリンドオオオ!!」


 人の話を聞けってか、新しいネタをぶっこんでくるんじゃない!!受話音量を下げ、通話音量をフルボリュームに変更。

 すうっと深く息を吸った。さらに、魔法で音波を増幅する。





「人の話を、きけえええええ!!」





 流石に聞こえたらしく、静かになった。


「ロザリンドちゃん!?ロザリンドちゃんッスか!?無事ッスか!?無事ッスね!?無事に違いないッス!ロザリンドちゃんは世界が滅亡しても生き残るから死にようがないッス!!」


 静かになったと思ったら、また喋りだした。さりげなくディスられているし、殴ってもいいだろうか。いいに違いない。まあ、確かに無事だけども、むかつく。


「ロザリンドちゃん、精霊さん達が控えめに言っても暴走寸前ッス!精霊王達も不穏になってて、ガチヤバいッス!!」


「おお………」


 そういや、以前にもあったね。精霊王に(ユエ)聖獣様(モンド)も加わり、えらいこっちゃらしい。ガチで向こうが大変なことに!!


「お空がなんかもう、ラスボス空から出てくるんじゃないかってぐらいヤバいッス!!」


 凛花をしばいている場合ではなかった。緊急事態(エマージェンシー)ってこの事か!!


「凛花、通信魔具を精霊さん達にできるだけ近づけて!強制操作、受話音量フルボリューム!」


 凛花側の通信魔具を遠隔操作する。さらに、魔法で音波を増幅。ヴァルキリーに仲介してもらい、向こうで音を増幅するようにした。





「わたしは!!無事!!どぅああああああああああ!!」





 なんか向こうでがシャーンとかパリーンとか、破壊的な音が鳴り響いた。やりすぎたかもしれない。


「ロザリンドちゃん………皆倒れたッス。危機は去ったッスけど、正直やりすぎッス………耳が痛いッス……」


「あっはっは」


 仕方ないじゃないか。私だって焦ったんだもん。人気者は辛いぜっていうか、私の不在と世界の滅亡をセットにしないでいただきたい。


 とりあえず、作戦は基本いのちだいじにで行こうと思いました。

○○には好きな言葉を入れましょう。最初は『村』だったのですが、他にも色々忘れ去られたものがあるのでこのタイトルにしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 忘れ去られた世界の平和。 忘れ去られた自重。 忘れ去られた普通。 う~ん…私的にはこれくらい? 緊急事態…前にもこんなことあったなぁ… まぁ今回はディルクも一緒だったから、まだラスボス登…
[一言] これ、永遠の命にならんとアカンのでは? ロザリンドちゃんが死んだら、自然死であろうとも世界が滅びるかその一歩手前まで行くこと確実じゃないですか。 このロザリンド依存症は、お医者様でも草津…
[一言] 忘れ去られた「常識」かな…?w 「普通」とかもありかな( うん、だいたいいつもの←
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ