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狂い咲きの花たち

 ひたすらに罠を避けながら歩くこと、三十分。普通の人なら二時間はかかりそうだけど、ディルクは舗装された道を歩いているかのようにスタスタと早足で進む。私を支える手も安定感があり、振動も少ない。改めて、ディルクってすごい。

 マイダーリンのイケメンぶりにウットリしていたら、ようやく森が終わるのか木々の隙間から光が見えた。さらにディルクが一歩踏み出した瞬間に、空気が……風が変わった。

 一瞬何らかの結界をすり抜けたような感覚があったが……何もしていないのにすり抜けたのは何故だろう。


「ごめんディルク、五歩下がって」


「うん」


 ディルクが五歩下がる。また結界をすり抜けた。出られない………わけでもないな。なんのための結界なんだろうか。魔物避け………でもないよねえ。この辺り、何故か魔物いないし。


「うーん」


 この結界、なんだか懐かしいような。結界。隔てる。隔離……ぼんやりしていたら、いつのまにかナマケモノが近くまで来ていた。


「オマエたち、ケッカイくぐれた!いじめないか!?」


「いじめなんて最低です」

「しないよ」


 よくわからないが、いじめカッコ悪い。とりあえず正直に答えた。


「よし!オマエたち、えらばれた!オラ、アンナイする!」




 ナマケモノについていくと、村があった。一見普通の村だが、住人たちにある共通点があった。


 異端。狂い咲きの花。本来、存在するはずがない者。


「モフモフパラダイス……」


 身体が羊で顔がヤギだったり、狼の耳にリスの尻尾だったり。これはこれで、ありだな!


「に、にゃーん」


「世界で一番愛してる!」


 モフモフに誘惑された私を、マイにゃん……子猫サイズの黒豹ダーリンが正気に戻してくれました。素晴らしきは、マイダーリン!世界一のモフモフ男性です。


「………オマエ、おかしい」


「ロザリンドのモフモフ好きは普通とは言えないかなぁ……」


「ぐっ……」


 仕方ないじゃないか!だってモフモフ、大好きなんだもん!今は子猫サイズの黒豹ダーリンでモフ欲を満たしているけども!

 しかし、獣頭が多いなあ。村人達はチラチラこちらを見るが、近寄ってこない。


「おねチャ、きれ、ね」


 勇気ある子猫頭で狐尻尾の女の子が寄ってきた。獣頭のせいか、発音がたどたどしい。


「ありがとう。貴女も可愛いわ」


 軽い気持ちで頭を撫でたら、女の子は尻尾をぶわわっとして固まり…………泣き出した。え!?まさか、おさわり禁止だったの!?


「にゃあああああああああああああああ!!」

「ごめんね、ごめんなさい!嫌だったの!?あ、ほらほら、お菓子だよ~。おいしいよ~」


「おか、し?」


 クッキーの匂いを嗅ぐ女の子。泣き止んでくれたみたい。包みをほどき、手に乗せてあげた。ディルクにもひとつ。アーンしてあげた。安全を示すため、私もひとつ食べる。んん……バターがきいてておいしい……。サクサク……。


「にゃっ!にゃ、あにゃ、にゃうう……」


 クッキーがお気に召したらしい。なくなってションボリしてる。可愛い!


「ほら、あげるわ」


「にゃっ!?………………にゅうう………あり、がと……ありが、と……」


 泣きながらも必死にありがとうを伝えてくる。獣頭はポッチもだったから、簡単に変化させられる。


「………………………え?お姉ちゃん、なにしたにゃ……しゃべれる!?」


 村人達がざわめいた。あ、勝手にしたらダメだった?また獣頭にすべきか迷っていたら、女の子から爆弾が投下された。






「お姉ちゃん、神様!?」

「違います」






 村人達がざわめきはじめた。皆さん、冷静になってください。私はちょっとお転婆な侯爵夫人です。神様などではありません。名誉毀損です。やめてください。


「オマエ、カミサマ?」

「違います」


「オマエ、カミサマ、あわせる。ついて、こい」


 ナマケモノに案内されて、村の中央。異変の中心へ案内された。そして………私が倒れた。


「ロザリンド!?」


 視線の先には、般若の面を被った……たぶん女性の銅像があった。何故たぶんかというと、刺々しいというか、刃がいっぱいついた鎧を着ていたから。何故ここまで威嚇するような格好をしているのか。

 それは、間違いなく凛の血縁、渡瀬言葉だった。


「そんな気はしてたんだよ!!こと姉ちゃあああああん!!」


 どうしようもない憤りを床にぶつけていたら、キュルキュルと機械音が聞こえてきた。


 「ギギ……認証。待ち人様と断定」


 うちのナビィ君に似ているが、足がキャタピラになっている。キュルキュルいっていたのはこれか。そして、角やら尻尾がついている。ここの村人に合わせたのかもしれない。


「ようこそ、忘れ去られた村へ!私はここの管理AIでカミサマンと申します」


「カミサマ、コイツ、カミサマ?」


「いいえ。私よりもずっと偉いお方です。今すぐ歓待しなくてはなりません。長き時間を過ごしたかいがありました。ようやく、お会いできました。待ち人様……私はずっと、ずっと貴女をお待ちしておりました」


「わかった。オラ、ウタゲ、じゅんびする!!まつり、たのしい!!」


 とりあえず、こと姉ちゃん関連の場所なのはわかった。しかし厄介事の気配がするので遠い目をする私なのでした。


あ、カミサマンの名前につっこむのを忘れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 良し任せろ!カミサマンてナニ!ビ◯ダマンの親戚かぁい!Σ\(-_-)←こんなカンジで桶?(笑) 不思議なモフパラにココロ奪われる新妻(笑)を正気に戻すために体を張るミニマムな旦那様、ぐっじ…
[一言] カミサーマー(KAMISARMOR)の間違いでは? ってことでしょうか?
[一言] 惜しい!誰何するのはシマリスちゃんで、首を傾げながら聞き方を「いじめる?」に。 返す方は手を振りながら「いじめないよぉ~」にしないと。 この時点で、帰った時にルー兄さんが頭をか抱える事が確…
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