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天然は真綿で首を絞めてくる

 私が拗ねていたら、渡瀬の祖母が首をかしげて聞いてきた。


「魔物とは、何かしら?悪鬼妖怪の類いなの?」


 あんまり深く考えたことがなかったが、改めて考えてみるとなんだろう。ただ、実体があるから妖怪とか幽霊の類いではないと思う。


「魔物は魔物だからなぁ………だが、言われてみれば魔物と魔獣の違いはなんだろうな。考えたこともなかった」


 素直なアルディン様が首をかしげる。意外にも、その問いに答えたのはラヴィータだった。


「魔物は、ダンジョンか穢れから産まれる。倒されることで浄化され、力だけが残る」


「なるほど………ん?穢れから産まれたモノなんて食べて大丈夫なんスか?」


「倒されてしまえばただの力の残滓だ。問題ない。実体があるものだからな。ただ………」


「ただ?」


「食べ続ければ、力を体内に取り込んで強化されるかもな。獣人が強靭な肉体を持つのは、そのせいもあるかもしれん」


 クリスティアには酪農や畜産もあるが、ウルファネアは肉と言えば狩猟のため、魔物肉を食べることが多い。




『………………………………………』



 全員が私とディルクを見た。自意識過剰かもしれないが、そんな気がした。


「…………?何故、皆さんは凛を見ておられるのです?」


 渡瀬の祖母が聞いてきた。そこ、聞かないでほしかった!


「ロザリンドちゃん……凛姉ちゃんの異常な強さの秘密が今、明らかになったッス」

「待たんかい」


「はいッス」


「私は異常に強くなんかないから!ジェラルディンさんにもディルクにも、相変わらず連敗続きだからね!?」


 私は異常に強くなんかない。ジェラルディンさんとディルクはともかく、私は普通の女の子ですから!


「主が俺に負けるのは、あくまでも模擬戦だからだろう。主は守りたいもののために戦う時、真価を発揮する。予想もつかない手段で俺を負かすだろうな」


「ロザリンドが俺達に勝てないのは、怪我をさせないために魔法に制限をかけているからだろ。正直、何かのために本気のロザリンドが相手だと俺も勝てる気がしないよ」


「…………くっ!で、でもディルク、かなり手加減してるじゃないですか!」


「………まあ、慣れてるからね」


 ディルクは苦笑した。今でもたまに模擬戦をしたりするが、まったく勝てない。ディルクいわく、何度も対戦した結果、なんとなく動きが読めるらしい。ちくせう。


「ロザリンドが普通だとしたら、世の女性は皆俺より強い事になるぞ。いくら俺が世間知らずでも、ロザリンドが普通だなんてあり得ない」


 輝ける白様は悪意も何もなくそう言った。ううう……だって、生き残るために強くなるしかなかったんだもん!


「いや、ロザリンドちゃんは異常枠を飛び越えたナニかッス!」


「そうそう。僕の弟子を名乗っときながら、全てにおいて僕より秀でている人間に見えるナニかだよ」


 美人なじじいが泣いた。いや、あのね?賢者様の知識には敵わないよ?わ、悪かったから泣かないでくれよ。


「………とりあえず、腹が立ったから凛花は肉じゃが禁止令」

「申し訳ございません。わたくし、正直ちょっと、だいぶ………かなぁぁり調子に乗っておりましたアアアアアア!!」


 凛花は地面に額を擦り付け、必死に土下座した。そんなに肉じゃがが好きなのか。


「お前、プライドは?」


「肉じゃがの前では塵芥同然ッス。プライドで肉じゃがは食えないッス!だから、許してつかぁさああああああい!!」


 なんかもう、いいやという気になったので許してやった。凛花は好きなモノへの執着がすさまじい。なんでこんな子に育ってしまったのだろうか。


「…………凛は……いえ、凛も巫女として立派に務めを果たしていたのですね」


「……そうだな……じゃなかった、ですね」


「尊きお方、わたくしに敬語は不要にございます」


「いや、凛花の大切な曾祖母様です。俺はもう、人として生きていくと決めました。だから、きちんとしたい、です」


 渡瀬の祖母が、穏やかに笑った………だと!?


「あ、明日は曇り時々クラリン……クラリンが来るッス!世界が滅ぶッス!!」


「クラリンは本当に降りかねないからやめろ!!本当になったらどうしてくれる!!」


 大騒ぎする私たちに、ラヴィータがクスクス笑った。


「とりあえず、ロザリンドはどう頑張っても『普通』ではないぞ。穢れに飲まれた俺ですら、インパクトがありすぎて最初は怖かったからな」


 ああ、うん。カバディ事件簿ですね。昔はすまなかった。でも、仕方なかったんだよ。許しておくれ。


「……………凛、お前、何をやらかしたんですか」


「…………か、カバディと………日本の伝統的遊び、かごめかごめを少々……」


「かばでい……は確かスポーツで、かごめかごめは………遊んだのですか?」


 やめて!私の黒歴史を発掘しようとしないで!私のライフはもうゼロよ!!


「いや、その………カバディは動きが意味不明だから、ビビるかなって………かごめかごめはこう……なんかの儀式みたいで……ビビるかなって」


「……………………やはり凛と凛花は血縁なのね」


 渡瀬の祖母は重たいため息を吐いた。祖母よ。どういう意味だよ!凛花に比べたら私は普通だよ!?

 全力で抗議したかったけど、さらに墓穴を掘りそうな気がしたのでやめておきました。

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