彼女が進む道
次に出されたのは、お肉。軽く表面を焼いた生肉………に見える。そして、白米。とてつもなくおいしそうだ。付け合わせは蒸かしたじゃが芋、ほうれん草ソテー、にんじんのグラッセ。
先ず、お米を一口食べた。甘い。ただの白米なのに、ものすごく美味しい。お米も炊き方も最高!心なしか米は柔らかく輝いているようだ。炊きたてご飯、正義(ジャスティス!!)!そこにステーキ風生肉を………いや、違う!これはステーキだ!一見生だけど火が通っている!肉汁とソースと米が絡み合い……何倍も美味しい!幸せすぎる!!
「おいしい……」
語彙力が著しく低下した。おいしいの。全部おいしいの。肉汁じゅわーで幸せなの。
「お嬢様、今日のコメは最高の炊き上がりだ。コメの品種を厳選し、割れたり欠けたりしたものは全て取り除き、浸水時間、水分量、コメのとぎかた、火加減、火をおこす薪の種類、蒸らし時間に至るまで、俺が研鑽を重ねたコメなんだ」
「つまり、至高のお米……もはやお米様……」
崇めたくなるぐらいに艶やかな米。食べたら幸せになれる米。
「いや、普通に炊いたらいい気がするッス」
「リンカ、水をさしたらダメだ!確かに一見無駄かもしれないが、ダンさんはロザリンドにおいしいコメを食べさせたくて頑張ったんだから!」
「凛花、お前一年肉じゃが抜きな?」
「大変申し訳ありませんでしたッス!お米様最高ッス!」
即座に土下座する凛花。お前、肉じゃがをどんだけ愛してるんだよ。まったく、お米様に失礼な凛花め。
「肉じゃが、あるぞ。まかないだが、リンカ様とカーティス殿の好物だと聞いたからな」
「ダンさん……神ッス!神料理人ッス!」
凛花は肉じゃがとご飯を幸せそうにほおばった。
「んん……凛姉ちゃんのとは違うけど、最高ッス!!んまいッス!幸せッス!!」
「肉は不可説不可説転バッファロー。その中でも最高級の希少部位、シャトーブリアン。お嬢様のおかげで、全員がその希少部位を食べている」
「聞いたことない名前ッスね」
「うん。親切なダンジョンマスターが最高ランクの魔物を召喚してくれたよ。探さなくても召喚してくれたんで、時短になったね」
凛花がひきつった顔でこちらを見た。今のヒントで察したらしい。
「それ、まさか……隠しダンジョンの!?つうか、あのヤマタノ獣王牛鳥は、そんな理由で討伐されたんスか!?」
「あれはいいダシ(鶏ガラ)になった。鳥チャーシューもあるぞ」
「そんな理由で討伐されちゃったんスね!?」
凛花は察したようだ。いいじゃん、おいしいし、結果として人助けだったし。うるさいから肉を一切れ入れたら、おとなしくなった。おいしすぎて喋るのがもったいなくなるんだよ。
「うむ。なかなか強かったぞ」
「ええ…………本当に…………死ぬかと………」
「うん………そうだね……」
楽しげなジェラルディンさんと疲れた表情の息子たち。ご協力ありがとうございました。
「ロザリンド、あんまり危ないことをしたらダメだよ?」
「大丈夫!問題なかった!!」
前人未到のランクにされた以外は!!
「そういえば、新ランク決定と授与式をやるらしいぞ」
「へー」
「主の招待状を預かった」
「いらない。行かない。これから新婚旅行だから、バックレる」
兄がそんな私を見て、なにかを察してしまったらしい。
「ロザリンド、説明」
「へい、喜んで!!」
もはや、条件反射である。折角隠していたのに、洗いざらい話すはめになってしまった。
「前人未到の新ランク………か」
兄が遠い目をした。好きでなったんじゃないやい!私だって、そんなランクは欲しくなかった!
「まあ、魔物から『暴食のロザリンド』とか呼ばれてるぐらいッスからね。SSSランク魔物組合ブラックリストのナンバーワンッスし」
「凛花ああああああああ!!おま!余計なこと言うな!!」
「ちなみにナンバーツーはジェラルディンさんッス」
「はっはっは!」
何も気にしないおおらかすぎるオッサンは笑っていたが、私としては不名誉過ぎる称号だ。バラさないでいただきたい。
「…………リンカ嬢、そのSSSランク魔物組合というのはなんだい?」
アルフィージ様がニヤニヤしながら聞いてきた。知っていたけど性格が悪い。
「SSSランク魔物組合は、知能が高い魔物による組合ッス。危険人物をリストアップして注意喚起したり、生息地が被らないよう調整するらしいッス」
「そして、それの危険人物ナンバーワンがロザリンド嬢か」
「ロザリンドは何を目指しているんだ?世界最強か??」
輝ける白様ことアルディン様が爆弾をぶっこんできました。
「違います!私はディルクに毎日おいしいお肉を食べてほしくて狩っていただけ!しかも骨なんかの余った魔物素材は売ればお金になるから一石二鳥!私っていいお嫁さん!そう!私が目指すのは、ディルクのお嫁さんなのです!」
だからもう、変な称号もランクもいらないんだ。ディルクとまったり過ごせたら、それでいいんだ!
「……そうだな。ロザリンドは少々お転婆だが、よき妻になるだろう」
「父様、大好き!!」
「うん、ロザリンドは最高のお嫁さんだよ」
「ディルク、愛してるぅ!!」
二人がフォローしてくれたのでなごんでいたら、アルフィージ様が呟いた。
「…………この親にしてこの子あり。この夫にして、この嫁ありってとこかな」
「うまいッス!」
かなーり失礼だと怒ろうとしたら、皆頷いていた。ちくせう。




