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予想外のスペシャルゲスト

 教会を出たら、馬車が来ていました。そして、馬車に乗り実家へ。実家も飾りつけられておりました。


「お嬢様はこちらへ」


 お色直しはウルファネア風ドレス。なかなかにセクシーだね。ナイスバディな今の私ならば着こなせる。リッカの花をモチーフにした柄で、ディルクと対になっていた。しかも、さりげなく黒と金が私の方に使われ、ディルクは青銀と紫。互いの色を取り入れてあります。


「ディルク、ステキ……」


 身体の線を強調するウルファネアの衣装は、ディルクにピッタリだった。鍛えられたしなやかな肢体がよくわかる。はああああ……眼福………拝んでおこう。


「え!?ありがとう。ロザリンドは……すっごく綺麗で魅力的だけど、やっぱり足は隠そう。ロザリンドの美脚を見ていいのは俺だけだから」


 ディルクは真顔だった。本気で言っているらしい。ラビーシャちゃんが頷き、また別室に移動。ウルファネア風ドレスの上からスカートを巻きつけた。同じ布地だから違和感はない。


「やっぱり先ほどのスタイルがお嬢様の美しさを引き出すとは思いますが、こちらもよくお似合いですよ」


「ありがとう」


 ディルクにエスコートされてパーティー会場である実家のダンスホールへ移動する。ものすごく違和感がある懐かしい存在に気がついた。


「あ、クソババア!あれが凛姉ちゃんがこう……多分生まれ変わったロザリンドちゃんっス!」


 眉間に皺を寄せて、いつも不機嫌そうにしていた渡瀬の祖母が和服姿で座っていた。あの着物、訪問着なのかな?初めて見たわ。


 というか、何故いる。


「クソババアはおやめなさい。曾お祖母様と呼べと何回言ったらわかるんですか?このへちま脳娘が!」


 へちま……ああ、穴だらけと言いたいのだろうか。


「クソババアはクソババアだからクソババアッスよ!だれがへちま脳娘ッスか!クソババアがご不満なら、クソ様ッス!クソで充分ッス!お釣りが来るッス!誰のおかげでここに来れたか忘れんなッス!このまま強制送還させてもいいんスよ!?」


 口の悪さで凛花に敵う者はそうそういない。渡瀬の祖母が爆発しそうなので介入することにした。


「お祖母様、お久しぶりです」


「……久しいですね、凛。お前がなかなか会いに来ないから、わたくしが来てあげたわよ」

「頼んでねッス」


「凛花、やめなさい。申し訳ありません、お祖母様。お会いできて嬉しいです」


 凛花にネックスリーパーをかけながら渡瀬の祖母に話しかける。珍しいことに、祖母は少しだけ笑った。


「お前、生まれ変わっても中身は変わらないのね」


「明日は雨ッス」


 祖母の笑顔に驚いて逃げた凛花が呟いた。いや、局地的豪雨とか、天変地異が起きそう。晴れ時々クラリンとか。


「り、凛花?」


「あ、パパ上!ロザリンドちゃん、パパ上も拐ってきたッス!パパ上、着替えるッス!今日は凛姉ちゃん……ロザリンドちゃんの結婚式なんスよ!」


「いつまで寝間着でいるんですか。着替えなさい」


「は、はい!」


 兄さん、渡瀬の祖母が苦手だったよね。凛花からスーツを受け取り、マーサに案内されていた。


「改めて、ご挨拶を。私はロザリンド。ロザリンド=バートンになりました。この身体の持ち主であるロザリアと凛の魂が融合したのでロザリンドと名乗っています。そして、彼はディルク=バートン。私の夫です」


 ディルクは膝をつき、渡瀬の祖母と視線を合わせた。


「はじめまして、ディルク=バートンです。お孫さんは必ず、一生かけて幸せにします」


「一緒にいてくれたら、勝手に幸せになるよ」


 そこは違うよ、と修正をかけておいた。ディルクは穏やかに笑ってくれた。ああ、今まさにすごく幸せ。


「そうだね、間違えた。一生一緒で、幸せになります」


「…………………そう。いい相手を見つけたのね。少々……だいぶ………かなりお転婆な娘ですが、よろしくお願いいたします」


 渡瀬の祖母が……あのプライドの塊みたいな人がディルクに頭を下げた。初めて神様以外に頭を下げた!


「明日は雨時々クラリンッス」


「…………………」


 否定できない。それぐらい、衝撃映像だった。着替えてきた兄さんも固まっている。


「…………これは、夢か。夢だな。凛花が生きているもんな」


 兄さんが静かに泣いた。凛花については私にも原因があるような気がする。すごく申し訳ない。


「パパ上、自分は異世界で生きてるッス!嘘だと思うなら、天ちゃんに聞くッス!もうあんまり会えないッスが、自分は元気ッス!」


「………うん。いい夢だな」


「兄さん」


 凛にウルファネア風ドレスは似合わないけど、一瞬だけ幻を見せた。


「凛花を預けてくれてありがとう。こっちで責任もって面倒見るから。凛花、ラヴィータを紹介しなくていいの?」


「うぇい!??」


「………はじめまして。ラヴィータと言います」


 ラヴィータが祖母と兄さんに挨拶した。さっきから挨拶したかったらしくソワソワしていたもんな。


「………荒御魂(あらみたま)……いえ和御魂(にぎみたま)??魂が混在していますね。凛花をこの世界に喚んだのは、御身であらせられますか?」


「俺ではない、が……結果として彼女は俺のために喚ばれた。心から、感謝している。彼女を誰より愛している。そして、貴女の世界から奪ったことを謝罪する」


 ラヴィータが頭を下げた。


「お顔をあげていただけますか、尊き御方。御身が詫びることなどございません。凛花は巫女としての務めを果たしただけにございます。それに『こちらへ残る』と選択したのは凛花です。御身に非はありません」


「では、感謝のみとしよう」


「ええ、受け取りましょう」


 渡瀬の祖母が穏やかすぎて怖い。兄さん、凛花も身を寄せあってビビっている。それぐらい異常事態で警戒警報なのだ。


「…失礼じゃない?」


「ディルクは普段のお祖母様を知らないからだよ」


 その通りなのでディルクも否定はせず、困惑した様子でラヴィータと渡瀬の祖母を見守っていた。

渡瀬の祖母は魂を見抜くという特殊技能がありますが、力は強くない人です。そこがコンプレックスだったため、凛花と言葉(凛のおば)とは仲が悪かった人です。神様には敬意をはらいますが、反面容赦なく叱るので天ちゃんや天ちゃんパパ達から恐れられています。

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