親友達と友人?
『おめでとう、ロザリンド!』
ミルフィとレティシア嬢と……何故かミス・バタフライがいた。結婚したからマダムじゃないのかって聞いたら、永遠のミスだと言われた。ミス・バタフライは男でも女でもなくカテゴリがミス・バタフライだから仕方ない。
「ああん、素敵よ!ロザリンドちゃんたら、可愛いドレスも似合うわ!」
クネクネしているミス・バタフライ。悲しいことにミス・バタフライにすっかり慣れてしまったミルフィとレティシア嬢は、うんうんと頷いている。
「確か、結婚式で白いドレスを着るのは『貴方の色に染まります』という意味なんですよね?」
「え?うん」
「「きゃああ、ステキぃ!」」
レティシア嬢とミス・バタフライがキャアキャア盛り上がっている。あ、後ろにリリアンとリリアーナが…………ドン引きしている。うん、気持ちはわかるよ。
「ロザリィは、高価で特別なドレスより、そちらのドレスの方が好きでしょう?でも、時間もあるから諦めてしまった……違いまして?」
「う」
流石は親友。お見通しらしい。デザイン画を見て、このプリンセスラインのドレスにすごく惹かれた。でも、こんな悪人顔だし何回もお色直しするのも嫌だし、諦めた。
でも、そうだね。未練があって眺めていたかもしれない。
「ロザリィは華美なものや高価なものより、そういった可愛いものを好みますものね」
「うん」
「ですから、ディルク様にお願いしましたの。そうしたら、ディルク様がロザリィのためだけの結婚式をするって教えてくださいましたの」
うちの家族やミルフィ達、皆が協力者だったらしい。
「うん、ありがとう」
「私からも、ロザリィにお礼を言わせてくださいまし。ロザリィ、私はロザリィに受け入れてもらえるまで、人を傷つけてばかりでしたの」
ミルフィは語った。口を開けば嫌みばかり。ローレルは公爵家だけど、皆恋愛結婚だ。ミルフィの母は子爵家だったから、そこを突かれてしまった。母は笑顔でかわしていたが、傷ついていないわけではなかった。だから、ミルフィが言い返す事にした。ミルフィの的確な毒舌に、ミルフィの母を悪く言うものは居なくなった。しかし、ここで問題が発生した。
磨き続けた毒舌スキルが暴走しまくるようになったのだ。いつだったか、運動会で両親が語った通り。遊び相手として連れてこられた子供達をその毒舌で泣かせてばかりだった。本当は、仲良くなりたかった。でも、うまくしゃべれなかった。
自分の真意を察してくれる両親と付き合いの長い使用人達以外とは上手く付き合えなかった。
そんな中で、ミルフィがいくら毒舌を発揮しようとニコニコしていたのがロザリンド……つまり私だった。ミルフィには私が寛大な心を持っていると感じたようだが、それは違う。ミルフィに悪意がなかったし、わかりにくいスイ(毒舌ツンデレ)で慣れていたので、ツンの裏にあるデレに気がついていただけだ。
「そうですわね……酷い態度だった私にも寛大でしたわ」
「ミルフィの場合はツンデレな友だちに慣れていたからだし、レティシア嬢は嫌われていても真っ直ぐな性根が気に入っていたから仲良くなりたかっただけです」
そんなに美化しないでいただきたい。
「ロザリンドちゃんはこう、なんというか……懐が大きいわよね」
「………………」
特に違和感なくミス・バタフライを受容しちゃった自分は、確かに懐が大きい気がした。
「アタシ、かなり色々言われたって気にしないけど……傷つかないわけじゃないのよ。ロザリンドちゃんは……いえ、ロザリンドちゃんの家族も自然にアタシを受け入れてくれたわ。ロザリンドちゃんのパパもイケメンだし、ね」
「………………そうか」
ミス・バタフライのウインク攻撃を父が回避した。明らかに顔がひきつっている父。とても珍しい。
ちなみに兄はドン引きしていた気がするよ。最近は慣れちゃってどうとも思わないみたいだけど。
「ごめんなさい、ロザリンドちゃん。アタシ、ダンさんの話を聞いて対抗しちゃったけど、それは間違いだったわ」
「はい?」
「まさに手段のために目的を忘れるってやつね。商人としてあるまじき失敗だわ。顧客を満足させることこそが、商人の仕事よ。確かにあの虹のドレスはロザリンドちゃんによく似合っていた。でも、ロザリンドちゃんは特殊な素材も華美なドレスも求めていなかった。アタシが満足しただけだったわ。本当にごめんなさい」
ミス・バタフライは深々と頭を下げた。
「いや、水月さん達も協力してくれたし、ステキなドレスだったよ?」
自分もそれなりに満足していた。だから、謝罪は必要ない。自分も納得して選んだのだ。
「いいえ、顧客に妥協させるなんて最低だわ。一生ものの大事な結婚式のドレス……今回は間違わなかったと自信を持って言えるわ。とってもステキよ、ロザリンドちゃん。そのドレスは、皆で相談して作ったのよ」
「…………うん。ありがとう」
「………いい友人を持ったな、ロザリンド」
「うん!」
皆自慢の友人達です。
ディルクの元まであと少し。この結婚式は、ディルクだけじゃなく皆のおかげなんだって感じられた。




