迷惑なオッサンと美人のジジイ
さらに進むと手をブンブン振る迷惑なオッサンことジェラルディンさんがいた。さらにルーミアさん、奥方様、色ボ賢者もいる。
「主、おめでとう!」
「ロザリンドちゃん、おめでとう」
「あ~、おめでとう…」
「綺麗だよ、ロザリンドちゃん。このままさらって行きたいぐらいだ」
奥方様は安定のイケメンです。この人、本当に女性でよかったよね。男性だったら大変なことになるに違いない。だっこされている娘さんがどう育つのか超気になる。
「そんな猛獣うちでは飼えないからね!?可愛い女の子を手当たり次第口説くのヤメテ!」
おいコラ、色ボ賢者。誰が猛獣じゃい!異議あり!と叫ぼうとしたら、奥方様が先に動いた。
「………まったく、ヤキモチかい?ダーリンは可愛いね。心配しなくとも私が世界一愛しているのはダーリンと子供達だけさ。可愛いお花を愛でるのは常識だろう?」
「ひゅああああああ……」
奥方様にチュッチュされて、色ボ賢者が人語を忘れました。ただの色ぼけじじいになっちゃったよ。
「……主、ケンジャ殿は男色なのか?」
特大の爆弾が投下された。
デリカシー?ナニソレおいしいの?なジェラルディンさん耐性が最も高いルーミアさんが即座に正気に戻ってジェラルディンさんを殴った。
「すいません、本当にごめんなさい!」
そして即謝罪した。流れるような謝罪に涙が出そうになった。ルーミアさんはやはり、このオッサンのせいで苦労しているようだ。同じく苦労している幸薄いオッサンの長男を思いだし、後で念入りにシメておこうと思った。
「はははははは!私は気にしていないよ。女性らしい服よりこういった男性的な服が好きで着ているのだ。間違われるのが嫌なら、最初から女性らしい服を着るさ」
快活な奥方様は微塵も気にせず笑い飛ばした。流石は奥方様。ジェラルディンさんも納得したらしく、頷いていた。
「ただ、一つだけ訂正しておこうか。ダーリンは私が女らしい格好をしている方がこうふ「ギャアアアアアア!やめて!興奮するとか性癖を暴露しないで!僕は君が恥じらってる姿に興奮するだけだから!それから僕は服なんかどうでもよくて、君が好きだから君に反応しちゃうだけなんだよ!」
奥方様の口を塞いで必死に自分の性癖を暴露する美人なエロじじい。熱烈な告白に、流石の奥方様も赤面している。
「ダーリンに好きって言われた……」
「え!?そこ!??じじい、奥方様に愛の言葉が足りてないんじゃないの!??」
「足りてません。母様は溢れそうなぐらいに愛を語りますが、父様は言いませんから。母様がかわいそうです」
「ぐっ!?」
おいぃ!?否定できないんかいぃ!!息子のサリーダ君からも足りてませんって言われてるよ!
「奥方様、絶対もっといい男が他にいますよ?」
「おい、こら!余計なこと言うな!このトンデモ弟子もどき!!」
「本日の主役に暴言かますとは、いい度胸ですねぇ!この甲斐性なし師匠!」
「……仲がいいのだな」
「「よくない!」」
空気を読まないジェラルディンさんにダブルでつっこむ。
「そうなんだ!二人はとても仲良しなんだよ。ロザリンドちゃん、私はダーリンを心から愛している。君が居なかったら、この初恋は叶わなかったと思うんだ」
「いえ、いつか奥方様が押し勝っていたと思いますよ?」
「……母様が年老いてからかもしれませんがね」
息子さんはお父さんに不満があるようです。なかなかに辛辣です。でも、そこは私も否定できない。私が居なかったら、じじいはまだ不老のままで……奥方様を泣きながら看取っただろうから。やばい、じじいが不憫になってきた。とりあえず空気を変えよう。
「ジェラルディンさん、こちらの賢者様ですが結論として男色ではないがロリコンです」
「おいいいいいいいい!!」
「そうなのか」
全力でツッコミしてくる賢者と、あっさり納得するジェラルディンさん。爆笑している奥方様とサリーダ君。オロオロしているルーミアさん。
「違うから!幼女に興味はないから!人の人生にとんでもない枷をつけようとするな!この破天荒弟子もどき!!」
「長く生きすぎた賢者様からしたら、老女があいてでもロリコンですよ!ロリコン賢者!どM賢者!たまに女装「ギャアアアアアア!!」
「え?女装??」
あ、やべ。サリーダ君にご両親の閨事情はまだ早いわ。
「除草……つまり草むしりが好きなんだよ」
「なるほど?」
とりあえず、雑に誤魔化しておいた。賢者もめっちゃうなずいている。
「主、やはり仲がいい気がするぞ」
「「よくない!!」」
「うむ。ロザリンドがここまで気を許しているのだ。仲がいいのだろう。賢者殿、娘と親しくしてくださって感謝します。少々おてんばな娘ではありますが、今後も親しくしていただければと思います。貴殿に師事した事は、娘にとって僥倖でした。娘をこんなに立派にしてくれて、ありがとうございます」
父が真面目に頭を下げた。
「え………あ、はい…………。その、ぼ…私も娘さんのおかげでようやくただの人間として生きることができるようになりました。その点は感謝していますし、私が彼女に教えたのは『詠唱を馬鹿正直にやってる魔法使いは使えない』ぐらいです。師というよりも、共同研究者ですね。与えたものより得たものが多すぎる。私こそ、彼女に会わせてくれてありがとうございます」
父効果か、賢者も頭を下げた。超素直じゃない?
「一回しか言わないから、よく聞いとけよ!おてんばを突き抜けたナニか弟子!」
「なんだと!?このツンデレ師匠!」
ケンカなら受けてたつ!と言い返したら、なんだか様子がおかしい。
「結婚、おめでとう。君なら何があろうと幸せになるだろうね。正直、僕は師匠らしく君を導くなんてしていないしできない。ただ、困ったならできる限り助けるから……いつでもおいで」
「…………ありがとう、ございます」
超珍しすぎる賢者のデレに戸惑っていると、空気を読まないオッサンが割り込んできた。
「主!俺も主が望むなら、いつでも助けるからな!」
「ありがとうございます」
「ジェラルディン殿、何かあったらよろしくお願いいたします」
父が真面目に頭を下げた。このオッサンはいつも騒動を起こすから下げなくてもいいと思うの。それより、皆して何かあったら前提で話をするのをやめてもらえないかな?
本当にナニかが起きたらどうするんですかい。




