クランもふもふ至上主義
クランもふもふ至上主義の皆も笑顔で祝ってくれた。
「ロザリンドちゃん、おめでとう!いやあ、あの小さかったロザリンドちゃんがこんな大きくなって………」
彼方さんが涙ながらに語る。あの、背後で嫁と子供達による彼方さんの隣争奪戦が開催されてるよ?つか、親戚のおじさんみたいになってるよ?
「彼方、おっさんみたいだぞ」
「ぐふっ!?」
優姫のドストレートな言葉にダメージを受ける彼方さん。
「いや、彼方は実際思ったよりおっさんだったよね。俺、てっきり同年代だと思ってたし。そこがネットの面白さでもあるけど」
「ぐううっ……いや、ちょい待ち!俺と凛ちゃんは時間軸がずれとったから!つか、凛ちゃんが死んだあとにこっち来たから!凛ちゃんとは同年代やったから!」
「そうそう。ちなみに私は真琴と優姫が年下だろうなと思ってたよ」
多分、一緒にネトゲをしていた頃、優姫と真琴は高校生ぐらいだったんじゃないかな?
「マジで?」
「マジマジ」
ちなみに、生年月日を確認したら彼方さんと私がほぼ同年代で社会人。優姫と真琴はネトゲをしていた時期、高校生だったようです。
「大学時代に事故にあって…多分死んだっぽいかな?気がついたらこっちに来てたよ。不審者扱いで死にそうなとこに、ウールンが来てくれたんだよ」
真琴のお嫁さんはウールンさんという巨乳の羊獣人のお姫様でした。たわわなおっぱいに手が出そうになりましたが、真琴に叩かれました。清楚で巨乳……真琴のくせに生意気だと思います。
「俺は……電車にはねられたと思ったらユーロの背中にいたな。お互い超ビビった」
「いい思い出だよな!」
「…………ああ」
ちなみに現在の年齢は、ダントツで彼方さんがトップです。私はどうカウントすべき?身体の年齢はダントツで低いです。
そもそも私より先にこちらへ来ていた彼方さん。そのせいでさらに年齢差があるんだよね。クランもふもふ主義の中で、一番最初にこっちの世界に来たのも彼方さんだった。
「なんか、クランもふもふ至上主義……呪われてない?」
全員が何らかの理由で死去している。凛だけは寿命より長生きしたぐらいだが、彼らは事故なんかがなければもっと生きたに違いない。
「俺はこんな理想の嫁をゲットできたから、向こうで目的もなく農家やるよりよかったよ。大学の知識もこっちで役に立った」
確かに真琴は幸せそうだ。清楚巨乳の羊獣人の妻……モフ羨ましい。
「……俺も、後悔はしていない」
「ユーキがいない人生なんて、つまんねぇ!」
優姫のまわりをグルグル駆け回るユーロさんにうざったいと拳骨を落とす優姫が、その表情は明るい。
「ユーロ、うるさい。だが、同感だ。ユーロといると退屈とは無縁だな」
彼方さんはおっさん呼ばわりされて拗ねていたが、立ち上がった。
「可愛い嫁と子供に囲まれて、人生勝ち組!リア充だからええんや!」
彼方さんが、俺はリア充だと騒ぎだした。確かに、チビもふもふ羨ましい。ちょっぴりでいいから触らせて……くれないんですか。そうですか。いや、大丈夫。モフモフ好き上級者になれば、眺めるだけでもモフ萌えチャージができるんです。後でディルクにもチャージさせてもらうからいいんだ。悔しくなんかないが、羨ましい!モフ羨ましい!!
彼方さんを羨んでいたら、真琴が話しかけてきた。
「ロザリンドちゃんってか、凛でいい?改めておめでとう。スゲー綺麗だね。新婚旅行、ぜひうちの国に来てよ」
「ん~?どうしようかな?」
「モフ接待するよ」
「行きます!米の苗とラーメンレシピ持参で行きます!!」
「ま~じ~で?モフ接待の手配するから、後で日程よろ」
「絶対に行きます!モフモフ用意して待っててください!ちなみにモフ接待とはどのような接待ですか!?」
真琴は得意気にニヤリと笑った。
「部下のちびモフを借りてきて、一緒に遊べます。羊の獣人は大人しいし、モフモフだし、スゲー可愛いぞ~」
「うあああああ、超行きたい!チョコ持っていくから俺も接待してくれん?」
「チョコかぁ。どうしよっかなぁ?」
「マコト様、ちょことはなんですか?」
「……ウールンが喜びそうなお菓子だよ。仕方ない、彼方さんも招待してあげるよ」
「よっしゃあ!!」
しかし、彼方さんの背後で争奪戦に勝利した大人げないシュシュさんが待ったをかけた。
「カナタ……私を置いていくのか?子供達は?」
彼方さんはちびモフとシュシュさんからの無言の訴えに敗北した。
「…………うちの可愛い嫁と子供が世界一です。俺が間違ってました!」
彼方さん、別に悪くないのに浮気したみたいになってる。うちのマイダーリンは………オッケーらしいですね。ありがとう!世界一愛してる!
「お、俺は「きゅ~ん……」
「………………」
「く~ん」
「…………くっ」
よくわからんが、多分優姫はうるうるした某CMのチワワに匹敵するほどうるうるして見つめるユーロさんに敗北した。
「………君達はリンの友人なのだな」
空気を読んだかは不明だが、ここまでずっと黙っていた父が話しかけてきた。
「彼方=ヴォイドです」
「優姫=佐原です」
「真琴=野上=ユーフォリアです」
慌てて皆が父に挨拶した。父は頷く。
「界を越えた友人もいるとは驚きだが……娘と仲良くしてやってくれ。多少おてんばな娘だが、いい子なんだ」
「父様……」
父の優しさに感動していると、何やらヒソヒソ聞こえてきた。
「……多少?」
「多少の範疇から明らかに飛び出してるやろ」
「そもそも、ロザリンドはおてんばのカテゴリに入るのか?」
「失礼な!私はちょっぴりおてんばなだけですよ!ね、父様?」
「そうだな」
父は頷いた。父、大好きです!もっと言ってやって!
「さすがはロザリンドちゃんのお父様……なんや、親父力で負けてる気がする」
ナニソレ。戦闘力みたいなもの??
「そうだな」
「完全に負けてるな。見た目、賢さ、強さ、金、地位、器の大きさ、気品、優雅さ、勤勉さ……そして何より……………速さが足りない!!」
「待たんかい、真琴!負けてるかがわからない項目もあったやろ!つか、微妙にネタぶっこんできたやろ!?適当かつ失礼なこと言うな!」
「ほ~ら、器が小さい」
「ぐっ!?」
口喧嘩だと、彼方さんは真琴に勝てないだろうな。ツッコミ力では圧勝だと思われます。
「……カナタ殿の話は娘から聞いている。貴殿の器は小さくないだろう。伴侶を支え、領地を立て直し、若輩者である娘を対等な位置にすえて共同経営をしているのだから。それから『嫁と子供にだけモテればいい』だったか?同感だ」
父が微かに笑った。父、イケメン!
「「「お父様あああああ!!」」」
「…む?………うむ」
首をかしげたが頷いた。うちの父は天然ですが、最高のお父様です。




