ディルク先生の授業
本日、ディルク先生の初授業です。
「ディルク、私も付き添おうか?」
「大丈夫、大丈夫」
ディルクはニコニコしています。でも、ディルクにひどいことを言うやつが居るのでは…いや、そんな輩は片っ端から私がシメてやればいいんだね!
「ロザリンド?なんか怖いこと考えてない??」
「え?大丈夫!ディルクにひどいことを言うやつが居たら、私が酷い目にあわせるからね!」
なんだかディルクが菩薩のような笑顔を向けていた。
「あー、うん…できる限りロザリンドの出番を作らないよう頑張らなきゃなぁ…」
ディルクの呟きは私に聞こえませんでした。
ディルクさんの事が心配で、もふ丸に見学をお願いしました。もふ丸なら小さいからバレないし、私との視覚・聴覚共有もできます。
つうか、早速もめてるし。よーく覚えとこ。メモメモ。
「獣人などに教わることはない!」
「ああ、我々は学校に抗議する!」
「好きにしてくれてかまいませんよ。でも君達の授業点は0にしておきます。剣術は必須教科だから、留年して来年頑張ってください」
ディルクさん、クールです。素敵!イケメン!!結婚して!いや、結婚してたわ!もうはなさないから!!
「な、なんだと!?」
いきり立つ貴族の子息達。兄とアルフィージ様のクラスだったらしく、アルフィージ様が呆れたご様子でした。
「獣人だから習わぬなど、愚かにも程がある。君達の顔は覚えた。出世はないと思いたまえ」
「そんな!?」
「こんなことぐらいで!」
いいぞ、アルフィージ様!権力万歳!!よっ!腹黒様!!
今はウルファネアと友好関係なんだから、獣人を差別する輩は邪魔なんだよね。
「なら、真面目にやりなよ。君らのせいで授業時間が削られて迷惑だよ」
兄様ぁぁ!!クール!超絶クール!!カッコいい!!そこにしびれる憧れるぅ!!
結局ごねた貴族も参加した。
「じゃ、校庭100周走ります」
『……………………』
ちなみに校庭1週=500メートルぐらいです。入念な準備体操のあと、いきなり50㎞走れと言われて固まる生徒達。あ、ちなみに剣術の授業は男子だけ。貴族・従者クラス合同です。
「周回遅れはハンドゴーレム君によるくすぐり攻撃です。体力があるのに手を抜いた人にはもれなくシャカ君がキッスします」
何に使うのかと思ったら、追い役でしたか。ハンドゴーレム君はマド○ンド的な手だけのゴーレム。
ホラーゴーレムのシャカ君(上半身しかないとっても怖ーいゴーレムさん)が笑顔を浮かべ、投げキッスをした。生徒達は悲鳴をあげて全力で走った。皆泣いていた。が、がんばれ!これは辛い!!
「ぎゃあああああ!!」
「うはははははは!!」
阿鼻叫喚である。地獄絵図である。シャカ君とハンドゴーレムさんはゆっくりと彼らを追っている。あれは怖い。
ただ、運動が苦手で本当に脱落した人にはペナルティが課されなかった。体力が尽きた人達はストレッチを指示されているようだ。筋肉痛対策かな?
何人かわざと倒れたバカがシャカ君の餌食になった。成仏しろよ。
従者クラスの数人も頑張っていたが、走りきったのは兄とアルフィージ様だけだった。しかし2人も疲労困憊である。ディルクも走っていたが、けろっとしている。
「走りきれたのは2人だけですね。じゃあ、2人は素振りをしてください。得意武器は?」
「………細剣…くそ、鍛えていたのに…げほっ…」
アルフィージ様は悔しそうだ。立つのも難しいらしい。足がガクガクです。
「…短剣…はぁ…最近研究ばっかで、ちょっとなまったかな……」
兄もお疲れのようだが、こちらはまだ余裕がありそうだ。
「じゃ、素振りしててくださいね。脱落した人達には走り方を教えます。やる気がない人達は…………遊んであげましょう。全員、かかってきなさい。俺を倒せたら授業を免除してあげますよ。ちなみに、このメニューは騎士の基礎トレーニングです。これをこなしてからストレッチをして、腹筋背筋腕立て各300回して、戦闘訓練するんですよ」
『騎士すげぇ』
貴族達は驚愕した。従者クラスは死んだ魚みたいな目をした。騎士志望の人間もいるからだろう。
騎士の仕事はまず、歩くことと走ること。どんなに剣を使えても、スタミナがなきゃ役に立たないんだそうだ。
貴族・従者の少年達はすでに護身のためある程度の型を習っているので、基礎体力と下半身の筋力強化を狙ったようだ。
ひとしきり訓練が終わってから、ディルクは授業をボイコットしようとした生徒達と模擬戦をしていた。
「うわ!?」
「ぎゃあ!?」
「嘘だろ!?」
「魔法も使っていいですよ」
「くっそー!!」
ディルクに一撃を当てるのは非常に難しい。ディルクは結局丸腰で生徒10人+護衛さん10人(途中参戦を許可した)を相手にしたが、余裕でした。かすりもしない。
世の中にはいかに頑張ろうとも、人数がいくらいようとも、倒せない存在がいると理解した生徒達。彼らは心が折れたらしく、その後黙々とディルクに従っていました。
そして、ディルクはその方式で次々とシルベスターの男子生徒を従わせていきました。
もはや、誰も獣人教師に習いたくないなんて言いません。言えません。私は男子生徒達がディルクに向ける視線に覚えがありました。彼は…ディルクはやはり…………なのです。
昼休み。
「ロザリンド、迎えに来たよ。一緒にお昼ご飯食べよう」
「ディルクがお迎えに来てくれるだなんて!嬉しいです!大好きです!抱きしめてはなさないでください!!」
私のテンションはマックスである。スーパーハイテンションロッザリンドォォ!!である!
「えええ!?し、仕方ないなぁ。でも抱っこは家に帰ってから…ね?」
「はぁい…」
でこちゅーいただきました。はぁん、蕩ける…溶けてしまいそう。しあわせ……
「ロザリンド嬢」
とても泣きそうな表情でレティシア嬢が話しかけてきた。
「はい?」
「ごめんなさい!ロザリンド嬢は本当にアルディン様が恋愛対象外だったんですのね!」
「うん」
そこは否定しない。私の恋愛対象=マイダーリンディルク様です。ようやくわかってくれたんだね!
「ロザリンド嬢はアルディン様なんて眼中になかったのに、勝手にアルディン様を誘惑しようとしてるなんて決めつけて…今まで、本当に申し訳ありませんでした!」
「私は気にしていませんわ。ですが、今後は仲良くしてくださると嬉しいです」
ただまぁ、うん。レティシア嬢、言い方。アルディン様が涙目よ。確かに恋愛としてはアウトオブ眼中だけども、オブラート大事。なかなか前途多難そうだなぁ。
まあ、レティシア嬢がにっこり笑って仲良くしてくれるって約束してくれたから、いいか。
レティシア嬢はロザリンドのディルクに対するメロメロぶりを見てようやく誤解がとけました。
ディルク先生のお話はもう少し続きます。
彼は…ディルクはやはり…………なのです。について…………に入るものを述べよ。はたして正解者はいるかしら?正解は次回更新で!希望者にはヒントを出します。




