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本当にやりたかったこと

ようやっと書きたかったお話です。ここまで長かった……。

 結婚式騒動で疲れきり、ディルクといちゃいちゃしてそれなりに回復したある日にそれは届いた。


「…招待状?」


 実家からの招待状だった。しかし、奇妙だ。指定された場所には何もなかったはず。実家でパーティをやるならドレスコードなんかの詳細を記載されるはずなのだが、日時の指定とディルクを同伴で必ず来るようにとしか書かれていない。


「うーん…」


 持ってきたのはマーサだから、罠とかはありえない。サプライズパーティかなんかなのかな?こないだの結婚式が私の誕生日だったし。

 深くは考えずに、予定を空けることにした。それにしても最近ディルクの帰りが遅い。できる執事のおじいさまに聞いたら、まとまったお休みのためにスケジュールを前倒しにして詰めまくっているそうだ。予定より長くとるつもりらしい。約束した新婚旅行のためらしいので、仕方ない。私は私の仕事をするのだった。





 さて、サプライズ?パーティ当日。指定の場所についた途端、爆笑する馬鹿英雄に捕縛された。


「わはははははははは!!」


「ちょ、ジェラルディンさん!バレちゃいますから!」


 ご丁寧に猿ぐつわまでかまされている。魔法も見えないから危なくて使えない。


「もがもががもががが!」


 必死に『もうバレてますから!』と言ったがモガモガとしか聞こえなかった。


「くらえ!」


「もが!?」


 全異常無効のイヤリングを外され、眠り粉をかがされた。

 あの元合法ショタ賢者め!後で泣かすと心に誓いつつ、意識が落ちていった。






 次に目を覚ましたら、何故か私はまたしてもウェディングドレスを着ていた。


「…ふぇ?」


「あら、おはよう。お寝坊さんね」


 いや、絶対お寝坊さんではない。色ボ賢者が強制的に眠らせたからだ。そこはどうでもいいか。それより、このドレスだ。これ、デザイン段階ですごくいいなと思ったけど可愛すぎて私には似合わないから除外したやつだ。

 繊細なレースが幾重にも巻き付けられ、ふわりとしたプリンセスライン。純白のウェディングドレスは、とても美しく愛らしい。


「とーっても似合ってるわ!ねぇ、メイクもへアセットも私がやったのよ!どうかしら?」


「母様、すごいですね。可愛く仕上がってます」


 私の髪は複雑に編まれ、サイドに流れている。花が一緒に編み込まれていて綺麗だ。きつめの印象が薄れるように、メイクを柔らかく仕上げてくれているから、可愛いドレスもさほど違和感がない。


「うふふ、ラビーシャちゃんほどではないけどママの腕もなかなかでしょ」


「お嬢様、綺麗です」

「お姉ちゃん、おめでとう!」

「お姉ちゃん、綺麗!!」

「ロザリィ、素敵ですわ」

「ロザリンドちゃん、おめでとう」

「お嬢様、お綺麗です…ぐしゅっ……」


 ラビーシャちゃん、我が家の双子天使、ミルフィ、ルーミアさんが笑顔で祝福してくれた。マーサは泣いている。


「マーサ、泣かないで」


「おじょ、お嬢様…マーサは、マーサはお嬢様を主であり……不敬を承知で妹のように、母のように想っております。お嬢様の幸せはマーサの幸せです…ぐしゅっ、これは嬉し涙です。お嬢様、誰よりも幸せになってぐだざい…うああああ…」


「こんなに祝福してくれるマーサがいて…皆がいて、本当に幸せだよ。ありがとう、マーサ」


「お嬢様ああああああ!!」


 しまった。余計に泣かせてしまった。せっかくマーサも綺麗にメイクしていたのにデロデロだ。


「余計泣かせてどーするんですか……お気持ちはわかりますけどね。お嬢様、本当は私もずっとお嬢様にお仕えしたかったです。道を違えても、いつだってラビーシャはお嬢様の味方です。覚えておいてくださいね」


 マーサにお嬢様のドレスが濡れちゃいますよとやんわり注意してウインクするラビーシャちゃん。


「うん。立場はラビーシャちゃんの方が上になるけどよろしくね。私だってラビーシャちゃんの味方だってこと、忘れないでよ」


「はい!」


 晴れやかな笑顔のラビーシャちゃん。メイドというか忍者としてランクアップしていった彼女に、本当にこれでよかったのか散々悩んだ時期もあった。しかし今の笑顔をみて、きっとこれでよかったのだと思えた。


「ロザリィ、そのドレスとても似合ってましてよ。本当は着たかったのでしょう?」


「そりゃまあ……………うん」


 似合うとか似合わないとかじゃなく、着てみたかったのは確かだ。すごく可愛かったから、着てみたかった。


「ロザリィはいつも誰かのためならとか、色々と我慢してしまうところが心配ですわ」


「……いや、そうでもないと思う」


 どちらかと言えば、さほど我慢はしない方だと思われます。欲望に忠実なロザリンドです。


「いいえ。ですから、私達皆でロザリィが欲しかったものをプレゼントすることにしましたの。楽しんでね、ロザリィ」


「ミルフィ…」


 うちの親友がマジで優しい。せっかくのメイクが溶けちゃいそうだ。


「泣いたらだめよ」

「そうだよ、笑わなきゃ!」


 双子天使のおかげで、泣かずにすんだ。ヤバいな、嬉しすぎる。


「…母様、なんとなく予測はついたんですが、ここはどこですか?」


「ここはうちが新しく建てた教会よ」


 やはり教会か。いや、ちょっと待った!


「新しく建てた!?」


「ええ。クラリンちゃんの教会が無いから建てたのよ。さぁ、お迎えが来たから、行きなさい」


「………いやいやいや!一瞬納得しかけたけど、なんでまた!??」


 母はこれ以上話す気がないらしい。迎えに来た父に引き渡されてしまった。流石に三度目なので察する。


「ロザリンド、おめでとう。何度やっても慣れないものだな」


「…普通は何度もしませんよ」


「そうだな。そうかもしれん。だが、リンの世界では二回結婚式をする者もいるのだろう?」


「ああ…まあ…」


 会社なんかの関係者を集めた披露宴と親しい友人や親族だけでブルジョワジーなネズミ様の国での結婚式をした先輩を思い出した。一般的ではないが、確かにそういう人もいる。


「ディルクが皆にもう一日だけ空けてくれと頼み込んでな……ロザリンド、お前はいい伴侶を選んだな。彼になら、安心して任せられる。まあ、ディルクとケンカしたらいつでも家に来なさい」


「ケンカしなくても行きますよ」


 そんな会話をしながら歩く。通路にはさりげなく彫刻が……これ、見覚えがあると思ったらマグチェリア?いや、この壁に描かれてるのって大聖堂のステンドグラスになってた景色?


「わぁ…」


 壁に描かれた景色はどれも綺麗でずっと眺めていても飽きない。


「ロザリンド、ここはポッチが装飾を担当していた。何日も何日もここに籠っていて、私も初めて見たのだが…見事なものだな。ここは一般解放される予定だ。また見に来るといい」


 ポッチ……頑張りすぎじゃないだろうか。また不眠不休で連徹してないだろうな。


 義弟の見事すぎる仕事ぶりに不安を覚えつつ、教会の控え室から聖堂に移動した。

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