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緑と兄

寝落ちしたので今頃投稿します

 ユグドラシル…それは世界の生命線。世界樹とも呼ばれ、世界のマナすなわち魔力であり魂の力を循環する神の樹である。そんなユグドラシルの樹の下で、がたいのいいおっさんと兄が会話をしていた。あ、おっさんはミチェルさん…シーダ君のパパさんだ。


「そうだな。ルー殿…どうしても……だめか?」


 首をかしげるミチェルさん。可愛くないが、尊敬する先生からのお願いに怯む兄。


「うっ!?…………だ、ダメです!だから何度も言いましたよね!?そりゃ、僕だって…こんな素敵なユグドラシルを全力で自慢したいですよ!でも、下手をすれば戦争案件ですからね!?そりゃ、戦争になろうとも迷惑な英雄と最終兵器娘(ロザリンド)がいれば無血開城も可能ですが、無駄な争いは避けたいです!」


 兄よ、最終兵器娘と書いてロザリンドと読むとは…なんで!?私は平和主義者ですよ!?


「………ユグドラシルではなく別の植物に擬態してはどうか」


「一般客ならそれで誤魔化せますが、僕が招待したお客さんもいるんです。確実にバレます」


 話が見えてきた。お祭りと人間が大好きなユグドラシルさん。このイベントに出たいのだろう。

 しかし、ユグドラシルは戦争の火種になりかねない存在。ユグドラシルに近い地は必ずその恩恵をうける。兄の天啓(チート)が隠れ蓑になっているのでうちは誤魔化せている状況だ。

 肥沃な大地が欲しいのは、どこも同じ。かつてユグドラシルがある地を得ようと、大規模な戦乱もあったほどだ。そういう意味では兄やシーダ君達の天啓も狙われる可能性があるだろう。まあ、私の天啓も悪用されたらシャレにならないけどね。


「兄様」


「ロザリンド!ぼ、僕は別にユグドラシルも参加させてあげたいなんてぐらついてないからね!」


 ぐらついてたんですね。こんなに動揺する兄は珍しい。兄は植物に…いや、植物はもちろん、懐に入れたもの甘い。私はそんな兄が大好きだ。


「ワガママ言って、ルーを困らせるなよ」


 スイは呆れているらしい。ユグドラシル…緑の精霊さんがしょんぼりしているのか、少ししなびた。


「だって、だって!私、お祭り大好きだって知ってるでしょ?ここはとても楽しいけど、民家だからお祭りなんて最初で最後かもしれないのに…留守番なんて嫌よぉぉ!この日のために、自慢のすべり台とトランポリン、新調したのにいぃ!!」


 本当だ。すべり台が増えている。螺旋のやつもあるね。トランポリンもピカピカだ。

 分体とはいえ、緑の精霊王が嘆いたせいだろうか。緑のマナが急速に不安定になっていく。


「スイさん」


 ジトッとスイを見る。


「うっ!?し、仕方ないだろ!大人どころかこの場にいる誰よりも年寄りなんだし、ロザリンドのためなんだから我慢すべきだよ!」

「うわあああああああああん!!」


 さらに緑のマナが不安定になっていく。スイよ、もう少しお母さんに優しくしてあげようね。このままではうちの領地の収穫がヤバい。


「兄様のご友人はマグチェリアと光の薔薇で誤魔化せませんか?」


「光の薔薇はもはや幻の種だし、ロザリンドのマグチェリア(アリサ)は変異種だからなぁ…」


「え」


 光の薔薇ってそんなに珍しいの!?知らなかった。あ、でもウルファネアのお義祖父様んちにあるのが最後の一株だったはず。つまり、うちとお義祖父様んちとお義父様んちにしかないのか!

 そして、うちのマグチェリアことアリサたんは緑の精霊であるスイと緑の手を持つ兄と全属性魔力持ちの私により丁寧にお世話された結果、何が原因かは不明だが虹色の花しかつけなくなってしまった。本来は赤い花だし、最初は赤かった。いつから虹色なのかは不明である。さらに浄化力が増したそうで、普通のマグチェリアの数百倍はあるらしい。すごいねー。


「どちらにせよ厄介な事になるよ。僕も研究仲間を犯罪者にはしたくない」


「……犯罪者に?」


「こんな素敵すぎる実験材料を見たら、手に入れずにはいられないよ。僕は昔から見ているからそこまでじゃないけどね」


 光の薔薇とマグチェリアはレア過ぎたようです。


「さ、サボさん達は?」

「僕はサボさん達に万が一何かあったら嫌だ」

「ですよね!」


 他のレアものを提示したとして、問題がある。なので、他の解決案を提示した。




「精霊としての参加はダメなんですか?」




「あ」

「え」

「ぬ?」

「その手があったわね!」


 ユグドラシルとしての参加はまずいが、精霊体だけなら精霊王ですと言わなければ問題ない。新調したすべり台とトランポリンはうちの双子や孤児院の子供達が喜ぶだろう。


「精霊としてならダンの激ウマ焼そばも食べれますよ。時間が余ったら、スイのお手伝いをしてくださいね。どうせならもてなし側としても楽しみましょうよ」


「素敵!じゃあ、精霊として楽しんでくるわ!」


 とても晴れやかな笑顔で走り去った緑の精霊王。兄とスイが微妙な表情です。ミチェルさんは満足げに頷いていた。


「最初から、それを提案してくれたら良かったのに」


「……だって、今思いついたんだもん」


 ローゼンベルク邸は、今日も平和です。

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