事件の真相というか、オチ
すっかり凶悪疑惑によりしんなりした私。アルディン様が怖い令嬢に会ったことなんかすっかり忘れてました。
アルディン様はガツガツした肉食系と腐った系が苦手なので、腐った系だと判断したからです。腐った系に容疑者が居たことなどすっかり忘れていました。
首の後ろにチリッと…殺気?視線だけで殺気の元を探ると………さ○子が居た。いや、正確には、ボサボサな髪の女の子が血走った目で私をにらんでいた。
「ヒイッ!?」
いや、ガチで怖い!つい話していたカーライル公爵子息を盾にした。
「ヒッ!?」
当然ビビるカーライル公爵子息。アルディン様もさ○子に気がついたらしい。
「あ、この間の!」
この間の??女の子はビクッとすると一目散に駆け出した。幽霊じゃなかった。足があった。
「この間の?」
「この間、怖い令嬢が居たって話しただろう?」
なんと、腐った系だけでなくホラーも兼ね備えたご令嬢でしたか。
「ええと…あの方がダイナー伯爵令嬢?」
「恐らくは……」
あんな存在感がある者を『害がないから放置してました』としれっと言えるディッツ君男前…いや、関わりたくなかっただけかもしんないけど。
そして、以降もダイナー伯爵令嬢は出現した。今は昼食なのだが、木陰に潜んでいるのを見つけてしまい、超ビビった。いや、木陰にぼんやり人が居るって超怖い!
「ヒイッ!?」
「…お嬢様にも苦手なものがあったんですね」
ラビーシャちゃんが慈愛に満ちた瞳です。私にだって、色々苦手なものはありますよ!
「自分、話してくるッス。キルアちゃーん」
※キルア=ダイナー伯爵令嬢です。
凛花さんは剛の者でした。お前のコミュ力は本気でどうなってんだよ!
「あの………すいません。わ…私…話しかける勇気がなくて…ローゼンベルク公爵令嬢とあまりにもお似合いで…つい不躾に見てしまって……」
結論から言って、ダイナー伯爵令嬢はただの恋する乙女だった。
「あ、でもカーライル公爵子息とアルディン様が居るとき話しかけたのは…」
「ああ、あれは…お二方があまりにも理想の萌えの権化でして是非結ばれていただきたいと思いまして興奮して話しかけてしまいましたの。だって鬼畜公爵子息様と王太子様の下克上ラブなんて素敵じゃありませんか。男性同士なら嫉妬もいたしませんし、いっそローゼンベルク公爵令嬢とくっついてしまうぐらいなら王太子様とくっついて欲しいとおまじないを施そうと思いったのですが、何故か逃げられてしまいましたわ。だからまた施す隙がないかと狙っていましたの。最近はカーライル公爵子息にもおまじないをかける隙がなくて…暇があれば常に馳せ参じて物陰から隙をうかがっているのですが…」
ダイナー伯爵令嬢は恋する腐った乙女だったらしいです。怖い。
「とりあえず、今私は結婚してるからローゼンベルク公爵令嬢じゃなくて、バートン侯爵夫人です」
「あら…ではカーライル公爵子息のことは…」
「友人だと思ってます」
「そうなのか!?」
おい、なんでカーライル公爵子息が驚くんだよ。
「…逆に何だと思ってたんですか?」
「と…取引相手?」
「私は基本、取引相手と長々雑談しません」
「す、すまない」
まあ、嬉しそうだから許してやろう。さて、多数聞き捨てならない発言があったダイナー伯爵令嬢よ…睨まないで、君怖いから。
「ちなみにおまじないとは?」
「これですの!凄いんですのよ!これでおまじないをしたら、カーライル公爵子息があっという間に理想の鬼畜になりましたの!!」
本には『彼を射止める呪い全集』と書かれていた。中身をチェックしてみたら………これ、呪いじゃない。呪いだよ!!
「アウトォォ!!これおまじない違う!!呪いだから!呪術だから!!誰だこんな物騒な本を出しやがった奴は!?禁書指定だ!!出版差し止めだあああああ!!」
「うむ、すぐに手配しよう!カーティス、アデイル、ヒュー!!至急で頼む!!」
アルフィージ様もひきつる内容でした。検閲はどーなってんだよ!すぐ決断したアルフィージ様のおかげで本は無事に全て回収されました。
ちなみにダイナー伯爵令嬢が使った呪いは彼女の魔力がヨッッッワイおかげでたいした影響が出なかったものの、普通の人が使えば意のままに操れる魔法だった。あ、危なかった!!
結局、あの本はレムリア侯爵令嬢が執筆した本でした。
恋患いした従妹の気晴らしになるかとランズデルト侯爵子息があの本をダイナー伯爵令嬢にプレゼントしたらしい。
そしてダイナー伯爵令嬢はおまじない…というか呪いを行使した。
まさかの容疑者全員が関わっていた。てっきりおまじない本だと思っていたランズデルト侯爵子息は仕方ないとして、レムリア侯爵令嬢とダイナー伯爵令嬢にはペナルティが課された。
その名も『見てる君』の刑である。
ホラーゴーレム最新バージョン!ただ見つめられるって精神的にクるよね!むしろ私が厳しかったよ!見られてんのが私じゃないとわかっててもね!
レムリア侯爵令嬢は純粋に監視のため。見てる君は録画機能つきです。
ダイナー伯爵令嬢はストーカー化しないように、ストーカーされる気持ちを存分に味わっていただくことにした。
更にはこの騒動により2家は降格処分となりました。
後日、律儀なランズデルト侯爵子息がカーライル公爵子息に謝罪したそうな。さすがはデキスギ君。
あと、レムリア元侯爵令嬢とダイナー元伯爵令嬢は記録映像を確認した結果、微妙に反省してなかった。仕方がないのでロザリンドプレゼンツ、操られる恐怖の悪夢を散々見せてさしあげました。
翌日涙と鼻水まみれの二人に土下座され、謝罪され、足にすがりつかれたカーライル公爵子息は、顔がひきつってました。
頑張れ、強く生きろ。
しかしその後、何をやらかしたと私の席に怒鳴りこみ来ました。なんでもかんでも私のせいにすんな。
「ロザリンド様に、いかに自分がひどいことをしたか教えていただきました、と言っていたが?まだ無関係と言い張るか?」
「ぐぬぬ………いや、その…反省してなかったので…」
「気遣いは感謝するが、朝から鬼気迫る形相の女性2人にすがり付かれる身にもなってくれ」
カーライル公爵子息が泣いた。そんなにか。しかし、特にダイナー元伯爵令嬢は怖い。そんなにだな!
「大変申し訳ありませんでした!!」
即刻土下座を披露いたしました。いや、そこはマジでごめん!
どうしてこうなった!?
どうしてこうなった!?と書いた後『ロザリンドだから』とふっと浮かびました。解せぬ。きっとロザリンドの呪いです。




