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とんでもない結婚祝い

 もうちゃっちゃと式を済ませて、披露宴でダンのスペシャルご飯食べて、寝たい。そう思っていたが、過酷な現実はそれを許してくれなかった。色々色々色々色々言いたいことはあるが、神様達に余計なことすんなよと釘をささなかった自分の失態でもある。


「…ナニしに来たの」


「冷たいサボ~。我々の姫勇者をお祝いしに来たサボ」


 白いサボテン…つまりシヴァが返事をした。くそう、外身がサボさんじゃなかったら殴ってるのに!しかもなんだ、その語尾!


「…………止めた、が…ロザリンドを祝いたいのは……同じだったサボ」


 スレングス、お前もか。その語尾は依り代がサボテンだからなの?くそう、叱りにくい。


「だから、私達全員でお祝いしに来たサボ。でも、サボテンじゃ私の魅力が半減サボ~」


 クネクネするセクスィサボテンにイラッとするが、外身はうちの可愛いサボノバさんなので殴れない。そして語尾。ミスティア、お前もか。


「なんでよりによってサボテン達を依り代にしたの?」


「このサボテン達は以前に神クラスまで到達しているから、神の器になれるだけの力があるんだ…サボ」


 語尾に抗おうとしたがだめだったインジェンス。眼鏡割ったろか。


「とりあえず、気持ちは受け取ったから帰れ」


「ロザリン、おめでとうなの。鳥が贈り物持ってるの。鳥、持ってきて」


 いつの間にか復活したポッポちゃんから渡されたのは、やたらシンプルな白い封筒だった。宛名もない。中にはシンプルな便箋に、女性らしき綺麗な字で祝いの言葉が書いてあった。


『凛、ロザリア、ロザリンドへ。


 ロザリアは初めまして。凛は…久しぶり。あれから、凛に行ってらっしゃいって最後に言ってもらってから、かなりの時間が経ちました。あんなに嫌いだったこの世界が好きになって、この世界の人を愛して大事なものが増えていきました。それでも一度は向こうに、日本に帰ったけど会いたくて、寂しくて…いつの間にか私の居場所はこっちなんだと痛感しました。だから、彼が私に会いたがっているのをいいことに、こっちへ戻ってしまいました。

 日本での私の未練と居場所は凛だけでした。あんたは本当に頭がよかったから、何度助けられたかわかりません。その恩を返せなかったことがすごく心残りでした。だからかな?あんたが来る保証なんかないのに、あんたが来たら少しでも助けになるようにって…いつか現れる待ち人を助けてほしいって色んなものを遺しました。

 居場所を見つけたから行きたいって言った私に、よかったねって、行ってらっしゃいって言ってくれてありがとう。凛…ロザリンドの幸せを心から願っています。おめでとう、どうか幸せに』


 誰からなのか、差出人の名前がなくてもわかった。字にも文章にも見覚えがあったから。


「言葉は異界から来てるからね。魂の浄化…つまり記憶の削除に時間がかかるんだ。つまり、言葉の魂にはまだ記憶が残っていた。心残りと言うだけあって、凛への記憶は問題なかった。彼女の願いを叶えきってなかったから、意図的に残していたのもある。言葉は君が幸せな結婚をする、言葉の遺産も役に立ったと聞いて、ようやく未練がなくなったみたいだね。あと数年もしたら、新たな魂としてこの世界に生まれてくるよ。案外、ロザリンドの子供になるかもね」


 白サボテン…シヴァが多分ウインクした。この手紙はすごく嬉しい。色んな人からこと姉ちゃんは幸せだったって聞いてはいた。あの家に居場所がなかったこと姉ちゃんが、やっと見つけた行きたい場所。送り出してから、本当にこれでよかったのかなって悩んだこともある。こと姉ちゃんだけでなく、きっと私にとっても未練だった。いってらっしゃいといった私の判断は、間違いではなかった。こと姉ちゃんは、本当に幸せだった。


「ありがとう。すごく…すごく素敵な贈り物だよ」


「それから、こちらを」


 ポッポちゃんからお面を渡された。小面さんではなく、迫力がはんぱないお面だ。なんか呪われそうだから受けとりたくない。それは、女性の怨霊を表現する面。恨み、復讐の敵愾心を芸術化したモノ。『般若』と呼ばれる面だった。


「怖い。受け取りたくない」


「こちらは晩年言葉様が使われていた面です。これを装着して怒る言葉様には、いかなる悪ガキも涙を流して改心したというスゴいお面です」


「それ、怖いからなんじゃ…」


「言葉様の手づくりです」


「マジか。すごいね」


 般若の面はプロが作ったと言われても違和感がないほどの品だ。目からビームが出そうなほど怖い。こっち向けないで。怖い。


「なんでも、以前の面は少女の意味があるから大人っぽくしたと「こと姉ちゃん!!大人っぽいを間違ってるから!!」


 そういや、果てしなく天然だったよ!何故よりによって般若をチョイスしたんだ!


「クソガキが泣いて謝る威力だと満足されてました」

「わざと怖いやつ作ったな!?今納得したわ!!」


 くそう、天然こと姉ちゃんめ!しぶしぶ般若を受け取った。後で鍵子さんにあげよう。そうしよう。


「ロザリンド」


「はい?」


「……どうしよっか?」


「はい?………あ」


 固まっているご来賓の方々。確かに、どうしよう!??ま、全く誤魔化せる気がしないよ!??くそう、祝いに来るなら、ささやかにこっそり来いやあああああ!!頭をかきむしりたいが、全力で我慢して脳味噌をフル回転させる私がいました。

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