何故、この話を選んだかについて
お待たせしました。我らがヒロインロザリンドさん視点になります。
穏やかな曲が流れているが、正直私の心中は穏やかとは言い難い。むしろ嵐が吹き荒れている。控えめにいっても内心大暴れしている。
「お嬢様、顔がひきつってますよ」
しれっと言うラビーシャちゃんが憎い!
「ひきつりもするわ!本当なら床を転げ回りたいけど我慢してるんだから!なんでまたよりにもよってあの場面!?私とディルクの婚約とか、もっとマシなネタがいくらでもあったよねぇ!?」
「お嬢様が転げ回らない程度には良識があってよかったです。ちょうどお野菜さんやドラゴンさん達も出てましたし、画家さん達から婚約とかは地味だと却下されました。それから、ポッチと私が共通して知っていたのがこの話だったこともあります」
くそう、画家さんたちめ!と思っていたら、ラビーシャちゃんがさらに補足した。
「それに、外交的な意味で問題ない話でしたしねぇ。色々色々、まずいやつもあるじゃないですか。身の内に魔を宿していたお方とか、お嬢様がやらかした内政干渉とか、セインティア襲撃事件とか、魔が復活しちゃった理由とか。色々考えた結果の選択だったんですよ」
確かにその辺りは知られたらまずい。まずすぎる。まったく反論できずに唸っていたら、エンディングロールが終わったらしい。画面にでかでかと『次回予告』と書かれている。
次回、予告!??
「お姉ちゃん…お願いがあるんだ」
コウの姿が画面に映し出された。これ、めっちゃ見覚えある。いつだ!?頭をフル回転させる。コウにお願いされたことなんて、数えるほどしかない。
『少年の願いから始まる事件とは!?』
画面が切り替わり、暴れる赤いドラゴンに変わる。あああああ、まさか、ドラゴンおしりペンペン事件!?
『その危機に、戦士達が立ち上がった!!』
「ウルファネアボーイ1号!」
「…ウルファネアボーイ2号」
「ウルファネアボーイ3号!」
「ウルファネアシャドウ!」
「ウルファネアマスク!」
『勝利を我が手に!ウルファネア戦隊・ロザリンジャー!!』
全員、覆面をした…つい先程まではわりと普通だったもの達は1列に並び、上半身を円の動きで滑らかにスライドさせた。少しずつずらしているから全員顔が…というか覆面が見えている。ロザリンジャー初登場だああ!!主にウルファネアの人達が歓声をあげている。人気だもんね、ロザリンジャー。
「さあ…断罪の時間だ。神の加護を受けし戦士、ナイト・ヴァルキリー降臨!!」
ナイト・ヴァルキリー様まで出てきなすった!?野太い歓声があがるいまだにナイト・ヴァルキリー様は騎士さんに大人気ですな。
「責任者、出てこい!!」
そこにキレたアルフィージ様。うあ、嫌な予感しかしないよ…。
「マジカル☆リリカル☆メルメル☆メタモル☆メタモルフォーゼ!!」
七色の光が溢れ、リボンがミニスカートのドレスに変わっていく。カラフルな配色に色とりどりのグラデーションリボンがアクセントだ。
「魔法の力でズバッと解決☆得意技は力押し☆神に代わって拷問よ☆魔法少女☆ロザリンリン!!」
くるっとターンして、残念な美少女はポーズを決めた。
「雑魚は這いつくばって赦しを乞いなさい☆」
『次回もロザリンド様の活躍に、乞うご期待!!』
ダメージが半端ないわああああ!!よりによって、黒歴史中の黒歴史が出てきたじゃないか!!
「お嬢様、転げ回るのは式が終わってからにしてください。あと、髪が結いにくいです」
クールなラビーシャちゃんが憎い!結いにくいですと言いながらも手は細かく結っていて、きれいに髪がまとまっている。
「いや、これはダメージがでかすぎるでしょ!即死効果でしょ!酷すぎるでしょ!!」
「…この次回予告については私は本当に知らなかったので、恐らくはリンカちゃんの悪ノリではないかと……」
これについては流石に知っていたら止めましたと言うラビーシャちゃん。凛花めええええ!!後で絶対泣かす!ポッチも叱る!!あと、クランもふもふ主義メンバーもしばく!!
私はハリセンを手に、怒りと魔力を溜めるのだった。しかし、まだこのある意味公開処刑は終わっていなかったのである。




