女子として以前の問題
簡単な方針を決めたところで、昼休みもそろそろ終わりだし解散となった。
「ここだけの話、ロザリンドちゃんは誰が犯人だと思うッスか?」
「…確証はないけど、ダイナー伯爵令嬢は違うと思う」
個人が開発するにはあの術式は難解過ぎる。凛花の腐った婦人のメンバーだが魔法には詳しくないと凛花が証言しているし、多分犯人じゃないだろう。
容疑者以外の人間かもしれない、と凛花には話しておいた。1番可能性があるのは他国の工作員だよなぁ…カーライル公爵領は海があり、侵略の足掛かりにするなら私もあの領地を選ぶと思う。領主を無力化して、プライドをつついてそそのかせば…
「頭が痛いわぁ」
この予測が当たらないことを祈る。
そして、カーライル公爵子息となんだかんだで一緒にいるのだが…
「今度領地で米作らない?」
「コメ?」
私は米の布教をしていた。カーライル公爵子息とすっかり仲良くなってしまい、複数の提携事業も展開することに。だ、大丈夫!犯人探しは忘れてないよ!
「すまない、ちょっと…あ、アルディン様…その……」
「「??」」
首をかしげる私達。カーライル公爵子息はどうしたのだろうか。
「カーライル公爵子息はトイレに行きたいみたいですよ」
見かねたラビーシャちゃんが助け舟…じゃないな。ニヤニヤしてるし嫌がらせをした。ただ、トイレに行きたいというのは当たっていたらしい。
「そうか!なら一緒にトイレへ行くか!」
アルディン様声がでけえ。腐った婦人同盟が喜ぶからやめた方がいいですよ?
そして、彼らはトイレから帰還したのだが……
「ロザリンドぉ…」
どちらも顔色が悪い。特にアルディン様はなんか怯えている。
「どうしました?」
「ウケとかセメとか、よくわかんないが気持ち悪かった…!食われそうな気がした!」
アルディン様に抱きつかれました。なんとなく察した私はよしよししてあげました。うん…カーライル公爵子息のトイレに同行せよと言った私のせいでもある。すまん、アルディン様。
「は、破廉恥ですわ!」
レティシア嬢が抗議した。いや…破廉恥??首をかしげる私達。
「アルディン様は弟みたいなものだから別に…破廉恥ではないかと」
「ロザリンドは姉みたいなものだから別に…破廉恥なのか?」
「あ、アルディン様みたいな魅力的な男性にやましい想いがないなんて、嘘ですわ!バートン侯爵という婚約者がいるくせに!!」
「んん?」
「俺は誉められたのか?あれ?婚約者??」
またしても首をかしげる私達。
「そ、そうですわ!ロザリンド嬢は最低ですわ!」
そうですわ!とレティシア嬢の取り巻きも私を批判するのだが…
「私は夫だけを愛しております。誓ってアルディン様には親愛と友愛しかございません。私は夫…ディルク=バートン侯爵に身も心も捧げておりますわ」
「うむ。ロザリンドは既に結婚していて夫とも仲睦まじいぞ。俺を魅力的と言ってくれたのは嬉しいが、ロザリンドが俺と恋人になるのは世界が滅ぶよりあり得ないな」
「ないね」
「ありえませんわね」
「ありえないですね」
私、ミルフィ、ラビーシャちゃんが頷いた。
「えー、アルディン様カッコいいのに、ドキッとかしないんですか?」
「しない。私がときめくのはマイダーリン・ディルクだけ」
リリアンに真顔で返事をした。
「結婚??で、でも…公衆の面前で抱き合うなんて……う、浮気ですわ!」
「あー、すいません。ディルクにはお仕置きされそうだなぁ…」
「お仕置!?すまん、なんか凄く怖い令嬢がいたんだ。ロザリンドは無駄に強いから安心感が……」
『……………………』
何故だ…一気にロザリンド様女として見られてないんだね的な同情した視線になったよ!いや、間違ってないけど、その可哀想なモノを見る目をやめて!!
「あの…ごめんなさい」
終いには、レティシア嬢にまで謝罪された。
「泣いてもいいですか」
切実に、ディルクによる慰めが欲しい…!私が涙目ですよ!そういやアルディン様、強いひと=私だったよね!そのイメージは変わらなかったんだね!
「ロザリィは可愛いですわ」
「お嬢様は世界一のご主人様です。たしかに無駄にたっくましくて強いですが、素敵なレディですよ」
ミルフィがハグしてくれました。天使だ!ミルフィ大好き!!
「ラビーシャちゃんは上げてんの?落としてんの?」
「落として上げてみました。でもお世辞でもなんでもなく本心です。お嬢様が浮気なんて、お嬢様が世界征服すると言い出すぐらいありえないですね」
「ないな」
「ありませんわね」
「ないね」
「でしょ?」
どや顔するラビーシャちゃん。確かにないわ。
「…ロザリンド嬢は世界征服なんてするんですの?」
「…やろうと思えばできるんじゃないか?」
「そうですわねぇ」
「多分できますよ。独りでセインティアを制圧しましたし」
『………………………』
レティシア嬢をはじめ、クラスメイトから距離をとられました。
「あ、あれは神様が協力したから…!」
「……独りで制圧したのは否定しないんですのね」
「あ」
見事墓穴を掘った私にラビーシャちゃんが爆笑していた。
平穏な学生生活が遠のいていく…!
しばらくクラスメイトからビビられる羽目になりました。




