肉の聖女伝説
まだまだどこかの王族視点になります。
ついにロザリンド様達が帰還した。大量肉を運び、野菜とパレードするさまは、控えめに言ってもシュールな光景だ。なんだこれ。
「聖女様~!」
「聖女様万歳!」
「聖女様こっち向いて~!」
肉と野菜をもたらしたからだろう。聖女様は大人気だが、何やら挙動不審だ。どうやら、やること為すことド派手なわりに、あまり目立ちたくはないらしい。
物理的に派手…まだキラキラ輝いてるので、とてつもなく目立っているがな。
「ロッザリンドォォ!!」
テンションが上がったのか知らないが叫ぶ白い巨人騎士。
「やめて、私の名前を叫ぶなぁぁ!だから聖女なんかじゃないったらぁぁぁぁ!!」
そもそも聖女にもなりたくなかったのか。だいぶかわいそうになってきた。
「なんと謙虚な…」
いや、あれは本気で嫌がっているだろう。
「神々しく輝いておいでだ」
物理的にな。本人涙目だぞ。気がついてやれよ。獣人は大雑把だからか、誰も嫌がっているロザリンド様に気がつかない。
ロザリンド様の隣でディルク様が慰めている。そうか、ロザリンド様は非常時は仕方ないが基本目立ちたがらないのだな。あれだけの偉業を成し遂げておきながら、侯爵夫人として慎ましく暮らしている理由を理解した気がした。
ん?つまり、これは実話?実話………なのか??
城に到着したロザリンド様を待っていたのは、清純な美少女だった。ロザリンドの親友・ミルフィリアと表示が出た。
ロザリンド様は白い巨人騎士から飛び降り、駆け寄るミルフィリア嬢に抱きつかれた。
「心配…しましたのよ!怪我はありませんの?痛い所は?なんでキラキラしてますの?」
よくそこ指摘できたな。皆スルーしていたのに。
「ミルフィ、落ち着いて。怪我はしてないよ。キラキラはユグドラシルさんのいたずらです…多分」
「まぁ…怪我がなくてよかったですわ!」
すすり泣くミルフィリア嬢。心配かけてごめんね、と優しく頭を撫でるロザリンド様。
「なんか、小説のヒーローとヒロインみたいだな」
誰かがポツリと呟いた。
確かに。
戦いから帰ってきた英雄を迎える美少女。信じて待っていたのよと涙を流す。
確かに、ロザリンド様が男ならば絵になる光景だな。
「「……」」
二人が固まり、ロザリンド様が先に動いた。
「ミルフィ、寂しい思いをさせてごめん。もう離さないからね!」
いきなりイイ声(美少年風)で喋ったロザリンド様。一瞬キョトンとしたミルフィリア嬢だが、すぐに微笑んだ。
「ええ!もう離れてはいやですわよ!」
ひし!と抱き合う美少女達に、周囲は硬直している。流れる沈黙。
ディルク様は涙目。
白目むいてる護衛らしき青年。
騎士達は痙攣している。笑いをこらえているようだ
「ふは、あはは!」
「ふふふ、面白いですわ!」
そして、笑いだす美少女達。その笑いは周囲に伝染した。
ああ、戦いは終わったのだとその笑顔で理解した。
「心からの感謝を」
ジュティエス王子がロザリンド様に笑顔で話しかけた。
「感謝はいいので許可ください」
「…許可?」
「肉祭」
「…本気か」
私も本気か?と聞きたかった。マジでやるのか。
「私はやるやる詐欺はしません。本気です。私はやると言ったならやります」
「……わかった。許可しよう」
「おっしゃあ!騎士の皆様、責任者の許可は貰いました!中庭で肉祭ですよ!カマドを作れ!鉄板用意!シェフの手配だ!肉を焼けぇぇ!」
「はい!ただちに!」
「ついでに町からも料理人連れてきて!町の人にも肉を配るよ!」
「承知!!」
「皆様、今宵は肉祭!肉汁したたらせますよ!肉食い放題だぁぁ!!」
「肉ぅぅぅ!」
「肉が俺達を待っている!」
「生きててよかった!肉が食える!!」
「肉が食える肉が食える肉が食えるぞ!!」
「食える食える食えるぞ!肉が食えるぞぉぉぉ~!!」
「肉肉肉肉肉肉肉肉肉!!」
「にーくにく!にーくにく!」
素晴らしい手際で肉祭りを開催してしまったロザリンド様。皆が笑顔で肉を貪り食っている。
いや、よく見たら多分クリスティア騎士&冒険者は完全にドン引きしている…ロザリンド様やジュティエス王子もドン引きしているな。
穏やかな音楽と共に製作に関わった人間の名前が流れていく。
登場人物達が楽しげに肉祭りの街を歩いていく。穏やかな気持ちで眺めていたが、ちょいちょい高名な画家が入っていて落ち着かなくなった。どうなってんだ!??
そして、音楽と名前がなくなり、ディルク様が呟いた。
「…ロザリンドのごはんが食べたい」
え?ロザリンド様、料理できるのか?
「ディルク、私がおいしいご飯を作るよ!」
できるのか。そして、串焼きを焼くロザリンド様。美味しそうにパクパク食べるディルク様。
それを羨ましそうに見つめるウルファネア騎士や住民達。
ロザリンド様はその無言の圧力に敗北した。
「たんとお食べ!」
そして、行列のできる串焼き屋となったロザリンド様は、ひたすら串焼きを作るのだった。
そして、話は終わったらしく暗くなった。
『なんだそれ!??』
観ていた全員が、予想外すぎるオチに驚愕していた。いや、戦勝パレードとか、もっとこう、華やかな終わりでよかったんじゃないか!?え!?なんで串焼き??え?えええええ!??
後で絶対どこまで事実だったか調べてやろうと思った。気になって寝れないわ!!




