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進撃のロッザリンドォォ

 まだどこかの王族さん視点になります。

 そして出撃したロザリンド様一行は凄かった。大半を殲滅したとはいえ、残った魔物達はけして少なくない。

 しかし、彼らはスイスイと進んでいく。後続の騎士達が置いていかれる始末だ。


、まず、英雄ジェラルディン殿。彼は獣化して敵を(比喩でもなんでもなく)蹴散らしている…剣も使っているが、素手でも敵をぶん投げて道を作る。そして、敵が紙細工かと思うほどに吹き飛んでゆく。化け物じみた強さ。それこそが英雄ジェラルディンだ。だからこそ、彼は『英雄』と呼ばれるのだ。


 そしてジェラルディン殿を援護する黒豹の騎士。ジェラルディン殿が出過ぎないようさりげなく調整しつつ、フォローしている。彼もまた手練れである。無駄のない多彩な攻撃で敵を屠っていく。黒豹の騎士に『ロザリンドの婚約者・ディルク=バートン』と表示が出た。確か今回結婚する伴侶の名前だ。ロザリンド様はこの時すでに婚約していたらしい。銀狼英雄と黒豹騎士は、道を切り開いていく。


 ディルク様がチラッとロザリンド様を見た。


「ロザリンドが危なくない位置にいると安心だね」


 その笑顔はとても優しく、二人が政略ではなく想いあっているのが感じ取れた。



 さて、すごいのは銀狼・黒豹ペアだけでない。これらに続く騎士ともぐらと思われる獣人も凄かった。

 騎士は目の前の敵を最低限の動きで仕留める…という感じでこちらもすさまじく強い。舞うように、優美ささえ感じさせるほど軽やかな動き。剣技だということを忘れてしまいそうになるほどだ。

 それに対してもぐら?の獣の人は(物理的に)ちぎっては投げちぎっては投げ…ちぎり、潰し、爪で切り裂く。穏やかそうな見た目に反して残忍…というか容赦なく魔物を倒していた。




 そして、やはりロザリンド様。彼女は圧倒的であった。




 白銀の騎士を従え、その肩に堂々と座っている。白銀の騎士が見たことのない武器で敵を遠隔攻撃していた。その射撃精度は素晴らしく、必ず一射で敵を仕留めている。

 時折ジェラルディン殿が出過ぎないよう指示を出し、傷ついた騎士や兵士を癒す。援護をする広い視野と、的確な指示。まさに、女帝の風格と器を兼ね備えた人物と言えよう。彼女に夫がいなければ、是非息子の妻にと願っただろうな。

 戦場にあってさえ、気高く、美しく、分け隔てなく優しい。聖女と崇められるのも当然であろう。聖女などではないと謙遜する謙虚さも素晴らしい。


 ちなみにロザリンド様へ接近した敵は、小さなケサランパサランが毛針で串刺しにしていた。ケサランパサランとは、こんなに強い生き物だっただろうか。それとも、彼女が鍛えたのだろうか。

 そして、本当にこれはどこまでが実話なのか。ただ娯楽として楽しめばよいのはわかっているが、気になって気になって仕方ない。

 お願いだから、後ででもいいので教えてくれないだろうか。




 やっとユグドラシルが見えてきたようだ。しかし、魔物の群れがユグドラシルを攻撃しようとしている。


「ヴァルキリー、急いで!」


 ロザリンド様の声がかなり焦りを帯びていた。ユグドラシルが無くなれば、その国は死の大地となる。ウルファネアは滅んでいないのだから大丈夫だと自分に言い聞かせるが、映像から目がはなせなかった。


 もうだめだ!と思った瞬間、ユグドラシルに襲い掛かった魔物はクリスタルドラゴンに吹き飛ばされた。


「ルラン!?」


「ジャッシュに頼まれた!加勢する!我が同胞達も居るぞ!」


 ドラゴンに『クリスタルドラゴン・ルラン。ロザリンドの友人…友ドラゴン?』と表示が出た。確かに、人ではないから友ドラゴン?になるのも仕方ない。空がキラキラしてる!クリスタルドラゴンの群れが来たらしい。

 そういえば、先程の余興で世にも珍しすぎるドラゴンのダンスを見た。まさか、あれ全部ロザリンド様が飼育しているのか!?いや、友ドラゴン?だから…友人関係なのか??


「ドラゴンがこんなに!?」


 ウルファネアの騎士達が騒ぐ。確かに、あれだけの群れに襲われたら(ロザリンド様達はともかく)ひとたまりもない。


 ロザリンド様が叫んだ。


「クリスタルドラゴンは我が盟友である!この危機を乗り越えるため、助力に来てくれた!傷つけてはならない!」


「おおおおお!」


「流石は聖女様!」


「クリスタルドラゴンすら従えるとは…流石英雄様の主!」


 ウルファネアの騎士達は、皆感動したようでウルウルしている。確かに、この危機的状況で現れた思わぬ強力な助力…それをもたらした聖女。彼らの気持ちはよくわかる。

 ドラゴンの助力もあり、絶望的な状況から殲滅戦へと移行した。







「着いた!」


 ロザリンド様がようやくユグドラシルにたどり着いた。結界をはり、ユグドラシルに呼びかける。ディルク様達は引き続き残りを殲滅しに行った。


「ユグドラシルさん、起きて」


 おい。ムニャムニャもう食べれない?完全に寝ぼけているじゃないか!!スゲーな、この状況でか!というか、ユグドラシルはこんなに明確にしゃべるのか!?多少の意思を感じたことはあるが、聞いたことがないぞ!??


「スイ」


 緑色の少年に『ロザリンドの加護精霊・スイ』と表示が出た。なるほど、緑の加護精霊がいるからわかったのかもしれない。


「ロザリンド、目が怖い」


 スイはドン引きしているが、状況が状況だけに仕方がないと思われる。私でもキレたくなる状況だ。


「この寝ぼすけさんをたたき起こそうと思います」


「…うん」


「魔力を無理矢理そそいだら…」


「確実に起きると思います」


「よし」


 よしなのか。聖女様は躊躇いなく冒険する性質であるらしい。


「ためらいがない!?また変な進化したらどうすんの!?」


 変な進化?何か変な進化を……何故か一瞬、画面をやたらと筋肉が発達したサボテンが大量に走り去った。え??

 私が戸惑っている間にも話は進む。


「とりあえず、今より悪くはなんない!」


「確かに!サポートするよ!」


 スイとロザリンド様の魔力がユグドラシルにそそがれ、ユグドラシルが…ユグドラシルが…


「ロザリンドはどうなってんの?」


「いや…これ私のせいなの?」




 金色に光輝いた。



 ええええ!??こんな状態のユグドラシルは見たことがない。大丈夫なのか!??


「…とりあえずユグドラシルは起きたよ。どうするの?」


「ユグドラシルさん、大海嘯が起きてます!周囲に結界はって自衛してください!あと謝りますから魔力供給を絶たないで!」


『ふぁぁ~あら?確かに大変ねぇ。わかったわ。ロザリンドちゃんの願いだものね』


 え?ロザリンド様はユグドラシルの知り合いなのか!?というか、やっぱりユグドラシルがめっちゃ喋っている!!

 緑の加護持ちだからか!?聖女だから特別なのか!??

 そして、どっからどこまでが実話なんだよ!!


「ありがとう!」


『大地に恵みを』


 大地にマナが戻っていく。ユグドラシルの金色の輝きが大地に吸い込まれていくのがわかった。


『私のせいでごめんねぇ。おわびにこれアゲルわ』


「へ?」


 金粉みたいなキラキラを吹き付けられたロザリンド様。


『魔物はその輝きを嫌うから。村なんかにまくといいわ』


 ロザリンド様はそれを吹き付けられたのが納得いかないと言いたげな顔をしていた。粉のせいで、ロザリンド様は物理的にキラキラしている。スイは爆笑していた。


「じゃあ遠慮なく貰っていきます。またね、ユグドラシルさん」


『うん。頑張ってね~』






 ロザリンド様がユグドラシルを後にすると、クリスティア騎士団と冒険者達がようやく到着したらしい。予想外に早かったが……。


「嬢ちゃん、無事か!?…それなんだ?」


 壮年の男性に『クリスティア騎士団長・ルドルフ』と表示が出た。


「ロッザリンドォォ!!」


 白銀の騎士が(多分)挨拶した。


「…ヴァルキリーです」


「嬢ちゃんのか」


「…はい」


 騎士団長は何か言いたげだったが、それ以上つっこまずに話しを変えた。賢明な判断だな。


「しかし、今回の大海嘯はスゲーな。あのクレーターとか、どんな大物が出たんだ?」


「……」


 目を逸らすロザリンド様。ここにいる美少女の皮を被った大物ですと教えてやりたい。


「と、とにかくディルク達はどこですか?」


「あっち」


「わぁ…道が出来てますね」


 屍が道のようになっていた。


「しかし、スゲー数の死骸だな」


「ルドルフさん達クリスティア騎士団及び、冒険者さん達にお願いします」


「おう?」


「…この死骸を精肉してください」


「…俺達は何しに来たんだ」


 本当にな。


「すいません。予想以上でして」


 ロザリンド様もまさか自力で大半をどうにかできるとは思ってなかったんだろうな。

 英雄達もとんでもないしなぁ。

 本当に、どっからどこまでが実話なんだよ!!


「まぁ、クリスティアとウルファネアの平和のためだ。そう言わずに頼むよ」


 アルフィージ王子が通信で指示を出す。

 第一王子の命令だ。従わないわけにはいかないだろう。騎士と冒険者達は死骸を解体し始めた。それにウルファネアの騎士・兵士も加わったのだった。


「アルフィージ様、私はラビーシャちゃんと魔獣達を見てきます」


「ラビーシャ?」


「私のメイド兼護衛ですよ。私の魔獣と精霊を連れて近隣住人の救助・避難と保護をさせてました」


「…いつの間に」


 本当にいつの間に。賢いにもほどがあるわ!!


「大海嘯を見てすぐ」


「……わかった。行ってきて。大半は片付いてる。あの化け物並の3人を害せる魔物も居ないだろう。ただ、残りはまばらにいるからくれぐれも気をつけて」


「はい」


 ロザリンド様は白銀の騎士の肩に乗り、駆けていく。村にたどり着くと、兎獣人に話しかけた。


「ラビーシャちゃん!」


 少女に『ロザリンド付きメイド見習い・ラビーシャ』と表示が出た。


「ご主人様…なんかキラキラしてません?」


「…うん。このキラキラをまくと、魔物が来なくなるらしいよ」


 確かに、ロザリンド様はキラキラと輝いていた。袋をラビーシャに渡す。


「うげ。これ聖樹の結晶じゃないですか」


 聖 樹 の 結 晶!??


 はああああ!??と叫び出したくなった。かろうじて耐えた。


「それ何」


 知らんのか!アンバランスだな、ロザリンド様!!


「超レアモノですよ。魔物が来なくなるんで主要施設に必ず使われます。それだけあれば、ローゼンベルク邸が3件建ちます」


 ローゼンベルク邸の規模はわからんが、裏でさばけばもっと高く売れるだろうな。


「…………」


「どうします?」


「使う」


「マジですか!?」


 マジか!?ためらいが無さすぎる!!もったいない!!


「マジマジ。コウ達をずっと各地に置いとけないし、仕方ない」


「ご主人様は…」


「お人よしですよ。さっさとまいちゃお」


 この人は、本当に清らかな人なのだなぁと思った。ふと周囲を見たら、拝んでいる人や涙を流す人もいた。

 筋肉ロザリンドと呟いていたやたら筋肉が発達した一団がいたのは、一刻も早く忘れてしまいたい。




 しばらくしたら大半を殲滅しまくっていた4人が合流した。


「ロザリンド、心配したよ!ユグドラシルがものすごく輝いてたし…なんでキラキラしてるのかな…いつもロザリンドは綺麗だけど」


 ロザリンド様は、現在も物理的に輝いている。惚れたフィルターではない。そして、比較的まともな反応なディルク様にホッとする。


「ディルク、お疲れ様。ユグドラシルさんにやられてキラキラしてるだけです。それより怪我をしてないみたいでよかった」


「うん」


 ディルク様にじゃれつくロザリンド様を見て、過酷な戦い…になるはずだったものは終わったのだと思った。



 そして、ロザリンド様達はウルファネア王都に凱旋したのだった。


 最後にでもいい。誰か頼むからどっからどこまでが実話なのか教えてくれ。

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