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レジェンドおぶロザリンド

 ロザリンドさん視点だとツッコミがうるさそうなんで第三者視点になります。

 あまり親しくない他国の王族視点です。

 それは、なんとも不思議だった。滑らかに、まるで生きているかのように動く絵。そして、魂が高揚するかのような歌。あのような歌は初めてだ。吟遊詩人を呼ぶこともあるが、基本ゆったりしていて眠くなるような歌ばかりだ。


 歌が終了すると、壁に文字が映し出された。なになに?『この物語は、一部フィクションです。軽い気持ちでの鑑賞をお願いいたします』


 ふぃくしょんとはなんだ?と首をかしげていたら、話が始まったらしい。


 可愛らしくどこかの城?を大きな獣に乗って移動する幼い娘。


『これは、とある令嬢の物語。肉の聖女のお話である』


 話は、少女が学校の同級生と旅行に行くところから始まった。なんでも体育祭の景品らしい。貴族の学校ではたまにあるのだが、ああいったのは大概最高学年が勝つはず。しかし、少女や学友達は幼かった。違和感をおぼえたが、話に集中する。


 たまたま訪れたウルファネアで発生した大海嘯。それが絵であると理解していても、迫力があった。絶望が形になって押し寄せてくる。そんな絶望的な状況で、彼女は立ち上がった。


「緊急事態です!大海嘯が来ます!ざっとの見積もりですが、数は1万!大規模なものと思われます!」


 彼女の言葉にウルファネアの騎士達は狼狽えた。無理もない。絶望的状況だ。


「オロオロする暇があれば責任者呼んで来い!打開策がある!」


 なんと頼もしい少女なのだろうか。凛々しくも美しい。

 少女の言葉に慌てて走り出したウルファネアの騎士達。

 金髪の少年が少女を見た。少年もまた、少女のように凛として動揺した様子はない。他の少年少女は真っ青になって怯えているが無理もない。

 いくらか年上の少年達は緊張した様子だ。


「…ロザリンド、この国を救えるか?」


 金色の少年が少女に語りかける。少女は少し考えると頷いた。少年に『クリスティア第二王子・アルディン』と表示が出た。


「………んー、多分できます。手段を選ばなければ」


「…公爵令嬢ロザリンド=ローゼンベルク」


「はい」


「手段は問わない。ウルファネアを救え」


「…わが君の御心のままに」


 少女…いや、まだ幼い肉の聖女にして勇者であるロザリンド様は騎士のように礼をとった。


「アルディン!?」


 焦ったように年上の少年が声をあげた。少年にも『クリスティア第一王子・アルフィージ』と表示が出る。


 ロザリンド様はそんな二人を見たが、すぐに動き出した。通信の魔具を取り出し、てきぱきと指示を出していく。クリスティア騎士団への出動要請、騎士団を移送するための大規模大転移陣の依頼、冒険者ギルドと英雄へも連絡をした。


 有事にこそ、その人物の真価が見える。ロザリンド様は有能だった。この年齢では有能すぎるほどに。


「責任者を連れて参りました!」


 責任者はまだ幼い獣人の少年だった。『ウルファネア第三王子・ジュティエス』と名前が出る。

 一瞬ロザリンド様は目を見開いて驚いた様子だったが、すぐに切り換えて少年…ジュティエス王子へ大まかに状況を説明した。


「クリスティアに借りが…などと言っている場合ではないな。心から助力に感謝する」


「私ではなく我が君に。彼の命令ですから」


「困っているなら助けるのは当然だ」


 なんというか王族としては純粋すぎる少年、アルディン王子に若干ジュティエス王子が怯んでいる。確かに人が困っているならば助けるのは当たり前だ。しかし、国家間となればそうはいかない。




 ロザリンド様は城の中庭に出た。正確には、出撃準備をしている騎士達がよく見えるバルコニーだ。


 拡声魔法を使ったのか、ロザリンド様の声が城に響いた。


「皆さん、よく聞いてください!魔物の大群が押し寄せています!しかし、恐れるな!勝てば焼肉食い放題ですよ!!」


「…焼肉?」


 誰かの腹の虫が鳴った。よく見れば、騎士達は痩せ細っている。毛並みも悪く、栄養状態がよくないのだろう。よく描かれているな。しかし、肉?何故肉??今そんな事を話している場合ではないだろうに。


「そう、あれだけ大量の魔物=大量の肉ですよ!倒せばたくさん食べられる!食べ放題も夢じゃない!」


「にく…」


 画面の端で人族の騎士達が爆笑していた。うん。笑っていいのかわからんが、気持ちはわからなくもない。この危機に、肉食い放題ですよはないだろう。


「皆さん、今宵は肉祭です!肉汁滴らせますよ!それ、にーく!にーく!」


「やるぞ!」


「肉!!」


「にーく!にーく!」


 しかしウルファネアの騎士達は明らかにやる気…いや、殺る気を見せた。瞳が輝き、だいぶ目が血走ってて怖い。飢えた狼のようだ。これなら大海嘯も喰らい尽くすのではないだろうかと思わせるほどの迫力だった。


 中庭に肉コールが響き渡った。まさかの肉で鼓舞が成功してしまった。先程までの絶望した様子は欠片もなく、皆が肉しか考えていない様子だ。獣人だからなのか?正直理解できない。 これ、どこまでが実話なんだ!?


 私が困惑しているとロザリンド様の指輪が輝いて白銀のドレス姿になった。さらに別の指輪が虹色に輝く。





 それは、神々しき騎士だった。ただし、サイズがとてつもなく大きな巨人の騎士。騎士は叫んだ。




「ロッザリンドォォ!!」




 これ、どこまでが実話なんだ?誰か知っている者は居ないだろうか。しかしよく考えたら、多数の上級魔獣にドラゴンを従え、世界を救ったロザリンド様だ。ほぼ実話なのではないだろうかという気がしてならない。


「ヴァルキリー、アーチャーモード!!」



「ロッザリンドォォ!」



 ロザリンド様の呼びかけに、白銀の巨人騎士が応える。応えてるんだよな??何故ロッザリンドォォと叫ぶのだろうか。

 弓兵(アーチャー)モードと言われたからか、白銀の巨人騎士は巨大な弓を出現させ、構えた。


「全魔力を解放。全属性増幅開始!」


 虹色の魔力が弓に集まっているのか、弓が光輝く。


「唸れ、私の中二病!!撃てぇぇぇ!!」


「ロッザリンドォォ!!」


 白銀の巨人騎士はロザリンド様の指示に従い、虹色に輝く魔法の矢を大海嘯に向けて放った。




そして、大海嘯の3分の2が殲滅された。もう一度言う。3分の2以上が殲滅された。





 これ、どこまでが実話なんだ!??大半を一人で殲滅したと!??


「…おうふ」


 いやいや、ロザリンド様!こっちが『おうふ』と言いたいですよ!?とつい画面にツッコミたくなった。


「ロザリンドだけでいんじゃね?これ騎士団とか要らなくね?」


 さっき隅で爆笑していた騎士がサラッと事実を突きつけた。確かにもう彼女だけでどうにかできる気がする。


「そ、そんなことないもん!魔力ポーションの飲み過ぎでお腹がタポタポになるよ!結構疲れるし!」


「……それだけなら別によくね?」


 この騎士、身も蓋も無いな。むしろお腹がタポタポになって疲れるぐらいなら、死者も出ないし別にいいよなぁ。


「……………うん。けど、大半は仕留めても残りの始末があるからさ…」


「まぁなぁ。で?司令官様、次はどーすんの?」


「もー1発足止めの魔法撃ったら残党狩るよ!ディルクとカーティスは私と来てね。アデイルとヒューは殿下達の護衛を続行!皆は怪我人が来る可能性が高いから、救護をよろしく!先生は皆を指揮してくださいね」


 てきぱきと指示を出すロザリンド様。

 そこに英雄ジェラルディンと冒険者が現れた。絵の再現率が素晴らしいな。招待状を持ってきたジェラルディン殿そっくりだ。


「主、状況は?」


………主?つまり、ロザリンド様は英雄ジェラルディン殿まで従えている!?だ、だから招待状を持ってきたのか!??どの国にいくら金を積まれようと、いかなる爵位を与えようとどこにも膝を折らなかった男が!??


「姫さんはなんつーか…大海嘯に遭遇するとか流石だな」


 冒険者はロザリンド様と親しいのか、呆れた様子だった。


「人が大海嘯起こしたみたく言わない!ジェラルディンさんは使いたくありませんでしたが、この状況ですから仕方ありません。ジェラルディンさん、私の知る未来では貴方はここで死にます。ですが私が数を大幅に減らしましたし、未来と違い貴方は独りではありません。主として、貴方に命じます。どんなに惨めであろうとも、何を利用してもいいから生きろ。貴方の死を悲しむ者がいる限り、生きろ。死んだら貴方の嫁と息子と、私が大号泣する。貴方の死で私達が不幸になることを、忘れるな!」


 その強い言葉に、英雄ジェラルディンがロザリンド様を仕えるべき主と心に決めた理由が理解できた気がした。


「我が主…必ずやご命令を果たします」


「ディルクとカーティスはジェラルディンさんが前に出すぎないようフォローよろしく!」


「「了解」」


 各自が行動を開始しようとした所で、ジュティエス王子が叫んだ。


「ロザリンド!すぐ出撃してくれ!ユグドラシルが危険だ!」


「え」


 何やら魔法で確認したらしいロザリンド様が血相を変えた。ユグドラシルは国の生命線とも言える存在だ。無理もない。


「アルフィージ様、この遠見ができるサークレットと通信魔具を貸します!指揮はよろしく!アルディン様はアルフィージ様のサポート!」


「任されたよ」


「解った!」


「ロザリンド、どうか無事で」


 美しい少女が瞳を潤ませてロザリンド様に語りかける。ロザリンド様は美少女をギュッと抱きしめて、穏やかに笑いかけた。


「もちろんです!ディルクも居ますし、私が負けるなんてありえません!帰ったらガールズトークですよ。今夜は寝かせませんからね!」


「待ってますわ!約束しましたからね!」


「はい、必ず!さぁ行きますよ!ジェラルディンさん、騎士達に号令を!」


「うむ」


 英雄ジェラルディン殿が騎士達の前に立った。何やらメモをチラチラ見ている。しかし、声は威厳に溢れて素晴らしかった。


「勇敢なるウルファネアの騎士達よ!我が国を救うため、我に続け!!」


 ウルファネアの騎士達は歓声をあげた。士気はこれ以上ないほど高まっている。


「おおおおお!」


「英雄様と神の使いを従えた聖女様が居るんだ!勝てる!」


 ん?ああ、ロザリンド様か?


「我々に勝てば肉祭だと示した聖女様が居る!」


 うん。ロザリンド様だな。


「聖女様に続け!」


 何やらロザリンド様がしょんぼりしているように見えるが、ロザリンド様は英雄と黒い獣人騎士を連れて戦場に向かった。


 え!?こんな幼い少女が!?いや、大海嘯の大半を殲滅してしまうような少女だからいいのか!??


 私は混乱したが、ひとつだけ確かなのはロザリンド様はこの時点からすでに勇者の資質を持っていたということだ。

 長くなったので、次回に続きます。

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