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 兄がうっかり本気を出しすぎて巨大なお野菜さん達がシャムキャッツ王都に行ってしまった。すぐに追いかけたい所だったが、四方八方に散ったお野菜さん達も放置できない。大半を回収したが、何体かはシャムキャッツにたどり着いてしまった。





 そしてお野菜さん達は、無事?解体され、調理されていた。





「え、えええええ…」


 何故に??いや、パニックになるよりはいいけど、えええええ!??普通あんな巨大野菜が来たらビビるよね!?平然と調理なんかしないよね!?

 驚きすぎて固まっていたら、シャムキャッツの王様が話しかけてきた。


「聖女様!シャムキャッツの郷土料理はいかがですかな?聖女様の恵みである野菜、ありがたく頂戴いたしました」


 どうやら王様がお野菜に気がついてくれたらしい。お野菜さんはおいしいおでんになっていた。お出汁のいい香りがたまらない。蒟蒻もあった。おでんの蒟蒻は正義だ。ちくわぶが無くて残念だった。トマトは初めて食べたがおいしかった。今度うちでも作ろう。大根も味がしみてて絶品だった。お土産にしたいぐらいだ。

 おでんを食べながら現実逃避をしていたが、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだと某少年の如く現実を見据えた結果、私は…………決断した。


「お野菜は兄からのプレゼントになります。私ではありません。偉大なる我が兄、ルーベルト=ローゼンベルクによる偉業です」


「なっ!?」


 ごめんね、兄!私はこれ以上変な称号がついたら嫌だから、全力でなすりつける所存です!!


「さあ皆!ルーベルト…いえ、ルー様を讃えるのです!!」


『ルー様!』

『ルー様!!』

『ルー様ぁぁぁぁ!!』


 人々は笑顔で………何故か『私たち』を讃え、胴上げした。




 なんでじゃああああ!?

 私はいいんですよ!

 置いといてくださいよ!!

 なんならポイしてもいいんですよ!??


「ロザリンド」


「………ヒッ!?」


 兄が超笑顔でございました。ガッチリ手を捕まれてございます。




「逃がさないから」




「う、うわあああああん!!」



 ですよね、知ってた!全力でなすりつけた私。兄が私を巻き添えにしないはずがないよね!!

 その日はディルクに救出されるまでわっしょいされてしまう私たちでした。わっしょいは怖いからやめていただきたい。わっしょい酔いしました。






 その後、私と兄は同じくユグドラシルの魔力が枯渇しかけていたシヴェリハスの緑も復活させた。こちらも食糧難だから、巨大お野菜さん達はとっても喜ばれた。大海嘯でゲットしたお肉はもっと喜ばれた。


 憑き物が落ちたかのようなシャムキャッツ国王は、本来王であるはずだった兄に国王を譲りアルフィージ様ポジで王様を支えるらしい。

 シャムキャッツとシヴェリハスの和平は成され、これにて一件落着。

 どちらも戦争続きで消耗しているので兄が共同での農場経営・農業について指導することに。兄に任せれば、食糧難などすぐに改善するだろう。本人もあちらにしかない植物を好きに研究できて大満足である。


 それから、マリーが冷遇されていたのは魔に憑かれないよう両親が遠ざけたためとわかった。誤解はとけたがマリーはマリーとして生きることを譲らなかった。なので、今までと変わりなく過ごすことになった。ネックスが珍しくホッとしているとわかる表情をしていた。ネックスもシャムキャッツには戻らずこのまま冒険者として生きるそうだ。


 問題は、ポッチだろう。あれからクリスティアに戻ったのだが、何かをずっと考えていた。






 ある日、ポッチから連絡があったので学校帰りに実家へ寄った。


「…お姉ちゃん……僕、ずっと考えていたんだ」


「うん」


「僕、お姉ちゃんの結婚式が終わったら…シヴェリハスへ行くよ」


「………うん」


 そんな気はしていた。ポッチはあの国や両親を放っておけないだろう。


「芸術家は続けるよ。趣味の範囲でになるだろうけど」


「……うん。お姉ちゃん、ポッチの創るものが大好きだから、そうしてくれると嬉しい」


「芸術家のポッチとして…最高傑作をお姉ちゃんの結婚式で見せるからね」


「………うん、楽しみにしてる。もしポッチがシヴェリハスの王様になったとしても、私はポッチのお姉ちゃんだからね。困ったら助けてあげるから、言うんだよ」


「……うん。僕……お姉ちゃんの弟になれて……すごく幸せだよ……。僕もお姉ちゃんが困っていたら助けに行くから…ちゃんと言ってね」


 少しだけ、お互いに泣いてしまった。

 いつの間にか、守るべき小さな弟は立派な青年になっていて…自分の意思で自分の未来を選択した。

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