その人の名は
ウルファネア出身の男の子(雪豹獣人)視点です。
みんなが、走れって言う。
にげなきゃって、言う。
何かわるいことがおきたんだって、頭がわるいぼくにもわかった。
にげるって、どこへ?
ずっとまえ、ウルファネアにすんでたとき。あのときとおなじ、いやなけはいがする。ぼくたちのむらが、まものにかこまれてしまったあのときとおんなじ。みんながこわがって、おびえていた。
「また大海嘯ですって!?せっかくウルファネアから引っ越したのに!!」
おかあさんがおこってる。いたいよ、おかあさん。つめがあたってるの。
だいかいしょうって……あのまものがたくさん来ちゃうやつ?また、きたの?
「ボサボサしていたら、死ぬわよ!来なさい!!」
こわい顔のおかあさんにひっぱられて、むりやり走らされる。おかあさんはたくさんにもつをもっていた。おかあさんもひっしなんだ。ぼくもがんばって走った。
「あれは…」
みたことがあるよ。頭がわるいぼくでもちゃんとおぼえてる。ぼくらのむらを助けてくれた!
「まま、ロッザリンドだよ!!」
そう、シャムキャッツのお城に白く輝くロッザリンドが立っていたんだ!あれ?黒いロッザリンドもいる。きっと、たすけにきてくれたんだ!もうだいじょうぶだ!だって、ロッザリンドはつよいんだ!それがふたりもいたら、もっとつよい!!
「え?ありゃ肉の聖女様か!?」
「本当だ!聖女様だ!!ありがてえ!俺らを助けに来てくれたにちげえねえ!!助かったああ!!皆、いくぞ!!」
『応!!!』
ウルファネアからきたしんせきのおじさんが、みんながあの呪文を叫んだ。
『筋肉肉肉!!』
『ロッザリンドォォ!!』
『肉肉筋肉!!』
『ロッザリンドォォ!!』
ぼくもおとなたちにまけないように叫んだ。
「きんにくにくにく、ロッザリンドォォ!!」
「ほら、あんたらも!!」
シャムキャッツのヒトたちは、なにがなんだかわかんないみたいだけど、ふあんとかこわいきもちをふきとばすみたいに叫び出した。
『筋肉肉肉!!』
『ロッザリンドォォ!!』
そして、皆のこころがひとつになったとき、天使さまがまいおりた。
きれいなおどりをおどって、ひかりかがやく天使さま。いやなけはいがきえていく……
なんだかゆうきがわいてきた!!
「さあ、出番ですよ!」
「あ、にくのせいじょさまだ!」
ぼくのむらをたすけてくれたオンジンだから、おぼえてるよ!ロッザリンドのかたにのっている。にくのせいじょさまはビックリしてた。手をふったら、ニッコリわらって手をふってくれた。
『聖女様だあああああ!!』
ウルファネアからきたひとたちが、よろこんだ。
「聖女様??」
シャムキャッツのひとたちは知らないよね。にくのせいじょさまがどんなにすごいのか。
「ウルファネアを大海嘯と飢饉から救ってくださったんだ!!きっと今回も聖女様がなんとかしてくださるにちげえねぇ!!」
おとなたちのことばにうなずいた。
「そうだよ!それに、とっても強いんだ!!」
みんな、にくのせいじょさまがいるからだいじょうぶだっていってる。
シャムキャッツのひとたちも、いつのまにかぼくらといっしょにおうえんをはじめた。
『筋肉肉肉』
『ロッザリンドォォ!!』
『肉肉筋肉』
『ロッザリンドォォ』
きっとだいじょうぶ。みんながにくのせいじょさまをしんじた。そして、きせきがおきた。
ねこがらのぱんつをはいた、おじいさん天使さまがあらわれた。なんか光っててつよそうだったけど、高いところにいるからぱんつがまるみえだよ。はずかしくないのかなぁ?
みんなもビックリしてた。たぶんだいじょうぶ…だよね?




