大事件発生!!
何やら城の兵士たちの動きが慌ただしい。様子からして、かなりのことが起きたようだ。死を覚悟したような者までいる。
「マチビト様!ここにいらっしゃいましたか!!どうかお逃げください!!」
シャムキャッツ国王が走ってきた。彼もまた、焦った様子だった。
「逃げる?」
「はい!ここは危険です!早急にお逃げください!!」
シャムキャッツの王様は説明する間も惜しいとかなり焦っている様子だ。かなりまずい事態なのだと理解した。
「貴方たちは?」
「私は兵を率いて民を逃がします。ようやく心のつかえがとれました。私は何故、民を犠牲にしてまで逃げようなどと考えていたのでしょうか。王とは…民を護るものなのに」
どこか穏やかに語るシャムキャッツ国王。死を覚悟したようだった。
「その心意気やよし!力を貸します!何があったのですか?」
大概のことはなんとかできる自信がある!なんでもできると思ってはいないけど、もふもふのためならばかなりの無茶もやりきってみせます!!
「マチビト様…お気持ちは嬉しいのですが…大規模な大海嘯が発生いたしました。この国は滅びるでしょう。どうか、マチビト様だけでもお逃げください」
大海嘯…あの時は、本当に怖かった。でも、今の私たちならもっとうまくやれるだろう。
「大丈夫です。以前もなんとかしましたから。兵士はすべて避難誘導に回してください。大海嘯は私に…私達に任せてください」
「マチビト様……」
なんか王様ウルウルしてるけど、そんな場合じゃないから無視。バッグから英知のサークレットを装備。おや?大海嘯に黒いもやが………。英知のサークレットは私の魔改造により、半径千キロメートル以内ならば自由にズームも出来る便利アイテムになりました。
大体の位置を確認したところで、指示を出した。
「とりあえず、手分けしましょう!凛花とマリーは魔っぽいもやの浄化!タイミングからして、魔が関与した可能性が高い!兄様とディルクは私のサポート!ポッチとネックスは私の倒しこぼしを一緒に掃討してもらうから、待機で!!」
『了解!!』
「それはもういいって!!」
先ず、凛花達が浄化しようとしたようだが、困った様子で戻ってきた。
「ダメッス。皆さんの不安で魔が強化されちゃって、浄化してもすぐ復活しちゃうッスよ」
「うーん……」
不安を取り除こうにも、こんな大海嘯が来るぞ~、な状況で安心できるわけがない。
私なら魔を威嚇して引っ込ませることは出来るかもしれないが、それをやっちゃうと大地の浄化が面倒になるだろう。
「凛花が本気出しても無理そう?いっそ色じかけするとか」
「ダメッス!自分の身体はラヴィータ君のものッスから!そして、この貧相な身体に色じかけは不可能ッス!つか、まだ肉体関係じゃないッスから!!」
色じかけは冗談だったのだが、余計な情報までポロリしている。お前の閨事情までは聞いとらんわ。
「あのね、浄化しても復活しちゃうのにゃ~。先に皆の不安を何とかしなきゃ無理にゃ~」
マリーが真面目に返答してくれた。
「つまり、皆が安心するナニかをするか出すかしないといけないわけね…ナイト=ヴァルキリー様とかどう?」
「絶対嫌だ!!それに、シャムキャッツの人は誰も知らないよ!」
ナイト=ヴァルキリー様はご当地ヒーローだからあまり意味はない?
「いいえ!あの神々しい姿で演説すれば、皆安心するんじゃないですか!?」
「ロザリンド」
とても静かに、優しく、兄が話しかけてきた。とてつもなく慈愛にみちた優しい笑顔だった。嫌な予感しかしない。
「………………はい」
「時間がない。どうすれば効果的か……ロザリンドはよぉぉく、知っているよね?」
いいからグダグダ言ってないで、さっさとやりなさいと言われた気がした。わかっていたけどさあ、やりたくなかったんだよ!!
そして、名案が浮かんだ。そうだ、私だけが目立たなければいいのだ!!
「ディルク、ロージィ君貸して」
「うん」
ロージィ君…ディルクの指輪にお母さん、ナニか悪いこと思いついたの?悪い顔してるよと言われた。
「悪いことじゃないと思うよ。私にとってはね」
そして、二つの指輪が輝いた。




