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とある将軍のドキドキ捕虜ライフ

 ポッチに忠誠を誓ったジョルジ=スコティッシュフォールドさん視点になります。

 時間軸も少し戻ります。

 私は、シャムキャッツで数々の武勲をあげて最年少で将軍位に就いた。それなりに腕に覚えがあり、戦術も修めていた。私は自分が優秀だと疑っていなかった。あの日までは。





「うわああああ!」


「しょ、将軍!」


「陣を崩すな!隊列を保て!弓兵隊…くそっ!」


 巨大な美しい化け物。鷲の頭に獅子の身体。そして鳥の羽根を持ちながら、それはクリスタルのように輝いていた。その硬質な身体には、当然剣も矢も通じない。魔法剣も試した。だが、格が違う。弓兵が怯えて逃げたのも仕方ない。

 しかも、この魔物だけでなく多数のドラゴン。そして、人間・獣人離れした強さの戦士達。




「こら!二人とも!やりすぎはダメ!」


「「は~い」」


 次々に兵士達を火傷か凍傷で戦闘不能にしてしまう恐るべき子供達。


「わははははは!!」


「ジェラルディンさんも!やりすぎはダメ!」


 戦場を縦横無尽に走り抜け、敵を打ち倒す勇猛果敢な戦士。


「ロッザリンドォォ!!」


「偽リンドは流石だね。フォローもバッチリだ」


「ロッザリンド…」


 もじもじしているが、あの女性も的確な魔法と援護で油断できない。





 だが、そのなかでもさらに恐ろしき存在がいる。







「そろそろカモン!ぞんびー君達!」


 ぞろり、と犬獣人の青年の影がうごめき、おぞましい姿の同胞達が地を這う。

 濁った瞳は、明らかに同胞達が絶命していると語っていた。もはや人語は話せず呻き声をあげるだけだ。


「や、やめ…来るな…うああああああ!!」


「怯むな、戦え!」

「イヤダアアアアア!あんな姿になりたくないぃぃ!!」


「逃げろ…逃げろ!敵うはずない!こんな化け物達に勝てるわけがない!」


「陣を乱すな!くそっ!」


 ただでさえ絶望的な状況下で提示された悲惨な末路。部下達はパニックに陥り、もはや命令も届かない。逃げ惑う兵士達を叱咤するが、誰も聞いていない。


 せめて、命を歪められた同胞を少しでも解放してやろうと剣を振るう。私が攻撃しようとした瞬間、先程までの動きとは一変し…死者は私の口を塞いだ。うすれゆく意識のなか、泣きわめく部下が同じように口を塞がれ物理的に黙らされていたのを見て…私は気を失った。




 次に目を覚ましたとき、私達は全裸で拘束されていた。獣人なので裸に羞恥心や抵抗感はない。獣化すれば寒くもない。ただ、武器がないのが心もとなかった。


「生捕りにしたのはいいが、どうするんだ?」


 彼らのボスはあの青年であるらしい。死者達も彼に寄り添っている。相変わらず白く濁ったおぞましい瞳だが…彼の側ではかすかに笑っているように見えた。


「んー?」


 青年は何やら死者達に私達から奪った服を着せ、なにかブツブツ言っていた。僅かに聞き取れたのは『りありてぃをもっと出すには…』とか『血の汚れなら…』とか、よくわからなかった。というか、我々の処遇について聞かれているのに作業に夢中で聞いていないようだ。


「主……」


 狼耳のおっさんが悲しげにきゅ~ん、く~んと泣き出した辺りで、透き通るような美しさの男が話しかけた。


「主、ジェラルディンもどきが悲しげに泣いておるぞ」


「え?すいませ………どちら様で……この匂いと魔力は、ダンジョンマスターさん!??」


「うむ、我だ。あの巨体では邪魔だろうからヒトガタになってみた。久方振りだがおかしくないか?」


「うわあああ…すごく綺麗ですし、完璧に人間です!後でまたモデルになってくださいね!そろそろお腹すいたから、ご飯にしよっか」


 美しい男に話しかける青年の表情は、少年のように無邪気で純粋だった。




 すぐに食事が始まった。簡単にパンとスープ煮にするようだ。羨ましい。ここ数日は携帯食料しか食べていないので、つい見てしまう。すごくうまそうだ。


「うん、いいかな。さ、どうぞ」


 なんと青年は私達にも食事を出した。さらに縄をほどいてしまう。


「足りなかったら言ってくださいね」


 その笑顔はあまりにも純真無垢だった。


「わ、我々は敵だ。なぜ我らに食事を与える。飢え死にしようが問題ないだろう」


「…お腹がすくと悲しいし辛いじゃないですか。ひもじいってすっごく辛いんだって、僕はよく知ってますから。誰かに同じように辛い思いをして欲しいとは思っていません。それから、僕は貴方達の敵になりたいわけじゃない」


 青年はそれだけ告げるとスープ煮を運びに行った。スープ煮は、とてもうまかった。


 ちなみに、何人か縄がないのをいいことに襲いかかったり逃げようとしたが、死者達から熱烈な接吻をくらっていた。


「ちょ!なんでそんなことするの!?え?強力な精神攻撃として有効で大人しくなる!?どこでそんなこと覚えちゃったの!??」


 とりあえず、あの熱烈な接吻が青年の指示ではないことにホッとした。

 青年が『あまり手荒な行為はせず、動きを止めろ』と指示した結果であるらしい。効果は絶大で、私も含め捕虜全員が大人しくなったのは言うまでもない。

 きりがいいのでここまで。


【どうでもいい補足】

ぞんびー君達はシャカ君・シャカさんの記憶をコピーしています。さらに、サボさん達と同じく記憶共有能力があります。

ぞんびー君達はディープなチッスをすると人は気絶すると学んでおり、怪我させずに捕縛に効果的なのではと試したところ非常に効果があった。その結果、他の個体も学習してしまいました。

ぞんびー君達にディープなチッスを仕込んだ犯人はディルクです。

しかし、まさかペナルティがある意味軍事利用されるとはディルクも予想外でしょう。

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