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ポッチ、いっきまぁぁす!!

 ポッチ視点。ポッチ進撃の舞台裏です。

 お隣の国に、まずは手紙を送った。話し合いをしないと、何も解決しないから。でも残念ながら話し合いをしてもらえなかった。

 お姉ちゃんによれば、白猫の国には利がないから仕方ないんだって。


 話し合いをしてもらえないなら、おしかけるしかないよね。それから、白猫の王様より僕が優位だって理解してもらわないとね。


 お姉ちゃんに手伝ってもらって、仕込みはオッケー。冒険者ギルドもおさえた。どこまでできるかわからないけれど、僕はやれることをやるだけだ。


「案ずるな、主。我らが主を護る。主を害する者は蹴散らしてくれようぞ」


 ダンジョンマスターさんは超やる気です。頼もしい。ドラゴンさん達と空中散歩したら意気投合したらしく、ドラゴンさん達も同行します。


「うむ。我らに任せよ」


「燃やしちゃうよ!」

「凍らせちゃうよ!」


「ロッザリンド!!」


「…………やりすぎないでね?殺したらダメだから!あくまでも戦闘不能にするんだよ!」




 破壊力的な意味で頼もしい仲間達と共に、僕は白猫の国…シャムキャッツ国へと旅立った。


 そして、シャムキャッツは大混乱にみまわれる。

 一応懺悔しとくと、僕はドラゴンって普通にその辺にいる感覚があったんだ。コウとかルランとか屋敷の庭で昼寝してたりするし。ドラゴンはこちらから危害を加えなければ話がわかる相手って思ってた。




 普通の人は、これだけの数のドラゴンが来たら大パニックになるんだね。悪いことしたなぁ。





 雨みたいに矢が降り注ぐ。ドラゴンに普通の矢は効かない硬い鱗に弾かれる。翼の皮膜を狙えばイケるかもだけど、ドラゴンは馬鹿じゃない。翼で風を起こして矢を無効化した。


 慌てて国境砦を放棄して逃げ出す兵士達。僕らはゆっくりと歩いていく。たまに敵襲があるが、こちらには日常生活はともかく戦いの天才(ただし偽者)と最高難度のダンジョン管理者がいる。結果は…まあその…武器防具を剥ぎ取られて全裸で捕獲している。


 仕方ないんだ!隠し武器に毒とかあったら僕死んじゃうかもしれないし、敵に容赦したらダメって教わってるし、確実に敵戦力と戦意を削げる。パンツの中にも仕込み武器を持っている人もいたから、仕方ないんだ!

 没収した武器・防具はあらかじめ作成しておいたぞんびー君改・白猫バージョンに装備させた。これ、我ながらいい出来だ。どう見ても本物の動く死体にしか見えない。それに猫耳と尻尾をつけた白猫バージョン。まるで兵士を動く死体にしたように見えるだろう。


 なるべく無血で話をしたかったから考案した『相手を怖がらせて言うこときかせちゃおう作戦』は大成功だった。


 しかし、王都に行くまでの村とか町をどうしよう。すると、白猫の兵士さん達が泣きながら懇願してきた。


「動く死体にするのは勘弁してください!なんでもいたします!」


「女子供は勘弁してください!お願いします!!」


 前言撤回する。効果がありすぎたみたい。あ、子供とか女性も作るべき?いや、それより丁度いいかも。


「わかりました。僕も鬼じゃありません。貴方達が従うならば、加工するのはやめてあげます。貴方達が僕にきちんと従ってくださるのなら」


 村や町に、白猫の兵士さん達を配備した。武器も持たせた。普通の服を着る許可を出す。反乱されたら困るから、シャカさん・シャカ君・リッパーちゃんを抑止力として。サダコちゃんと見てる君を監視役にした。

 幸い反乱はない。ホラーゴーレム達のおかげでうまく心を折れたんだろう。






「…王子殿下」


「ポッチでいいですよ」


「…ポッチ様」


 様もいらないけど、話が進まないから仕方ないので譲歩した。


「なんですか?」


「その…貴方は何をしたいのですか?我らを奴隷にもせず、武器を与えている。監視と交流を禁じたのみで金品も奪っていない」


「話し合いがしたいんです」


「……………………は?」


 僕に話しかけてきたおじさんは、確か将軍さんだった。自分を好きにしていいから、他の人を助けてほしいと言ってきたので彼だけ同行してもらっている。


「最初は平和的に会談を申し込んだけど、シャムキャッツの王様は僕らの国が隷属するならって無茶を言われたから…」

「言われたから?」


「話し合いをせざるをえない状況にしてあげようかなって思ったんだ」


「…………………」


 将軍さんの顔がひきつっている。ごめんね、わりとしょうもない理由で。でも、話し合わなきゃ何もわからないから。僕は、僕らしく生きると決めたから。


「それから、僕は今のところ死傷者を出してないから」


「………………え?」


「あの動く死体の材料は、スライムとか金属とかごむなんかだよ。死体を加工したものじゃない」


「…………ええ?」


「僕とお姉ちゃんと友達が作ったんだ。ふふ、本物みたいでしょ?」


 近くにいた白猫ぞんびー君(正式名称は省略)を撫でる。毛はふぁいばーだから触るとニセ物とわかるんだよね。

 ぞんびー君はにこりと笑った。歯まで作り直したんだ。人間には牙がないからね。途中面倒になったから、何体か改造してないのがあったりするのはご愛敬。


「………………よ、よろしいのですか?私にそれを教えてしまって…殺される危険はないと仲間達を集い、一斉蜂起するやもしれませんよ?」


「それはしないでしょ。ぞんびー君の事だけじゃなく、将軍さんは戦力差を正しく理解した上でここにいる」


 滅ぼすだけならたやすい。でも、そんなことしないししたくない。弱いものを蹴散らすだけの最低なやつに成り下がるつもりはない。難解だろうと、望む結末にたどり着いてみせる。僕は、ロザリンドの弟だ。だから、不可能を可能にしてみせる。


「………………」


「僕は無血で王様に会いに行くつもりだよ。屈辱を与えたことは謝れば済むけど、死んだ人は二度と戻らないから。僕の国だけじゃなく、この国も不作が続いてるよね?僕、この国も救いたいんだ」


 魔をなんとかすれば、不作も改善する。お姉ちゃんとお兄ちゃんもいるから、和睦さえできればどうにでもなる。


「…ポッチ様」


 将軍さんが膝をついた。


「私、ジョルジ=スコティッシュフォールドは、ポッチ様をこの剣にかけて生涯お守りすると誓います」


「…………はい?」


「ありがとうございます、我が君」


「え?はい??」


 待って!その『はい』はイエス的な『はい』じゃないんだああ!!


「はっはっは。流石は我が主」

「ロッザリンド!」


「ちが、ちょっ、だから、違うんだってばああああ!!」


 お姉ちゃん、僕に将軍さんが使えることになりました。後に将軍さんは『はい』の意味を正しく理解した上での対応だったらしい。

 大人って、ずるい!!

 野良猫ならぬ野良ドラゴンまたは飼いドラゴンに慣れてしまったポッチ。

 野良サボテンとゴラちゃんからしてすでにローゼンベルクは非常識のカタマり。さらにとどめがユグドラシル。


 よく考えなくても色々色々おかしいのです。しかし、人は慣れるとそれが普通な気がするものです。

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