楽しい玩具
通信で王子様達、公爵家に打診したところ皆様オッケーしてくださいました。調査も依頼して、しばらくは根回しと調査結果待ちの状態ですね。
翌日、私はにこやかにカーライル公爵子息に挨拶をしました。
「おはようございます、カーライル公爵子息」
「!??おは…よう??」
基本的に仲が大変悪い私達。挨拶などしたことがありません。昨日のこともあり、めちゃくちゃ挙動不審なカーライル公爵子息。
「せっかくですから、一緒に教室まで行きませんこと?」
カーライル公爵子息にしか聞こえないよう、コッソリと囁いてやった。
「…昨日の格好について面白おかしく話されたくないでしょう?」
「ああ!そうだな!是非行こう!!」
カーライル公爵子息は必死である。彼は意外とからかいがいのある男だったらしい。顔が赤くなったり青くなったり、実にいい反応である。
「おはようございます、ロザリンドお嬢……様?」
「おはようございますぅ、ロザリンド……お嬢様ぁ??」
リリアンとリリアーナが揃って首をかしげる。まあ、確かにおかしいよね。毛虫並みに嫌ってたカーライル公爵子息と居るんだもん。
「…私は席に行く!」
「あら、たまにはお話ししてもよろしいのではなくて?昨日の可愛「ふぬあああああ!?そそそそうだな!何を話す!?」
ちょっと慌てすぎだよ、カーライル公爵子息。んもう、楽しいじゃないか。
「うふふ、では何をお話ししましょうか」
私は満面の笑みでカーライル公爵子息と討論した。貴族至上主義さえなきゃ、彼はなかなか頭もいいし話し相手として悪くない。彼も私がばらすつもりはないと解ったのか、普通に話し相手になっていた。大体は領地経営についての話をした。ついでに兄の開発した野菜や備蓄についてなんかも。
そして、クラスメイト達は異常事態に呆然としている。ラビーシャちゃんがリリアン達にこっそり確認しているのが聞こえた。
「お嬢様、どうしちゃったんですか?明日は槍ですか?」
おいこら、聞こえてますよ、ラビーシャちゃん。雨通り越して槍か。そんなにあり得ないか。
「いえ、何やらカーライル公爵子息の弱味を握ったようですね」
「なるほど、流石はお嬢様…今はにこやかに談笑しているとみせかけて、獲物をいたぶっているんですね」
おい、こら!ラビーシャちゃんや、君は私をなんだと思ってるんだ!?後ほどしっかりと話し合う必要がありそうですね。
「ロザリンド嬢??」
カーライル公爵子息が首をかしげる。いかんいかん。
「…なんでもございません」
「おはよう、ロザリンド。カーライル公爵子息と仲直りしたのか?」
「…そもそもケンカをしておりませんわ」
「そうか?でも毛虫並みに嫌ってただろう?」
オブラァァァァトォォ!!
いや、間違っちゃいないけど!間違っちゃいないけど、世の中には本音と建前とかがね!?カーライル公爵子息が涙目だよ!フォロー!フォローをするのよロザリンド!私は女優!硝子の仮面を被るのよ!ムーンシャドウ先生!オラに力を分けてくれ!
「…アルディン様、私はカーライル公爵子息を嫌ってはおりませんわ」
むしろ今回、からかいがいがある男として好印象ですよ。
「私達は貴族としてアルディン様達を協力して支えるべきなのですから」
まあ、身分が低い人間への態度を改めたら、仲よくしてやってもいいかなと思ってますよ。どうせ長い付き合いになるのは間違いないし。
「そうか!カーライル公爵子息!俺とも仲よくしてくれ!」
まばゆい。物理的にも精神的にもまばゆい。
「よくわかんないけど、なんかアルディン様に謝りたくなってきた」
「………私もだ」
「??」
なんというか、アルディン様の精神的浄化によりしんなりする私達。
首をかしげるアルディン様。
そして、笑いをこらえる侍女候補生達とラビーシャちゃん。
「…ええと…おはようございます??」
登校してきたミルフィが首をかしげるのも仕方ない状態でした。
アルディン様最強疑惑が浮上しました。




