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黒と白と成長した弟

ロザリンド視点になります。

 クラリンなら何か知ってるはず!と冗談で呼んだら呼べてしまいました。ノリでやっただけなんです。神様を顎で使ってるとか言われたらどうしよう。


「ロザリンはこの国の事を聞きたいのよね?」


「そうです」


「わかったわ!クラリンに任せて!!」


 クラリンの手には『ドキドキ☆ときめき☆白と黒のラブ物語』と書かれた紙芝居があった。


「…紙芝居、なんだね」


「クラリン、頑張ったわ」


 そう言われたら見るしかない。クラリンは紙芝居を始めた。






 むかし、むかし。

 悪い神様が封印されてからのこと。


 悪い神様は世界にタネをまいていました。タネは悪い力をためて、まかれた土地をよごしていきます。


「どーにかしないとねぇ」


 面倒くさがりの神様は、世界の住人になんとかしてもらおうと、世界を浄化する者達を作りました。魔を操る闇豹族、光をもたらす金獅子族、魔に抵抗力がある銀狼族。

 そして…白と黒の一族達。このお話は魔を蓄える黒犬族と魔を祓う白猫族のお話です。


 紙芝居の説明は解りやすいのだが、絵が凄すぎて全く頭に入ってこない。独特すぎるショッキングピンクなどのド派手な色合いとピカソを彷彿とさせるような個性的な絵のせいで、そっちが気になって内容が入ってこない。これ、かなり重要な案件だよね??


 私は目を閉じた。考えるな、感じろ…ではなく、絵を見なければ気にならないし説明は解りやすいのでどうにかなると考えたのだ。


 ざっくり要約すると、どうやら闇豹や光獅子以外にも魔をどうにかする使命を与えられた種族がいた。そして、この国には魔を吸収する黒犬と魔を祓う白猫がいた。二つの種族は仲良く暮らしていた。

 しかし、白猫の貴族が黒犬のお姫様を拐い、新しい国をつくった。それから二つの種族は仲が悪くなった。


 魔を祓う白猫がいなくなり、黒犬は魔がたまりすぎて死んでいく。

 白猫は黒犬と結婚したせいで魔を吸い込んで穢れ、傲慢になって祓えなくなった。


 もう、白猫と黒犬の国は滅びるしかない。




 これ、アーティスティックな紙芝居だから緊迫感がないけどヤバくない?いや、私なら多分なんとかできるけど、定期的に祓えるかって言われるとなぁ…私が生きてる間はどうとでもなるけど、以降がなぁ…


「今白いにゃんにゃん族で祓える力があるのは一人だけよ。ロザリンがよく知っている、自由な子よ」


「え?」


 にゃんにゃんってなんかいかがわしい…じゃなく、自由な白猫?思い浮かぶのは一人しかいない。


「他の白にゃんにゃん族は歪んで、悪いにゃんにゃんになってしまっているわ。黒わんわんの血は歪んだきっかけに過ぎない」


「つまり、祓える力はあるけど性格が悪いから使えない?」


「大体あってるわ」


「「あってるの!?」」


 兄とディルクが驚いている。つまり、性根を叩き直せばオッケーってこと?


「アルディン様を置いとけば、自動で浄化されないかなぁ…」


「お嬢様、アルディンを何だと思ってんだ」


「周りも綺麗にしてしまう驚きの白様」


「………………」


「置いとくだけで、あら不思議。凶悪犯が自首するわ、尖ってる性悪なお兄さんもブラコンになるわ…気がつけば周囲も真っ白」


 ゲータが頭を抱えた。


「後半のアルフィージ様はともかく、前半はなんだ」


「本当にあった怖い話」


「本当にあったの!?」


 ありました。アルディン様がいれば、皆自首しちゃって汚職なんかも起きません。


「脱線しちゃったけど、どうしよっか。とりあえず、猫シメてくる?」


 先ず白猫の性根を叩き直せばいいんだよね?獣人は力押しが有効だから、得意分野です。


「ううん、僕がやる」


 ポッチは真っ直ぐに私を見ていた。その瞳に迷いはない。


「ここまでロザリンドお姉ちゃんに付き添ってもらった僕が言うのもなんだけど…これはこの国の問題だから、この国の人間かどうにかすべきだと思う」


「そうだね」


 私たちはあくまでも部外者だ。魔関連ならば関係者と言えなくはないが、ポッチがそう言うなら彼に任せるしかない。


「策はあるの?」


「うん」





 その策は、私の思考の遥か上を行っていた。なんというか、エキセントリックな策だった。成功率は…多分高い。


「……やっぱりポッチ君はロザリンドの弟だね…」


「どーゆー意味ですか!?」


 ディルクに異議を唱える私に、兄がにっこりと笑って言った。


「ロザリンド、胸に手を当てて考えてごらん?」


 胸に手を当てた。我ながら、立派に育ちました。ポヨンポヨンです。


「………ポッチも私も兄様の兄妹です!」


「ポッチの面倒をみてたのはほぼロザリンドだよ」


「私の面倒をみてたのは、兄様です!」


「正直野放しというか、たまに脱走しては無茶してたよね」


「ぐっ!?」


「コウに初めて会った時とか」

※前作参照。兄を置いてディルクを助けに行きました。


「うっ!」


「クーリンとか、大海嘯とか魔とか魔とか魔とか」

※前作参照。色々色々やりました。ロッザリンドォォ!とか。


「ううううう!!で、でも後悔はしてません!反省はしてます!!」


「…そんなロザリンドに育てられたから、こうなるよね」


「あはは。ロザリンドお姉ちゃんはもちろん、ルーお兄ちゃんとか、ゲータとか、ジェンド達も見て育った結果だと思うよ」


「「………………」」


「だよね!」


「うん」


 一言で兄とゲータを撃沈したポッチ。彼は確実に成長しています。血は繋がっていなくとも『姉』として今回は見守ることにしました。ただし裏方はやるけどね!

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