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戻った記憶

 ポッチ視点になります。

 ようやく会えた国王陛下。今の僕にそっくりな国王陛下……僕の本当のお父さん。






 お父さんかもしれない人は、僕の全身の匂いを執拗に嗅いでいた。めっちゃ嗅ぎまくっていた。尻尾が股に挟まりプルプルしている。恥ずかしいしなんか怖い。

 そして、涙目で必死にお姉ちゃん達に助けを求めたが、目をそらされた。お姉ちゃんもどうしようかと戸惑っているらしい。お兄ちゃんも顔がひきつってる。


 立派な服装の精悍な狼獣人が僕の身体をクンクンしまくるのは、とてつもなくシュールな光景だった。


「確かに、ポートフォリオの匂いだな。すまん、最後に嗅いだのがかなり昔だったので判別に時間がかかった。大きくなったな……ポッチ」


 ようやく国王陛下と目か合った。記憶が一気に戻っていく。僕は、もっと若いこの人によく抱っこされたりしていた。僕は、ちゃんと僕の家族に愛されていた。そうだ、この人が僕のお父さんだ。


「お、おとーさん…ううん…とと様…?」


 幼い頃の呼び方でお父さんと呼ぶ。長い間欠けていたパズルのピースがはまった感じがする。


「ああ、本当にポッチなのだな!よくぞ、よくぞ無事でいてくれた!!」


「とと様!」


 大きな身体に抱き締められた。懐かしい匂い。ああ、とと様だ。僕はようやく帰ってきたんだ。

 頭の片隅に、優しかった二番目の両親と燃え盛る炎、逃げろと告げた偽りの両親達の顔が浮かんだ。

 今は、考えるべきじゃない。いつか、弔いに行きたい。そんなことを考えていたら、とと様が話しかけてきた。


「…ポーラ…母は今病気で療養しているが、お前に会えば喜ぶだろう。会ってやってくれないか?」


「もちろんです!」


 そもそも僕はお母さん…かか様に会いに来たのだ。とと様に案内され、お城の中を進んでいく。僕は歩きながら違和感を覚えた。長すぎる。


 かか様は城の奥…いや、城の別棟である塔に居た。まるで…いや、病気だから隔離しているのだろうか。


「あなた…?」


「ポーラ」


「……あまり、ここにきてはだめと……」


 弱りきった様子ではあるものの、気品がある女性の声。痩せ細った、僕の……


「かか様!」


 かか様はベットに寝ていた。僕を見て手を伸ばそうとしたが、ためらった。


「ああ…ポートフォリオ?私の可愛いポッチなのですね?ああ…神よ、感謝します。ごめんなさいね。かか様の病気はお前やとと様にうつるかもしれないの。抱きしめたいけど…お前までこの病気になっては困るから、近づいては駄目よ」


 かか様の病気は、恐らくこの国の王族だけがかかる病気だ。


「……ゲータ……」


 どんな医者でも治せなかった。じじ様もばば様も、誰も治せなかった。


「ポッチ、俺は医者だ。患者がいれば頼まれなくても最善を尽くす。ルー様、お嬢様、手伝ってくれ」


「「了解」」


 ゲータとお兄ちゃん、お姉ちゃんはマスクをしてかか様に近寄った。


「な、なんと……」


「ゲータは立派なお医者様なんです」


 ゲータなら、きっと治してくれる。僕は期待をこめてゲータを見つめた。


「なんだ?これは……」


 聴診しようとして戸惑うゲータの隣で、お姉ちゃんが真っ青になっていた。


「これは…どういうこと?なんで?」


 かか様の胸元や手を調べるお姉ちゃん。そこに何か…そういえば、あの病気は時計みたいな紋様が胸に現れ全身に広がっていくんだった。


「お姉ちゃん、かか様は…」


「大丈夫。これはゲータよりお姉ちゃん向きの案件です!」


 そして、お姉ちゃんは手を振り上げた。


「お義母様、ラヴィータ、アリサ、カモン!!」


「はいは~い」

「どうした?魔か?」

「お姉ちゃん、呼んだ?」


 金色のお姉さん、ラヴィータ、アリサが現れた。


「こちらのおば様を治してほしいの」


「任せて」

「わかった」

「は~い」


 そして、アリサ達は帰っていった。かか様は金色の光に包まれ…呆然としている。


「苦しくない…紋様が…消えてる!?」


 かか様がふらつきながら僕に手を伸ばした。


「ポッチ!」


「かか様!」


「ああ!夢のようだわ!我が子にまた会えるなんて!この腕に抱けるなんて!顔をよく見せて。大きくなったのね…」


「かか様、かか様…会いたかった!」


 会いたくて、会えなくて、気持ちに蓋をした。思い出しても辛いだけだったから、記憶ごとしまいこんで、思い出せなくなっていた。愛されていた、愛していた幸せな時間の記憶。


「かか様、かか様あああ!!」


 かか様は泣きじゃくる僕を優しく抱きしめてくれた。


「私もよ。会いたかったわ、私のポッチ……」


 懐かしい匂いと優しいぬくもりに触れて…会いに来てよかったと思った。




「さて、ここまで来たからには乗りかかった船ってやつですね。根源をどうにかしないと、多分またポッチのお母さんは同じ病気になっちゃうかも」


 お姉ちゃんの声が聞こえた。


「母さんやラヴィータを呼んだってことは魔の仕業?」


 ディルクさんがお姉ちゃんに確認する。魔ってお姉ちゃんが倒したんじゃなかったっけ?


「確認しましょう。緊急事態発生(エマージェンシー)緊急出動(スクランブル)よ、クラリン!!」


「天呼ぶ、地呼ぶ、人が呼ぶ。助けを求める声がする!愛の力でキラッと解決!!」


 部屋がハートの光で埋め尽くされた。


「魔法少女ミラクルクラリン☆(ラブ)(ゴッド)バージョン、降臨☆☆」


 うん、可愛らしい格好のおじいさんが現れた。

 よく見たらクラリンだった。

 そしてよく考えたら名乗ってた。


「ブラボー!ブラボー、クラリン!!」


「サンキュー、ロザリン!!」


 お姉ちゃんは拍手している。ディルクさん、お兄ちゃん、ゲータは遠い目をしている。



「「なにこれ」」



 僕と、とと様の気持ちが一つになった瞬間でした。かか様とじいは固まってました。

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