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モテる男

 うっかり世の理不尽と戦っていたら、大事なポッチを見失いました。


「ポッチ、ポッチどこー!?」


「なんか、最近ポッチ君はよく迷子…というか拐われるね…」


 私の脳裏にわははと笑う迷惑な英雄がうかんだ。とりあえず、次に会ったら苦いピーマンをしこたま食わせてやろうと思います。八つ当りですが、仕方ありません。

 しかし、否定できない。毎度亀のお化けに拐われる桃姫かって言いたくなるぐらいに拐われてる気がする。

 ジェラルディンさん→偽リンド→馬鹿二人…意外に少ない?いや、3回も拐われたら充分か。


「む!ぼっちゃまの匂い…向こうにいるようです!」


 バーナードさんがポッチの匂いをキャッチした。バーナードさんが示した部屋は、応接室だろうか。豪華なテーブルセットのソファには、マルチーズの可愛い女子二人がポッチを囲んでいる。双子?ってぐらい似ている。


「ポッチ様、あ~ん」


「ポッチ様、こちらの方が美味しいですよ!」


「邪魔しないでよ!」


「そっちこそ!」


 ポッチを取り合って争う可愛くて毛並みがいい女子達。そして、明らかに助けを求めているポッチ。


 私は笑顔でそっと部屋から出た。皆も黙って部屋から出た。ゲータがオロオロしている。いい奴だね。

 しかしポッチのハーレムを邪魔するわけにはいかない。ポッチも大人になったようです。


「お兄ちゃんを助けて」

「お姉ちゃん、お願い」


 ポッチが出した偽の双子と解ってはいます。しかしウルウルした我が家の天使達を無視できるでしょうか……いや、無理!!


「お姉ちゃんに任せなさい!」


「お姉ちゃん、かっこいい」

「お姉ちゃん、大好き」


 可愛い双子にお願いされては仕方ない。愛する弟妹(偽だけど)のためならば、可愛いわんこ女子だって蹴散らしますよ!


「ポッチ!」


「お姉ちゃん…」


「ほら、行きますよ」


 ポッチに手を伸ばし連れていこうとしたが、マルチーズ女子達に阻まれた。


「貴女、なんですの?」

「いきなり現れてポッチ様を連れ去ろうとするなんて、失礼ですわ」


 ふむ、なかなかマトモな反応だね。よし、ならば私も相応の対応をしますかね。


「初めまして。わたくしはロザリンド=バートンですわ。そちらのクリスティア、バートン侯爵の妻ですの。ポッチはわたくしの弟ですわ。国王陛下にに謁見するために参りましたの。ですのに、乱暴な二人の獣人男性にポッチを連れていかれてしまって…ようやく見つけましたのよ。気がはやってしまい失礼いたしました。連れていってよろしいわよね?」


 私は理路整然と話した。ここで否と言えば国際問題になりますよ。


「…わかりました。名乗りもせずに失礼いたしました。私はマルル=ティーズ。ティーズ伯爵令嬢ですわ。どうぞお見知りおきを。ポッチ様、陛下との話が終わりましたら、またお会いできますか?」


「私も無礼をいたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。私はミルル=ティーズ。同じくティーズ伯爵令嬢ですわ。ポッチ様、後ほどお待ちしていますわ」


 馬鹿二人と違って賢い。きちんと名乗って謝罪した。さらにいったん引きつつ、約束を取り付けようとしている。マジで馬鹿二人と違って賢いな!(大事なことなので2回言いました)

 ポッチはもう相手をしたくないらしく、困惑した様子だ。


 そういや、馬鹿二人は……部屋の隅で丸まってブツブツ言っている。その瞳は虚ろで怖い。


「長旅で疲れておりますゆえ、遠慮していただきたいですわ」


「あら、でしたらとっておきのお茶もありましてよ」

「ええ、きっと長旅の疲れもとれますわ」


 うふふふふ、おほほほほと冷戦勃発。男性陣が怯えている気がするが、気のせいに違いない。

 この国、脳ミソ筋肉ばかりではないんだな。少なくともこの二人は貴族女性としてある程度の教育がされているし、応用力もあるようだ。


「ポッチはどうしたいの?」


「僕?僕は…あんまり意地悪したらダメですよ。本当は自分の婚約者が好きなんだってわかってます。ほら、二人も謝ってください」


「悪かった!」

「本当にすまなかった」


 ポッチの『本当は自分の婚約者が好きなんだってわかってます』で復活した馬鹿二人はマルチーズっぽいご令嬢達に土下座した。


「どういたします?姉様」


「どうしようかしらね?」


 クスクスと笑うご令嬢達は姉妹であったようだ。


「「次はありませんよ」」


「「はい!!」」


 彼女らが手綱を取るのならば、この国は馬鹿二人が統治してもどうにかなるかもしれない。




 さて、とりあえずマルチーズっぽいご令嬢達と別れてからポッチに聞いてみた。


「結局、あのハーレムはなんだったわけ?」


「ああ、あれはね……」


 連れ去られたポッチは、馬鹿二人に新たな課題を出された。王ならば女性にモテなくてはならない。だから自分達の婚約者を口説いてみせろと言ったらしい。


「死ねばいいのに」

「最低だね」

「虫以下」

「…あの令嬢達、心が広いんだな。うちの妹なら提案した時点でボコボコにしてるだろうな」


 笑顔の私、ドン引きなディルク、絶対零度な兄、遠くを見てるゲータ。


「まぁ、あの二人を信頼していたからこそなんだろうけど、ね」


 そして当然ぶちギレたご令嬢達。仕返しとしてポッチにベタベタしていたらしい。


「いや、それだけではない。ポッチ様…我が主は我らの婚約者に誠実な謝罪をしてくださった」

「その誠実な態度に我らの婚約者達は……」


 つまり、ポッチは誠実な対応でご令嬢達に気に入られ、あのハーレム状態になったと。馬鹿二人への当てつけでもあったのだろう。


「大体解った」


 ところで、気になるワードが出ましたよ。ポッチはスルーしてるけど、厄介事の予感です。


「我々は、ポッチ様こそ王に相応しい器であると確信いたしました」

「この生涯をかけ、お仕えいたします。試すようなことをして、申し訳ありませんでした」


「……………え?」


「ポッチ…」


「え?あの、え??」


「人生、諦めが肝心だよ」


「えええええ!?」








 そしてようやく到着した謁見の間。まさかの王様不在。


「あの、陛下は貴殿方を探しに行かれました…」


 申し訳なさそうな侍従さん。君は悪くない。とりあえず馬鹿二人にアックスボンバーをかましました。





 待つことしばし。


「叔父上、遅いですよ!我が君をお待たせするなんて、不敬ではありませんか!」


「そうですよ!我が君、こちらがこの国の国王陛下でございます」


 明らかに自分達のせいなのに、国王に文句を言う馬鹿二人。

 蓄積されたストレスが爆発したのか、国王は馬鹿二人をしばきたおしていた。


 国王は驚くほど今のポッチにそっくりだった。

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