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それ、自業自得と言わないかな?

 そして奴らがポッチを連れて行ったのは厨房。今度はお料理対決とか?それは楽しそうだ。


「この厨房には悪魔がいる!」

「そう、この国最強かもしれない恐ろしい悪魔、スコーシュ!??」


 フライパンで頭部を一撃ずつ、か。やりますなぁ、おば様。

 馬鹿二人の背後には、ブルドック的凶悪な人相のおば様がいた。その威圧感たるや、某ご長寿忍者の卵アニメの最強ご婦人を思わせる。


「坊ちゃん達、まあああた下らない事を思いついたんですか!?まったく、あたしゃ忙しいんです!」


「おば様、お仕事の邪魔してごめんなさい。僕、お詫びにお手伝いします。皮剥きとか、洗い物なら得意ですよ」


「あら……」


「私も手伝います」


「僕も皮剥きぐらいなら」


「俺も」





 千手観音的な私とディルクの活躍により、あっという間に調理は終わった。獣人は大食漢だから、かなりの量である。しかし、やたら芋(しかも干からびたやつ)が多かったのが気になる。

 毎日大量の食事を作れば自然に体力も腕力も上がる。食堂のおば様がたっくましくなるのも頷けるというものだ。


「最近、作物も不作でねぇ…戦争できな臭いし、嫌になるよ」


「大変ですねぇ」


 ポッチはおば様の愚痴に付き合っている。嫌な顔ひとつせず、真摯に相手にの話を聞くポッチは、年配の女性にとても好かれる。


「なんと…あの恐ろしいスコーシュを手なずけるとは……」

「あの鬼ババアがあんなに笑顔を見せるとは……」


「こら!」


「「いてっ!」」


 ポッチが馬鹿二人にチョップをかました。いいぞ!もっとやれ!!


「ダメですよ、女性にそんな失礼なことを言ったら!スコーシュさんは皆のご飯を作っているんです。重労働なの、見たでしょう?案外難しいんですよ、皮剥きだって。いつもご飯を作ってくれてありがとうって感謝しなきゃダメです!」


「それはそいつらの仕事だろう!?」

「そうだ、当たり前の事じゃないか!」


 ポッチは真っ直ぐに彼らを見た。


「では、貴殿方が目指す『王』とはなんですか?僕が知る王子様は、ちゃんと皆に感謝をする人です。僕のお姉ちゃんは公爵令嬢ですが、僕はお姉ちゃんから使用人であろうと誠意をもって接するべきと教わりました。貴殿方は、自分に仕えたいと思いますか?使用人であろうと、人です。人を思いやれない人間に、誰が仕えたいと願うでしょうか」


 ポッチは私に柔らかく微笑んだ。

 ポッチは知らないがアルディン様も昔は誰もが自分にかしづくと思ってたお馬鹿な時期があったことは内緒にしておこう。こないだそのネタでからかったら泣いた。アルディン様的に、けっこうガチな黒歴史らしい。


「お姉ちゃんは破天荒でとんでもないけど、優しくて頭もよくて強くてたくましい、誰もが仕えたいと「ちょっと待ったああああ!!」


 私は全力でポッチの台詞を遮った。何故私が王様に相応しいみたくなった!?明らかにおかしいわ!!


「いやいやいや!私が王様に相応しいみたく言わない!あくまでも私はディルクの嫁で侯爵夫人だから!王様なんて面倒だから絶対やりたくない!私がやるのは参謀ポジションまでです!」


「………王様って面倒なのか?」


「そりゃあ、もう。適当にやれば愚王と言われ、命を失う危険がある。真面目にやれば超面倒。王様なんて国の最高責任者じゃないですか。くっそ面倒くさいに決まってます。領主の仕事だってそれなりに大変ですが、王様はそれを統括する立場だからそれ以上ですよ」


「「………………」」


 馬鹿二人は何やら考えている様子。ポッチはそれ以上馬鹿二人と話さず、私に話しかけてきた。


「ねえ、お姉ちゃん。お城でご飯がこれって…町の人はきっともっと質素なご飯だよね?」


「…町を移動するとき、以前のウルファネアほどじゃありませんが町の人たちの毛並みが悪いのが気になりました。恐らくは栄養不足です。国王次第ですが、ポッチのお願いならなんとかします」


 ポッチが嬉しそうに尻尾を振った。んんん…うちの子は本当によい子です。


「は!?お前に何ができる!」


「彼女は緑の精霊の加護持ちで、ユグドラシルのマナ枯渇により死の大地になりかけたウルファネアの食糧難を解決したよ。そっちのルーは緑の手という植物を育てる天啓持ちで同じく緑の精霊の加護持ち。しかも荒れた地で育つものや病気や害虫に強い作物の研究者だ」


 馬鹿二人はポカンとしている。いや、ウルファネアの食糧難解決は私だけの手柄ではない…と言いかけていた私に、兄が余計な情報を追加した。


「肉の聖女って聞いたことない?あれ、うちの妹」


「「ええええええ!?」」


「黒歴史をほじくり返さないで、兄様ぁぁぁ!!」


「肉の聖女って、大海嘯をほぼ一人で片付けたっていう!?」

「肉の聖女って、ウルファネアの食糧難を救い、野菜の聖女とも呼ばれてる女神!??」


『大体あってる』


 ポッチ、兄、ゲータ、ディルクが頷いた。


「あってない!特に後半!!女神じゃないし、そもそも聖女じゃないから!!」


「はいはい。聖女に関してはウルファネアで完全に定着しちゃってるし諦めたら?そんなすごーいロザリンドをお願いで動かせるポッチもすごいと思うよ。ポッチのお願いなら僕も動くし、人望は充分示せてるんじゃない?」


「「た、確かに……」」


 兄は馬鹿二人を納得させてしまった。しかし、聖女については異議がありまくりなので諦める選択肢はありません。諦めたら試合終了だってぷよんぷよんな先生が言ってました。




「そうかい、あんたは陛下の…確かにうり二つだものねぇ…」


「はい。まだ陛下が僕のお父さんか、確定はしていませんけど…会ってみたいと思って…」


 ポッチはおば様とまったりお話をしていた。なので私は聖女について全力抗議を兄にしており、対応が遅れてしまった。


「だから、聖女って私は認めてませんから!」


「はいはい。諦めが悪いねぇ」


「ロザリンドだからね」


「…お嬢様、人生諦める時もあっていいと思うぞ?」

「絶対ノー!!」


 ノーと言えるロザリンドです!!諦められないっつーの!!世の理不尽に立ち向かいます!


「あれ、ポッチは?」


「お姉ちゃぁぁぁん!」


 某キノコで巨大化する髭のおっさんが主人公のゲームで毎回さらわれる姫のごとく、ポッチがさらわれていた。


「ポッチぃぃぃ!!」


 まだ続くんかい!と内心舌打ちしつつ、ポッチを追いかけた。

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