お姉ちゃんは激おこでした。
ロザリンド視点になります。
空の旅を経て、やってきましたシヴェリハス国。
ドラゴンと戯れるポッチと子供達にホッコリしていたら、バーナードさんがポッチに話しかけた。
「ぼっちゃま、城に向かいませんと」
確かに、かなり時間が経ってる。
「バーナード将軍!?」
しょうぐん??誰?私が戸惑っていたら、バーナードさんが堂々と宣言した。
「皆のもの、道をあけよ!このお方は現王の御子、ポートフォリオ殿下である!」
「殿下!?」
住民達がざわめく。完全にしてやられた。やってくれたわね?オッサン!
あまりの苛立ちと自分の不甲斐なさで、ボソッとひっくい声で呟いた。
「余計なことを」
「大丈夫だよ、ロザリンド。いざとなったら総て蹴散らしていけばいい。僕のお野菜達が火を吹くよ」
人間、自分よりキレている人を見ると冷静になるものです。兄の目がマジでした。お野菜マシンガンズが大暴れな気配です。
「ありがとうございます、兄様。最終手段として考えておきます」
うちの兄は本当に素敵なお兄様ですよね。いざとなったらヴァルキリーも大暴れですよ。
「落ち着いて、ロザリンド!」
「落ち着け、ルー様」
「ディルク、大丈夫だよ。私は落ち着いているわ。ちょっと暴れたいだけよ」
「ゲータ、僕は冷静だよ。ちょっと蹴散らしたい気分なだけだ」
「「全く落ち着いてない!」」
まったく、ディルクとゲータは心配性ですね。まだやりませんよ。まだ、ね。
「ポートフォリオ殿下、万歳!」
住人の声がひとつ、またひとつ増え、ついには大歓声となり、住人が道を開ける。
ドラゴンがうっかり住人を踏み潰すとまずいので、ヴァルキリー・パレード仕様を出してみた。これなら住人も避けるだろう。ドラゴンはその後ろをてくてく歩いている。
しかし、食糧難時代のウルファネアほどではないけど皆毛並みがよくない。それに…ナニかが気になる。何か、よくない気配を感じた。
『ポートフォリオ殿下、万歳!』
というか、ポッチの名前ってポートフォリオなんだ……知らんかった。現実逃避しながらも一行は城へと進んだ。
ドラゴン達は人型になってもらいました。年若いドラゴンは好奇心が旺盛だからキョロキョロしているが、ジェラルディンさんこと迷惑なオッサンと違ってフリーダムには動かない。
若いと言いつつ、ものすごく年上ドラゴンもいるからこんなもんなのかな?
お城の中を歩いていたら、白と茶色の…狼?いや、顔がシベリアンハスキーの獣人が行く手を阻んだ。
服装からして貴族だろうね。毛並みもいいし。
「王に会いたければ、我らを倒すがよい!!」
「「じゃ、遠慮なく」」
「ポンパドール!!」
「エクステンション!!」
普段ならもふもふにグーパンなんてしないけど、うちのポッチを見下した視線にイラッとしたし『誰が』倒せって話じゃなかったので見せしめを兼ねて張り倒した。見事に飛んだよ。
ちなみにクリスティアルールでは完全アウトですが、ウルファネアルールならばセーフです。シヴェリハスはウルファネア寄りの強いが正義国家らしいので、多分セーフなのです。か弱い乙女な私にぶん殴られるような奴が悪いのですよ。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、見知らぬ人にいきなり攻撃しちゃダメだよ!」
優しいポッチが涙目で馬鹿共を庇った。
「倒せって言うから。それに、いい見せしめになるかなって」
「そうそう。馬鹿には暴力の方が手っ取り早いんだよ」
ねーっと兄と真っ黒な微笑みを交わしあう。
「ロザリンド」
「ルー様」
ディルクとゲータに咎められた。いいじゃん、少しぐらい暴れたって…とは思ったけど、大人しくしておいてあげることにした。
ポッチが馬鹿共に気が向いているうちに、バーナードさんに近寄る。
「バーナードさん、次に何かがあれば容赦しませんから」
「ええ。僕らの大切な弟をいじめる奴は破滅させますから」
「……………はい!」
あら?バーナードさんたら尻尾が股に挟まってますよ?おかしいな、私たち笑顔なのにねぇ、兄様。
「うふふふふふふ」
「あはははははは」
ディルクがさりげなく『今ならモフらせてあげるにゃん』と尻尾で誘惑してきました。そんな尻尾ごときで………チョロザリンドは一発で釣れました。我ながらチョロい。
兄もゲータに珍しい薬草の種(ラビーシャちゃんがお土産にくれたらしい)で釣られました。流石はチョロいルーです。
そんな事をしていたら、馬鹿共が回復したようです。
「くっ…今回は勝ちを譲ってやる…」
「しかし、次も勝てるかな!?」
そうか、そうか。殴られ足りないか。私が笑顔で拳を握ると、ポッチが必死で首を振るので仕方なく殴らないであげました。
馬鹿共は馬鹿なので、力を示せと言いました。よく言った。私がベコベコのボッコボコに……ポッチが殺る気です。成長した弟に馬鹿共を任せたのですが……
「ポッチ、強くない?」
彼には自衛にと護身術を教えていましたが、あの馬鹿共を軽々いなすような実力はなかったはず。いつの間にか、成長しているのですね。
「そうだね。ルーと互角か…体術縛りならルーが負けるんじゃない?」
「………鍛えよう」
兄が真顔でした。頑張ってね!兄の威厳を保ちたいのでしょう。
さて、ポッチの気が完全にそれている隙に…とバーナードさんに話しかけました。
「どういうおつもりなんですの?貴方は私に、ポッチに無理強いはしないと言いましたよね?私は国はともかく貴方個人は信用しておりましたのに、裏切られた気分ですわ」
バーナードさんのお耳と尻尾がしんなりした。やめて。昔のポッチそっくりなのにしょんぼりすんな!慰めたくなるでしょうが!
「そうですな。そのように申されましても、返す言葉もございません。ただ、あの王弟殿下のご子息はバ……少々頭が弱いのでさほど害はないのですが、王弟殿下はポートフォリオ…ポッチ様のお命を狙う可能性もございます。あやつはポッチ様が公式の場に現れる前に亡き者にしようとすると考えまして…」
「…なるほどね」
安全策だった…というわけか。馬鹿共を蹴散らすポッチは…確かに馬鹿共よりは王に相応しいだろう。
ポッチは強くて優しい。アルフィージ様的お腹が真っ黒な参謀がいればそれはいい王さまになるだろう。
偽リンドに驚いたが、ポッチは本当に強くなった。もしかしたら、ちょっと戦闘訓練もしていたのかも。
そしてバーナードさんにこの国の情勢なんかを聞いていたら、ポッチ絵を描き始めた。絵を描くポッチは楽しそうで、芸術家は彼の天職なのだと感じる。
そして、巨大なダンジョンマスターが現れた。
やっちまった感がはんぱない。ていうか、ポッチ最強伝説が生まれそうだ。
「ロザリンドの弟だからなぁ…」
「そうだな」
「そうだね」
「どういう意味ですか!?」
非常識=ロザリンドみたいに言わないでいただきたい!!
私がディルク達に気をとられている隙に、馬鹿共がポッチをまたどこかに連れていった。
え!?これ、まだ続くの!??




