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さらに流されるポッチ

 ポッチ視点になります。

 冷静になった今、自己分析すると…テンションが上がって気が大きくなってしまったんだろうね…と思います。


 綺麗に積み重なった騎士さん達を見て、しみじみと思います。調子こいてすいませんでした……

 そして上空できらめく美しい獣を眺めて、どうしようと思うのですよ……。






 少し時間は遡り…僕は騎士さん達に手合わせをしてほしいと頼まれ、僕はよく考えずに快諾した。


 そして、騎士さん達は団長さんほど強くなく…正直ルチーズさんやシーズさんよりも弱かった。


「えっと、複数で…というか、全員でもいいですよ」


 面倒だし、この人数なら偽リンドを喚べば全く問題ない。


「おお、なんと頼もしい…」


「流石は王の御子…」


 よくわかんないけど、感動してるらしい。いや、面倒だからなんだけど…ちゃっかり騎士団長さんも…いや、ルチーズさんやシーズさんも混ざってる。まぁいっか。


「偽リンド!」


「ロッザリンドォォ!!」


「なんで偽リンド!?」


 ロザリンドお姉ちゃんがびっくりしてた。


「え?一番手加減が上手だから」


 そして、補助魔法も使えるからだよ。

 なんかロザリンドお姉ちゃんがルーお兄ちゃんとディルクさんに慰められてた。なんか悪いことした??


「おお、それは…あの女性に似ておりますな」


「ええと…色々あって魔法みたいなものです。強いですよ!」


「では、始め!」


 審判役の騎士さんも参加したから、ゲータが開始を告げた。


「ロッザリンドォォ!!」


 偽リンドの魔法で加速し、あっという間に勝利した。


「すげぇぇぇ!」

「ポッチ様、どうやったらそんなに強くなれますか!?」

「つうか、魔法で美女が出せるんですか!?」


「え?せ、せめて一人ずつ……」


 質問攻めにされてしまい、なんとか返事をしていた。さっきの模擬戦で気がついたことを一人一人にアドバイスしていくと、なんかキラキラした目でみられた。何故??


「いや、ポッチ様は素晴らしい武人ですな!」


「いえ、その…僕本職は芸術家なんです。だから観察が得意で…」


「…なるほど。今思えば、ポッチ様は最初にルチーズ様やシーズ様の動きを見ていたのですな」


 僕は素直に頷いた。騎士さん達は興味津々で色々質問してきた。他国のことなんかにも興味があるみたい。しかし、トンデモな質問が飛んできた。


「ゲージュツカって何する人ですか?戦うんですか?」


「え」


 まさか、この国に芸術家が居ないの!?騎士団長さんを見たら、苦笑した。


「我が国はずっと戦争をしておりましてな。余裕がなければ芸術家を志すものはそうおりません。情けないことですが、その日食うものにも苦労する始末です」


「そうでしたか…ツヨシ」


 見せてあげたい。

 綺麗なものを見てもお腹はふくれないけど、幸せな気持ちになれるんだ。僕は、絵が一番好き。素敵な風景や、大好きな人の記憶を色褪せないように残せるから。きっと僕が死んでも遺るから。


 ツヨシが応える。綺麗なもの…僕の心に鮮やかに残る、素敵なもの。





 さあ、描こう。





「おお…」


 赤、桃、橙、黄、緑、青、紫、茶、黒、白、灰…鮮やかな色達。僕は、絵が好き。だって、描けば手に入らないものはない。

 小さな頃は、よく食べ物を描いていたね。絵のケーキ、食べる真似を皆でしてた。いつか食べたいね。どんなケーキがいいかなって話してた。




 見せてあげたい。





 世界には、こんなに綺麗なものがあるんだってこと。

 七色に輝く花畑、鮮やかな湖、夜に光る虫達…僕が視た綺麗な景色が次々に空に描かれていく。

 それから、それから…


「すげ…」

「なんと…」

「美しい…」


 それから… 虹色に輝く心臓。凛々しい鷲の双頭で…クリスタルの獅子の体。左右の羽は魔力で輝く、素敵なグリフィン……


「む?」


「あ」


 景色はゆらゆらとゆれて穏やかに消えたけど…ダンジョンマスターさんは残ってしまった。


「……む?」


「あ、ああああああああ!」




 やらかしたあああああああ!!





「…ポッチ?の匂いだな」


 ダンジョンマスターさんがクンクン匂いをかいだ。


「あ、はい。ポッチです」


 そういや、今の姿になってからダンジョンマスターさんに会いに行ってな…い?


「本物おおお!?」


「?」


 首をかしげるダンジョンマスターさんは可愛い…ではなく!

 ダンジョンマスターさんに状況を説明したら、納得して頷いた。


「なるほど。我はジェラルディン達と違い、精霊や偽リンドに近い存在だ。しかも、ポッチは最近我をよく描いていたからほぼ同一の存在となり…肉体(うつわ)が魂を呼んだのだろうな。我はダンジョンマスターであり、ポッチの(しもべ)である。不思議だな。神に使われるだけの己をあれだけ嫌悪したのに、お前に仕えるのは悪くない」


「しもべじゃないです!友達です!」


 そこは否定しておいた。僕は少なくともダンジョンマスターさんを友人と思っている。


「…そうか。では友よ、せっかくだから一仕事しようか。我が力、存分に見せてやろう!」


「…というわけです!彼はコルド遺跡のダンジョンマスターですよ!せっかくだから戦いましょう!」






 結果、騎士達は積み重なった。明らかにやり過ぎたけど、皆満足げだからいい…の、かな??怪我人はいないし…いい、よね??


 いいことにしよう。


 僕はもう、考える事を放置した。ダンジョンマスターさんはせっかくの初外出だから空を飛んでお散歩?に行きました。今まではダンジョンから出られなかったらしいから、それは良かったのかな?

 こないだダンジョンに遊びに行ったとき、ダンジョンマスターさんがこっそり荷物に忍ばせてた魔結晶(返却する予定だった)をコアにしました。


「強さは充分見せてもらった!」

「次は賢さだな!!」


「まだあるの!?ちょ、手を引っ張らないで!」


 僕はまだ両親に会えないようです。もうおうちに帰りたくなってきました。

 ローゼンベルクのお父さん…お母さん…ポッチは帰ったらお話ししたいことがたくさんあります…


 そして、まだまだ帰れそうにありません。 

 筋肉ムキムキポッチッチと崇められる日は近い……かもしれない。

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