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流されるポッチ

 ポッチ視点になります。時間軸も少し戻ります。

 到着しました、シヴェリハス国。なんとなく見覚えのある町を眺めながら、僕は何故こんな騒ぎになったかを考察していた。


 そもそも、ドラゴンと来たからだなぁと結論した。目立つことこの上ない。ぼけっとしていたら、女の子に話しかけられた。


「おにいちゃん」


「ん?」


「ポーラ!?」


 女の子の母親は気絶しそうになりながらも、いざとなれば子供を守ろうと身構えている。優しいお母さんなんだね。


「なぁに?」


 僕はお母さんを刺激しないようにと女の子に目線を合わせて話しかけた。


「おにいちゃん、ドラゴンのお友だち?」


「ああ、うん。僕のお姉ちゃんの方が仲良しだけど、ドラゴンのお友だちはいるよ」


 コウとかルランと仲良しだから、嘘じゃない。


「そうなの?どうやったらなかよくなれる?」


 仲よく……やっぱりお菓子?ロザリンドお姉ちゃんはお菓子でクリスタルドラゴン達と仲よくなったみたいだからお菓子??


「…餌づ…じゃなく、お菓子をあげたら仲良くなれるよ。ただ、ドラゴンにも色々いるからむやみに仲良くなろうとしないようにね。これ、僕のお姉ちゃんが作ったお菓子だよ。ドラゴンさんとはんぶんこしてごらん」


「うん!」


 ドラゴンにお菓子をあげた女の子を見て、他の子供達も出てきた。ついでにドラゴンのイメージアップになるんじゃないかと子供達にお菓子をあげてドラゴンと食べさせた。


「ぼっちゃま、城に向かいませんと」


 バーナードさんに話しかけられた。確かに、かなり時間が経ってる。


「バーナード将軍!?」


 しょうぐん??誰?僕が戸惑っていたら、バーナードさんが堂々と宣言した。


「皆のもの、道をあけよ!このお方は現王の御子、ポートフォリオ殿下である!」


「殿下!?」


 住民達がざわめく。え!?なんでそんなことをばらしちゃうの!?ロザリンドお姉ちゃんがボソッとひっくい声で『余計なことを』って言ったよ!?お兄ちゃんもなんか言ってたよ!

 バーナードさん、逃げて!超逃げて!!


「ポートフォリオ殿下、万歳!」


 住人の声がひとつ、またひとつ増え、ついには大歓声となり、住人が道を開ける。

 気絶してしまいたい…僕は白目をむきながら手を振った。よし、全力で逃げよう。


 あの、ロザリンドお姉ちゃん?何故そんなやる気ある乗り物を出したかな?パレードにする必要はありませんよ??


『ポートフォリオ殿下、万歳!』


 というか、僕の名前ってポートフォリオなの?長いよ!!





 ドラゴン達は人型になってもらいました。最初から人型になってくれていればこんなに目立たなかったのに……しかし悔やんでも後の祭りです。ドラゴン達は悪くないのです。





 お城の中を歩いていたら、白と茶色の犬…いや狼?の獣人が行く手を阻んだ。

 服装からして貴族かな?毛並みもいいし…えらい人達なんじゃないかな??


「王に会いたければ、我らを倒すがよい!!」


「「じゃ、遠慮なく」」


「ポンパドール!!」

「エクステンション!!」





 僕の姉と兄により、二人の獣人は瞬殺された。





 一瞬の出来事だったので、しばらく固まってしまった。


「お姉ちゃん、お兄ちゃん、見知らぬ人にいきなり攻撃しちゃダメだよ!」


「倒せって言うから。それに、いい見せしめになるかなって」


「そうそう。馬鹿には暴力の方が手っ取り早いんだよ」


 お姉ちゃんとお兄ちゃんの笑顔が黒い!見せしめってナニ!?そんなのいらないよ!両親の顔見たら帰るんだよ!?


「ロザリンド」

「ルー様」


 ストッパー二人のおかげでお姉ちゃんとお兄ちゃんは落ち着きました。


「あの、大丈夫ですか?」


 お兄ちゃん特製傷薬で治してあげた。


「くっ…今回は勝ちを譲ってやる…」

「しかし、次も勝てるかな!?」



 いや次ってなに??




 また白目をむきそうになりました。僕、皆のスピードについていけないよ?意味がわからないよ??






 今度はなんか訓練所みたいなとこに連れてこられた。


「王たるもの、強くなくてはいかん!」

「お前の強さを見せてみろ!!」


「私がやろっか?」


「んー、大丈夫」


 面倒だけどこの人達が納得しないとお父さんに会えないみたいだし、僕はもうお姉ちゃんの背中に隠れて怯える小さな子供じゃない。立ちあいは騎士がやるみたいだから、不正なジャッジにはならないだろう。


 ツヨシは僕の…僕だけの武器。僕の意思を理解し、最適解を出してくれる。僕はあれからツヨシの本当の使い方を学んだ。あとはひたすら実践あるのみだ。ツヨシは大きな筆に変わる。棒として使うつもりだ。


「僕の武器はこれです。見ての通り殺傷力はありませんし、僕は他の武器を扱ったことがほとんどありません。これを使わせていただきたい」


「かまわん。私はルチーズ=シベリアン!いざ、勝負!」


 ルチーズさんとやらはロングソードの模擬刀で襲いかかってきた。






 うん…弱くない?





 何て言うか…なってない。動きに無駄が多いし、トロい。偽ジェンドのお父さんと比べると…悪いけど雑魚だね。

 弾き、そらし…なんかもう飽きてきちゃった。向こうは疲れてきたのか、一打が雑になってきた。


「…えい」


「ぐふっ…」


 ちょっと叩いたら気絶しちゃった。


「勝者…えーと」


「ポッチです」


「勝者、ポッチ殿!!」


「何!?ポートフォリオではないのか!?」

「偽者なのか!?」


 いや、勝手にそのポートフォリオ?とか呼ばれてただけで、僕はポッチだもん。


「違う!ポッチはポートフォリオ殿下の愛称だ!国を逃がす際に、ポッチ様と名を改めたのだ!」


 あ、そうなの?でも長いから僕はポッチのままがいいなぁ……


「そうだったのか。疑ってすまなかった。ポートフォリオ殿、なかなかの腕とお見受けする。私ともお相手願おう。私はシーズ=シベリアン!いざ、勝負!!」


「はい」


 シーズさんの武器はバトルアックスって奴だね。模擬刀だけど重たいから当たったらケガしちゃいそう。




 正直、シーズさんもルチーズさんと同じぐらいの実力で、物足りない。実戦訓練にもならないよ。

 しかも、武器が合ってないんじゃない?微妙に武器の重量に振り回されてるよ。



「えい」


「ぐっ!」


 一撃でした。なんか、自分の力に自信ありそうなわりに弱くない?そういや戦闘は不得手なルーお兄ちゃんにすら瞬殺されたぐらいだから、強くなかったのかな?

 これじゃあ力を示すことにはならないよね?


「他に強い方はいます?」


「では、私が」


 ジェンドのお父さん並みに筋肉ムキムキな獣人のおじさんが前に出た。立派な鎧からして、えらい人なのかな?


「団長!?」


「久々に骨がありそうな相手だ。お相手願います」


「あ、はい」


 いや、僕はただの芸術家で戦闘要員じゃないですよ。この筋肉は見た目だけですと言いたかったけど、おじさんが顔怖いから言えなかった。おじさんの武器はロングソードとショートソードの二刀流らしい。


「はじめっ!」


「うおおおお!!」


「くっ」


 うん、おじさんはさっきの人より強いね。でも…この程度で騎士団のトップってまずいんじゃないかな?


 でも、試すにはちょうどいいかな。余裕で双剣をいなし、弾く。





 そして、誘い込む。




「発動!」

「うわあああ!?」


 地面にこっそり書いてた陣により、おじさんは捕縛された。もっと簡略化しないと実戦投入は無理だね。


「ぐうう…」


「その陣は破れませんよ。降参してください」


「…そうですね。貴方は本気を出してすらいなかった」


 項垂れる騎士団長さん。ば、バレてた!即座に頭を下げた。


「す、すいません!」


「いえ。貴方に本気を出させることができなかった己を不甲斐なく思いこそすれ、責めたりはいたしません。貴方は強く、無駄がない。最小限の力で戦っている」


 そもそも体力がないから省エネ仕様な僕です。それはやろうと思ってではなく無意識ですね。


「俺も戦いたいです!」


「手合わせ願います!!」


 次々と騎士さん達から試合を申し込まれてしまった。まぁ、いいかと安請け合いしたのが多分よくなかった。僕は強かったんだって調子に乗ってしまった。

 調子に乗ると痛い目をみるってロザリンドお姉ちゃんで散々学んだはずなのに、僕は学習してなかったみたいです。

 ポッチが筋肉ムキムキポッチッチになる日は近い……かもしれない。

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