息子?の珍行動
国王視点になります。
国王は頭を悩ませていた。ドラゴン襲撃?事件と思いきや、息子を名乗る青年が現れたとの情報が入ったのだが……
来ない。
かれこれ一時間である。この城はそこまで広くない。どこで道草しているのだろうか。
いや、そっちも気になるが、ドラゴンどこ行った。ドラゴンはどうした。どうなった。
「陛下、大変です!シーズ様がご子息に陛下の子を名乗るなら戦えと…!」
なるほど。もし本当に我が息子ならば弟の子であるシーズやルチーズ達が放っておくはずもない。偽物だと追い払う可能性もあるだろう。
ドラゴンは、たまたま来ただけでどこかに飛び去ったのだろうか…まだ居るならなんらかの報告があるだろう。
「よし、行こう。案内せよ」
「はい!」
しかし、息子かもしれない青年はいなかった。その代わり、積まれた騎士達がいた。
「流石は陛下のご子息にございます…陛下、もしご子息を世継ぎになさらないのであれば、是非我が養子にくださいませ……」
近衛騎士団長がそう呟いて気絶した。しかし、まだうちの息子なのかは不明なのだが。確かに力がすべてのこの国で、私は一番強いと認められたが、この人数を一度に相手したりはできないぞ?
すでに息子(仮)はこの場にいないらしい。しかし、息子(仮)はよほどの力を持っているのだろうか。抉れた地面や生々しく残る戦闘の爪痕は、彼の強さを物語っていた。
「おい、私の息子を名乗る男はどこに行った?」
「あ、はい!ルチーズ様達が………」
到着したのは宰相執務室だった。何故ここに……
とりあえずノックして入室したら、宰相のガンドが興奮した様子で話しかけてきた。
「殿下!ご子息を世継ぎになさらないなら、是非我が養子にください!」
お前もか。あのね?まだ私、息子を名乗る青年に会えてないんだよ。本物かの判断もつかないのに、決められないからね!
「無茶を言うな。まだ会ってもいないのだ」
「え………?」
『え』じゃないわ。事実だっつーの。まだ会えてないんだよ。
「私の息子を名乗る男はどこに行った?」
「食堂に、行くと……」
「…何故」
真っ直ぐ会いに来いや!寄り道しすぎだろうが!
「…ルチーズ様達が…認めてほしければ食堂にいる最強の女性を倒せと……」
あの馬鹿兄弟、絞める。
あいつらのせいかよ!つうか息子(仮)も流されるままに流されるんじゃない!
そして、食堂に行くと…やはり息子(仮)はいなかった。そんな気はしていた。
「陛下!もしご子息を世継ぎになさらないのでしたら、是非我が養子にくださいませ!!」
お前もか、スコーシュ。
※スコーシュさんは食堂に居る最強とうたわれた女性です。お残しは許さない系の肝っ玉母ちゃんです。
なんなの?うちの息子(仮)を皆してなんで養子にしたがるわけ??
「そもそも会ってもいないのだ。そんな判断を下せる状況ではない」
「え」
まあ、そうなるわな。そして、またどこかに連れていかれたらしい馬鹿息子(仮)…もう、面倒になって謁見の間で待機することにした。いつかは、多分来るだろう。しかし、息子(仮)はこの国を乗っとるつもりだろうか。
「叔父上、遅いですよ!我が君をお待たせするなんて、不敬ではありませんか!」
「そうですよ!我が君、こちらがこの国の国王陛下でございます」
諦めて謁見の間に行ったら、馬鹿息子(仮)が居た。馬鹿甥達も居た。
蓄積されたストレスが爆発して、馬鹿甥共を全力でしばき倒した私は、多分悪くない。
馬鹿息子(仮)が驚いていたが、仕方ない。馬鹿息子(仮)はとても穏やかな瞳をしていたが、鏡にうつしたかのように私によく似ていた。




