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僕とじいとお姉ちゃん

ポッチ視点になります。

 行くのやめようかと思ったけど、産みのお母さんが危篤なのは本当だから行くことにした。今は丁度お姉ちゃんのすてんどぐらすに集中したかったから仕事もいれてない。


 お姉ちゃん達の調整の方が大変で、なんとか1週間後に出立となった。


「ぼっちゃま…ぼっちゃま、よくぞご無事で!」


 以前の僕そっくりの犬獣人が泣いている。僕、この人を覚えてる。優しかった。


「……じい?」


 そう、確かじいって呼んでた。


「ぼっぢゃばぁぁぁぁ!!じいは、じいはずっどぼっぢゃばに会いどうございまじだぁぁぁ!!」


「じい…」


 ずっと僕を探してくれていた人。少しだけど、思い出せた。


「僕を逃がしてくれたのは、じいだよね。ありがとう、おかげで僕はこうして生きている」


「ぼっぢゃばぁぁぁぁ!!」


 あーあ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。拭いてあげよう。ポケットからハンカチを取り出してじいの顔を拭ってあげた。


「その後、うちの(ポッチ)は苦労しまして」


「ちょ」

「それはもう酷い奴隷のような扱いを受けていましたよ。たまたま私が助けてうちに来るまでは、それはもう…」


 止めようとしたら、すかさずルーお兄ちゃんにガードされた。なんでこういうときにチームワーク抜群なの!??


「ぼっちゃま…それはまことでございますか!??」


「え?その…えっと………うん」


 つい正直に頷いてしまった。


「ぼっぢゃばぁぁぁぁ!!じいの、じいの迎えが遅かったばかりにおいたわしいぃぃぃ!!お辛かったでしょう!もっと早く見つけてあげられれば…!!」


 あの、辛かった毎日を嘆いてくれる人。うん、勇気を出して会ってみて…よかった。


「うん…辛かったけど…今はお姉ちゃん達と暮らせて幸せだよ。僕が辛かった事を悲しんでくれてありがとう」


「なんと……ぐしゅっ、バートン夫人」


「はい?」


 じいが、お姉ちゃんにひざまずいた。これは……見たことあるよ。


「すいません、従僕はもうお腹一杯です!!間に合ってます!!」


 ロザリンドお姉ちゃんが先手を打った。そうだよね、ジェンドのお父さんだけで胃もたれするよね。


「…そうでしたか…しかし、このご恩をどうお返しすれば…」


 お姉ちゃんが首を振った。


「そもそも、ポッチが私に恩を感じる必要がありません。ポッチは私の弟です。姉が弟を助けるのは当たり前。貴方が私に何かしたいと望むなら、大切な弟の味方でいてください。正直、貴方は信用しています。貴方の国は信用していませんけどね」


 お姉ちゃんが笑った。じいは深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。私は何があろうと、ぼっちゃまの味方であると誓います」


「…あのさ、僕何があっても生き抜けると思うから…じいは自分の事を一番に考えてね?」


「ぼっぢゃばぁぁぁぁ」


 何故泣かれたのだろうか…僕には偽リンド達も居るから、よほどがあっても…いや、そもそもロザリンドお姉ちゃんが居れば何があろうとどうにでもなる。むしろじいが心配なのは当たり前だと思うんだけど。




「さあ、出発いたしましょう!」


「あ、バーナードさん。すいませんが時間があまりないのでショートカットします。馬は思い入れがなければ売るとかしてくれます?馬車は預かっときますね」


「……………は?」


 お姉ちゃんがポーチに馬車をしまった。馬はバーナードさんがこっちで手配したものが3頭。その馬達は売り、バーナードさんが長年連れ添ってきた愛馬だけを残して小さくした。

 小さくなってもパニックにならない。賢い馬だなぁ。


「さてウルファネアに転移して、そこから空路で一気に行きますよ!」


「くーろ?」


 飛行機魔具はまだ他国では珍しい。バーナードさんの国では魔法があまりさかんではなく、魔具も珍しいのだそうだ。

 ウルファネアから山脈を越えるのが1番近いルートなんだって。


「ふおおおお…本当に飛んでいる……」


 ヴァルキリーに乗って空を進む。ヴァルキリーと空を飛ぶのはクリスタルドラゴン達。たまたまウルファネアのオンセンに入りに来ていたけど、飛ぶヴァルキリーを見つけて好奇心が強い若いクリスタルドラゴン達が来てしまった。


「ま、いい威嚇になるから結果オーライ!」


「…なんで威嚇する必要が…」


「ふふん、先手必勝!ポッチになめた態度をとる馬鹿削減するためですよ!」


 いいの?これいいの??とディルクさんに目線で聞いた。


「…うっかりポッチ君にちょっかいだしてロザリンドに後悔させられる被害を削減するためだから」


「なるほど」


 なんという説得力だろう。本人はどーゆー意味だと騒いでたけど、そのままの意味だよ。

 そっちの方が被害が甚大になるに違いない。ふと思いついてお姉ちゃんに話しかけた。


「いいの?またクリスタルドラゴンの親玉だとか言われちゃうよ??」


「ぐぬっ!?か、可愛いポッチのためです。不本意な誹謗中傷もあえて受けましょう」


「…大体あってるんじゃねーか?お嬢様が呼べばクリスタルドラゴン達は協力を惜しまねぇだろ」


「そ、そんなことないもん!」


「そういえば『ドラゴンの心』がいるから大概のドラゴンはロザリンドの言うことを聞くんじゃないっけ?」




『………………………』




 うちのお姉ちゃんは、いつのまにかドラゴンの親玉になっていたようです。


「…ぼっちゃまの義姉君は、とんでもない方なのですなぁ…」


「そこは否定しない」


 僕のお姉ちゃんは優しくて強くて悪賢くてとんでもない、世界一のお姉ちゃんです。

 前作からすでにドラゴンの親玉でしたが、それどころではなくなった(邪神復活した)のですっかり報告を忘れたロザリンドさん。


「報告!」


「へい!喜んで!」


 というお約束から、兄の愛情溢れたお説教という流れであります。


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