ポッチは案外大人でした。
ポッチに会うため、ローゼンベルクの実家に戻りました。
「これはまた、派手にやらかしたね…」
「てへ」
暴れまくったので、木は折れてるわ、クレーター出来てるわ……証拠隠滅しとこう。今さらな気もするけど。
「わはははは!通りたければ俺を倒してから行け!」
「くすくす」
「ふふふ」
「ロッザリンド」
偽リンドはおじぎをした。うちの兄弟がすいません…と言ってる気がする。
何このデジャ・ビュ。
昨日全く同じ会話をした気がする。しかし、今回はディルクがいる。ディルクがいれば、なんでもできる!
「やるよ、ディルク!」
「えええ?」
圧勝した。
ディルク強い!ジェラルディンさんと偽リンドを同時に相手にしてくれましたよ!
そして先ず双子をす巻きにして、ジェラルディンさんをす巻きにして、偽リンドをす巻きにしました。
「ジェラルディンさんも偽リンドも癖があるからねぇ。慣れれば捕まえやすいよ」
ディルクって、近接では最強なんじゃないだろうか。ちなみにディルクいわく本物の方が予期せぬ動きをするし、私のサポートあってこそなんだそうだ。私はサポートがなくてもいけたのではないかと思っている。
「…………何してるの?」
寝ぼけ眼のポッチ……じゃないな。
「す巻きにしてます。どちら様ですか?」
「…………なんです巻きにしてるの?ポッチです」
「それは『わはははは!通りたければ俺を倒してから行け!』と偽ジェラルディンさんが言ったから……」
ん?ポッチです??
目の前の青年を見る。ジェラルディン並みの筋肉的な意味でナイスバディである。
そして、黒に茶が混ざったシベリアンハスキーみたいな精悍な顔立ち。
「ポッチィィィィ!!?」
「きゃん!?」
「聞いてはいたけど別人じゃないですか!筋肉ムキムキポッチッチって筋肉ロザリンド教団のご神体になれそうじゃないですか!」
「落ち着いて、お姉ちゃん!筋肉教団て何!??意味がわからないよ!」
混乱する私。私の…私の可愛いポッチがマッスルにぃぃ!!
「………僕、やっぱり大きくならない方が良かった?」
へたる耳と尻尾。獣頭でもわかる。ポッチがしょんぼりしている!
「ポッチはどんな姿でも、私の可愛いポッチです!お姉ちゃんが間違っていました!」
「お姉ちゃん…」
「ポッチ!!」
「……いい話、なのかな?」
後にディルクから、傍目には襲われてるようにしか見えなかったと言われました。今のポッチ、悪人顔だしなぁ………
さて、我がローゼンベルク家も他人事じゃないので父、母、兄にも同席していただき、先ほどの話をいたしました。
「ロザリンドはどう思う?」
「個人的見解としては…バーナードさん個人は信用できます。ただ『国』がどう出るかだと思いました」
「ふむ」
「まだポッチが王太子だと確定したわけではないですが、バーナードさんの姿を王太子に写したらしいのです。バーナードさんは以前のポッチにそっくりでした。解呪のタイミングといい、可能性は高いと思われます」
「…なるほど。ポッチはどうしたい?」
ポッチは黙って考えているようだった。
「僕は…ポッチでいたい。僕の親は…パパとママだ。僕の家族は、ロザリンドお姉ちゃん、ルーお兄ちゃん、マーサさん達やジェンド達だ。だから、他なんかいらない」
ポッチは真っ直ぐに私たちを見た。その瞳に迷いはなかった。
「でも、それじゃお姉ちゃん達に、ローゼンベルクに迷惑がかかる。僕は両親に会いに行くよ。そして、僕は僕として生きることを認めてもらう」
「…そうか。本当に大きくなったな、ポッチ」
父が優しくポッチを撫でた。父よりややでかいが、尻尾をふりふりしているさまはやはりポッチだ。
「とはいえ、情勢は調べておかないとね。久しぶりに忙しくなりそう。うふふ、ちゃあんと調べてあげるからね」
「ありがとう、ママ!」
「…僕も手伝うよ。まったく、うちの弟妹は手がかかるなぁ」
母と兄にもナデナデされて尻尾をふりふりするポッチ。ムキムキでも中身次第では可愛いんだなぁ……
「もちろん、お姉ちゃんは付き添いますよ!いざとなったら国を滅ぼしてでもポッチが嫌がることはさせないからね!」
「滅ぼさなくていいから!」
「落ち着いて、ロザリンド!」
慌ててポッチとディルクが止めに入った。私はいたって冷静ですよ?うふふふふふ。
「ロザリンドだけじゃ心配だから、僕も行ってあげるよ」
「兄様…」
「いざとなったら我が家のお野菜戦士達も戦うからね!」
「兄様、素敵!!」
「こらあああ!!ルーもロザリンドを煽るんじゃない!」
「だから滅ぼさなくていいってば!!」
私と兄様が暴走すると困るからと、ディルクとゲータも来ることになりました。暴走なんか多分しないよ?向こう次第だけどね。




