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とりあえず、最初から説明をプリーズ

 久しぶりのロザリンド視点になります。

 学校も終わり、本日はバートン邸でマイダーリンのお仕事を手伝っていました。


「若奥様、ご実家からお客様がいらっしゃいました。いかがいたしますか?」


「実家から?今日は特に予定はなかったはずだけど…誰?」


「ルーベルト様でございます」


「兄様ね。通してちょうだい」


「かしこまりました」


 静かに礼をして執事さんが退室した。


「なんだろうね?」


「うん」


 特にこれといって研究大好き・やや引きこもりな兄が出てくるほどの案件が思いつかない。兄が我が家に来るのはせいぜい説教案件ぐらいである。


「急にごめんね」


 兄はやや思いつめたような様子だった。え!?マジでどうしたの??


「最近、ポッチに会った?」


「え?こないだ迷子になったとき以来会ってないけど」


「…やっぱりロザリンドは無関係…か」


 よくわかんないけど、なんでもかんでも私のせいにするのはやめていただきたい。しかし、それより気になることがあるので兄に確認した。


「何が?まさかポッチに何かあったの!?」


「うん…ポッチが……」


 兄は辛そうに告げた。






「ポッチが犬から狼っぽくなってジェラルディンさんレベルの筋肉をゲットした」






 え?






「…兄様、それは完全に別人では?」


「でも、中身はポッチだった」


「いや、中身が入れ替わったとか…?」


「それもないらしい」




「「………………」」





 ポッチ…丸々太った柴犬みたいなポッチ…それが狼になったあげくジェラルディンさん並みの(筋肉的な意味で)ナイスバディに!?

 小柄で細身なポッチが一晩でムキムキマッスルに!?


 とりあえず私は頭を抱えた。現物を見ていないし、想像がつかない。


「とりあえず、ポッチに会いに行きます。ディルク…」


「うん。行ってきて。急ぎの仕事もないからこっちは任せて」


 なんと素晴らしい旦那様なのでしょうか。優しくて、気配りができて、かっこよくて、可愛くて、モフモフで、いつもいい匂いがしてて、セクシーで、案外夜ははげし「ロザリンド、脳内が駄々漏れてるよ。ディルクが悶えてるし、内容が怪しくなってきたからそろそろやめようか」


「はーい」





 ガタゴトと兄と馬車に乗り実家に向かいます。


「ポッチの話だと、なにかが壊れる感覚がしたみたいなんだ。ロザリンドはポッチに何か封印がかかってるとか気がついてた?」


「いえ。あー、でも…」


「心当たりがある?」


「心当たりがあるというか…ポッチには何らかの守護魔法がかかってたと思います。悪意はなさそうだった…というか守る意思を感じたから特にいじったりしなかったけど、もしかしたらそれが解けたのかも…」


 兄が顔をしかめた。


「魔石もなしでこんなに長く効果が続く魔法なんてありえるの?」


「そうですねぇ…ポッチは高魔力保持者だし、あの子は常に寄り添おうとするから…もしかしたら魔法を持続させていたのはポッチだったのかもしれませんね。無意識にやっていた可能性はあります」


「なるほどね。それから…ジェラルディンさんがちょっと気になることを話してたんだ」


 あのおっさんが言うことはあてにならないと思うけど、と前置きしてから兄は続けました。


「ムキムキ姿のポッチが海の向こうの狼系獣人の王族にそっくりなんだって。しかも、その敵国である猫系獣人の国の王族にマリーが似てる。最近まで戦争してて、行方不明の王族がいるらしい」




 嫌な予感がした。


 実は、マリーには以前一回問い合わせが来たのだが、本人が激しく拒否していたのでお断りして終わっている。ポッチはともかくマリーの方はとても怪しい。




「な、ないよね!ジェラルディンさんの気のせいだよね!」


「…だと、いいけど」


 何か思い当たることがあるのか、兄は同意してはくれなかった。





 そしてポッチのアトリエ前には門番がいた。


「わはははは!通りたければ俺を倒してから行け!」


「くすくす」

「ふふふ」


「ロッザリンド」


 偽リンドはおじぎをした。うちの兄弟がすいません…と言ってる気がする。うむ、私がモデルなだけあって良識的だね!


「…なら、力ずくで通してもらうよ!ヴァルキリー、阿修羅モード!!」


「ロッザリンドォォ!!」


 物理的に三面六臂のヴァルキリーが偽ジェラルディンさんに襲いかかる。


「甘い!」


「ああ!?ヴァルキリーがぺいっとされた!」


 流石はジェラルディンさん。偽者のくせに無駄に強い!しかも偽者だからジェンドやルーミアさんネタが効きにくい!最強なんじゃないだろうか。

 しかも…しかも我が家の偽双子天使のサポートが的確かつ厄介だし、偽リンドも強い!単体ならどうにでもなるが、4人同時だと連携もとれており非常に厄介だ。このままでは…私とヴァルキリーだけでは負けてしまう……ディルクがいれば…と思うが無いものねだりしても仕方ない。


 正攻法が駄目なら、姑息な手段を使うまで!すでに暴れまくったせいでアトリエ周囲の地形が変わっています。待ってればそのうちマーサとか兄辺りに援護してもらえるかもだけど…敗けは性にあわない!


「いいの?私はポッチの大事な大事なお姉ちゃんよ?その私に傷でもつけたら…ポッチはなんて言うかしらね?」


「う!?」

「え!?」

「あ!?」

「ロザ!?」


 待て、最後。ロザって何さ!そんなだから主人公(わたし)の名前だけで面白いとか言われ…いや、思考がそれた。


「…お姉ちゃんになんて酷いことするの!とか、怒られちゃうかも?」


「きゅーん」

「「あうう…」」

「ロッザリンド…」


 全員が明らかにシュンとした。効果は抜群だ!


「今なら内緒にしてあげないこともないけど…どうする?」


「「「お願いします!」」」

「ロッザリンドォォ!!」



 こうして、あまりにも無駄な戦いに勝利した私であった。そして偽双子が確認したのだがポッチは完全集中モードになっており、全く動かないし返事もなかったらしい。ポッチの顔だけでも見たかったのだが、なんでも私の結婚式の飾りを作っているから私は出入り禁止らしい。完全に無駄足だった。


 よく考えたらアトリエの前でこんだけド派手にドッカンドッカンしてたのに出てこないのだ。恐らく私が来る前からすでにポッチは集中モードだったのだろう。


 完全に無駄な争いをしてしまったことに疲労を感じたが、どちらにせよタイムアップだ。

 ロザリンド=バートンには愛しのディルクにたらふく美味しいご飯を食べさせるという使命があるのだから。

 仕方なく、ポッチの集中が切れたら呼ぶよう頼んで帰宅したのだった。

※帰宅後のバートン夫婦の会話


「ただいまー。ポッチ君どうだった?」


「おかえりなさい。会えなかった」


「………………なんで?」


「アトリエに籠って私たちの結婚式の装飾を集中して作ってて、私に出入り禁止令が出てました。本人は集中してて呼んでも気がつかないし」


「あー」


「ポッチの偽ジェラルディンさん達と戦いましたが、私とヴァルキリーだけじゃ太刀打ちできないね」


「…何してるの!」


「いや、ノリで」


「のらないの!」


「そうですね。労力のわりに完全に無駄でした。というわけでディルクに乗りますか」


「えっ!?あっ!?」


 ギャオス(腹の音)により中断されたのは言うまでもない。

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