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ムキムキポッチ

 とりあえず帰宅することにしたんだけど…


「あ、石に戻ってね」


「ロッザリンド(こくり)」

「わはははは、またな!」

「「また喚んでねー」」


 うちの()達を石に戻した。


『………………………』


 あ、しまった。皆が固まっている。


「ポッチ…ジェラルディンさんをどうした!?いや、あのロザリンドちゃんのようでロザリンドちゃんじゃないのは誰だ!?」


「…………………話せ」




 かくかくしかじか。説明中。





「やっぱロザリンドちゃんのせいか…」


 だから、なんでもかんでもお姉ちゃんのせいにしないであげてください。ツヨシについては大半がお姉ちゃんのせいだから仕方ないけど。


「しかも、あの英雄と同等の強さ……」


「実はポッチって最強なんじゃねぇか?」


「…そうね……そうかもしれないわ」


「………うむ」


「まぁ、僕の職業的に強くても役に立ちませんけどね」


 仮に最強だとしても、僕の職業は芸術家です。最強の芸術家とか意味不明。

 文字通り(ペンは剣よりつよし?そうだね。そこはもうどうでもいいよ。


「よく考えたら、最強の侯爵夫人も意味不明だな」


『ロザリンドちゃんだからなぁ』


 大概の理不尽は『ロザリンドだから』で解決できる不思議。なんというか、お姉ちゃんはなぁ…本人は普通の女の子だって主張してるけど、ロザリンドお姉ちゃんを普通だとするともはや普通の定義を議論しなきゃいけなくなるよね。


 なんかずいぶん思考がそれてしまったが、もう夕方だし帰らなきゃ。結局赤いクリスタルラビット君は今日は僕とお泊まりするんだって。


「えっと、ありがとうございました。僕、帰りますね。あ、でもギルドで依頼達成支払いしなきゃですね」


「いや、私たちも行くわ。その姿になったことを説明しなきゃ」


「あ」


 そうだった。姿が変わりすぎて原型をとどめてないもんなぁ……共通点はかろうじて犬科だってぐらい? 身長も大幅に伸びたし、体は筋肉が少ししかなかったのに今はムキムキ。ちょっとまぬけな犬顔から凛々しい狼顔になってるもんなぁ。毛色も違うし別人だよね…





 そして支払いをしてからローゼンベルクのお家に帰ったんだけど…


「あら、お帰りなさいませ皆様。こちらにいらっしゃるのは珍しいですね。おや?新しいメンバーですか?」


※自由な風さんはいまだにローゼンベルクの敷地に拠点があります。


「あの、ポッチです。マーサさん、ただいま」


「…………ポッチ。ポッチぼっちゃま」


「…………はい」


「あの茶色で可愛らしく私のお手伝いをしてくださる可愛くて優しいポッチぼっちゃま」


「いや、マーサさんこそいつもよく働いてますよね?僕のお手伝いなんて本当に微々たるものです」


「………………ああ、何故私の癒しであるポッチぼっちゃまがこんなムキムキに…!」


「マーサさん!?」


 マーサさんが倒れたので慌てて支えた。


「マーサさん、大丈夫ですか!?どこか痛いの!?お医者さん呼ぶ!?」


「大丈夫です。ムキムキになろうとポッチぼっちゃまはポッチぼっちゃまなのですね…ムキムキでも……」


 マーサさんは僕にムキムキにならないで欲しかったようだ。なんか申し訳ない。しょんぼりしたら頭を撫でてくれた。


「すいません、驚いただけですよ。旦那様や奥様達にも伝えねばなりませんね。応接間でお待ちください」


「うん、ごめんなさい…」


「ぼっちゃまは何も悪くありませんよ。ぼっちゃまはどのようなお姿であっても、マーサが大好きなポッチぼっちゃまです」


「マーサさん…ありがとう…」


『ぼっちゃまがどのようなお姿であっても、ぼっちゃまは………が大好きな…………ぼっちゃまです』


 一瞬だけ、誰かが脳裏に浮かんだ。あなたはだれ?優しい……おとこのひと………


「マーサさんが…」

「やっべ、メイドらしいマーサさんとかレア過ぎる…」


「貴殿方も当然連絡を手伝いますよね?」


『はい、喜んで!!』


 笑顔のマーサさんはすごい迫力でした。すぐに連絡を始める自由な風さん達。


「あ…………」


 かすかな残像は消えてしまった。なつかしくて、たぶんとても優しかったひと。


「ぼっちゃま?」


「なんでもないよ。ちゃんと皆にもお話ししなきゃね」


 僕は苦笑した。

 僕は『ポッチ』だ。過去なんて関係ない。過去の僕なんかもういらない。僕は『ポッチ』として生きていくのだから。


 優しい影にはふりかえらず、僕は僕として歩いていくんだ。



 そう思っていたから、まさかあんな騒動になるなんて思わなかった。でも、たぶん僕が本当の姿を手に入れた時から…ううん、本当はもっと前から始まっていたんだ。


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