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第六話「魔獣召喚」

 〈森での野営〉


 俺は新しく生まれたスケルトン達に対して早速命令をする事にした。

 初めての命令は森の探索だ。

 これから三体のスケルトンは森を探索する訳だが、森の中ではいつ他の魔物に襲われるかもわからない。

 俺はスケルトン三体分の武器を用意する事にした。

 適当な木をブロードソードで叩き切ってから、こん棒を作り出す。

 スケルトン達は俺のこん棒作りを楽しそうに見つめている。

 出来が上がったこん棒を配ると、嬉しそうに振り回した。

 後で戦い方も教えなければならないが、今は野営地周辺の見回りをして貰わなければならない。


「スケルトン達、敵と遭遇してもなるべく戦わない様に。敵がスライムやスパイダーの様な弱い魔物なら、倒してアイテムを拾ってきてくれ」

「……」

「危なくなったらすぐ戻ってくるんだよ」

「……」


 スケルトン達は静かに頷くと、初めての任務に向かった。

 案外命令をしっかり聞いてくれる良い魔物なのかもしれないな。

 スケルトンのための装備も、魔法都市ザラスで揃えた方が良いだろう。

 人間と同様、武器も防具も装備出来るスケルトンという魔物は、意外と召喚獣として有能なのかもしれない。

 人間の冒険者向けの装備を買えばスケルトン達も装備出来るからな。

 彼等のための装備は早急に用意する必要がありそうだ。


 さて、俺とリーシアは今晩の寝床の準備をしなければならない。

 アッシュおじさんが譲ってくれた小さなテントを張って寝床にしよう。

 俺達は森の中でも比較的開けた場所にテントを張り、テントのすぐ傍には魔法で作った炎を浮かべておいた。

 火を恐れる魔物を遠ざけるためだ。


 それから夕食の準備だ。

 準備と言っても、アルシュ村から持ってきた堅焼きパンと乾燥肉を食べるだけだ。

 それから葡萄酒も少しだけ飲む事にしよう。

 堅焼きパンに切れ目を入れて、乾燥肉を挟む。

 シンプルな料理だが、これが意外と旨い。

 葡萄酒はゴブレットに注いだ。

 スケルトン達の帰りを待ちながら、俺とリーシアは月明りに照らされた静かな森の中で夕食を始めた……。


「レオン、魔法都市ザラスでは何をするの?」

「そうだね、まずは冒険者ギルドで俺とリーシアの冒険者登録をするよ。冒険者の登録をすれば正式にクエストを受けられるんだ」

「冒険者か……」

「そうだよ、俺達は冒険者になるんだ。リーシアは好きなだけ俺と一緒に居れくれて構わないよ。もし冒険の旅がつまらなくなったら、いつでも精霊の契約を解除してもいい」

「うん……」


 俺がそう言うと、リーシアは少しだけ寂しそうに俯いた。

 俺は昔から冒険者になりたかったが、リーシア自身が将来何をしたいか、俺はまだはっきりとは聞いていない。

 新しく知り合った仲間に、人生に対する考えをどこまで深く聞いて良いのか、悩んでいるところだ。


 リーシアは俺と精霊の契約をしてから、日に日に魔力を増している。

 魔力だけではなく、身長も少しずつ伸びているような気がする。

 俺は精霊の契約をした日に、精霊王の指環が入っていた本を最後まで読んで、内容を頭に叩き込んだ。

 精霊との契約を解除するには指環を外せば良いという事が判った。

 勿論、指環を外せば精霊王の加護も無くなる。

 今のところ、俺からリーシアとの契約を解除するつもりはない。


「レオン、まだ一緒に居たい」

「分かったよ……」


 リーシアは小さな手で俺の服を掴むと、恥ずかしそうに俺を見つめた。

 俺はリーシアの体に毛布を掛けると、炎の前でゆっくりと葡萄酒を飲みながら、スケルトン達の帰りを待つ事にした。

 静かな森の中で酒を飲む。

 最高の時間だ。

 森での野営は、誰にも邪魔されず、ゆっくりと時を過ごす楽しみがある。


「リーシア、俺は冒険者としてこの世界を旅したいんだ。剣術も魔法も、更に練習して俺は立派な冒険者になるんだ」

「レオンなら出来ると思うよ。私は精霊だから力も弱いし……魔法しか使えないけれど、私も冒険者になりたい」

「そうだね、二人で冒険者になってしばらく旅をしよう。ダンジョンを攻略したり、迷宮に潜ってみたりしても面白いと思うんだ」

「そうだね……楽しそう!」


 魔法の炎に照らされたリーシアの銀色の髪は、キラキラと光を反射させながら、夜の森の風を受けて美しく靡いている。

 俺は良い仲間に恵まれたな……。

 こんなに魅力的な精霊と共に冒険者を目指せるんだ。


 しばらくスケルトン達の帰りを待っていると、三体のスケルトンは両手一杯にスパイダーとスライムの素材を持って帰ってきた。


「お帰り! こんなに沢山素材を集めて来てくれたのか!」

「……」

「よしよし、よくやった!」


 スケルトン達は誇らしげに集めた素材を俺の前に置いた。

 俺は早速、スケルトン達が持ち帰った素材を確認する事にした。


 ・グリーンスライムの体液×3

 ・スパイダーの目×2

 ・スパイダーの足×4

 ・魔物の牙


 何やら見たこともない牙が一つある。

 どんな魔物の素材なのだろうか。

 形状は狼やゴブリンなどの牙に似ているな。

 スパイダーやスライムの素材よりも、見た事のない牙が持つ魔力が一番高い。

 俺は召喚してみたい衝動に駆られて、早速新しい仲間を増やす事にした。

 スパイダーは見た目が気持ち悪いし、スライムは今のところ仲間にする必要はなさそうだ。


 俺はどんな魔物の物かもわからない牙を地面に置いて魔力を注いだ。

 強い魔物が生まれますように……。

 両手に溜めた魔力を素材に注ぐと、魔物の牙は辺りに炎の魔力をまき散らしながら姿を現した。

 魔物はファイアウルフだった。

 アッシュ村の付近で生息が確認されている火属性の魔物だ。

 赤色のフワフワした体毛、目は綺麗な青色だ。

 生まれたばかりの小さなファイアウルフは、俺を親だと思っているのか、一目散に俺の元に掛けてきて飛びついてきた。


「よしよし!」

「バウッ……」

「レオン、犬みたいで可愛いね」

「そうだね、なんだか仲良くなれそうだよ」


 リーシアの言う通り、仕草は魔物というよりは犬そのものだ。

 だが、ファイアウルフから感じる火の魔力は確かに魔物の物だ。

 火属性の魔物が生まれるとは運が良いな。

 俺は魔法の中では火属性が得意だ。

 俺と同じ属性を生まれながらにして持つファイアウルフが居れば、強力な戦力になるだろう。


「レオン、名前を付けてあげようよ」

「そうしようか」


 リーシアの提案によりファイアウルフに名前を付ける事になった。


「どんな名前が良いだろう。ファイアウルフだから、ファイ? フィーア? フーガ?」

「フーガが良いと思うよ」


 俺が考えた名前の中から、リーシアはフーガと言う名前が気に入ったようだ。

 ファイアウルフの名前はフーガにする事にした。

 俺がファイアウルフに新しい名前を伝えると、フーガは嬉しそうに俺の顔を舐めた。

 俺はフーガに夕食の残りの堅焼きパンと乾燥肉を与えると、嬉しそうに食べ始めた。

 生まれたばかりの魔物は食欲旺盛だな。

 グレートゴブリン程ではないが……。


「レオン、これから何をしようか? すぐに寝るの?」

「そうだね、まだ寝るには早いかな。スケルトン達に簡単に戦い方を教えようかな」

「戦い方を? 楽しそう!」


 よく考えてみれば、戦い方すら教えていないのに、スライムやスパイダーを倒して素材を回収してきたスケルトン達はかなり優秀だ。

 しっかりと戦い方を教えたら、弱い魔物には負けないスケルトンの軍団になるんじゃないか?


 俺はブロードソードを抜いて、基本的な武器の使い方を教える事にした。

 まずは、物理攻撃の中でも特に使い勝手の良い剣技、『スラッシュ』を教える事にしよう。

 スラッシュは魔力を込めた水平切りで、筋力に依存しない技だ。

 攻撃は魔力と筋力を込めれば込める程、威力を増す。

 幼い頃から何度も練習している一番得意な剣技だ。


「スケルトン達、今からスラッシュを教えるよ。よく見て覚えるんだ」


 俺は右手に持ったブロードソードに魔力を込めると、鋭い水平切りを放った。

 剣に込める魔力は強ければ強い程良い。

 魔物との戦闘では、一発の攻撃が勝敗を左右する。

 俺は技のバリエーションは少ないが、一つ一つの技をゆっくりと時間を掛けて練習している。


 俺の攻撃を初めて見たスケルトンとフーガは嬉しそうにはしゃいだ。

 それからすぐにスケルトン達の剣術の訓練が始まった。

 こん棒を使ったスラッシュの練習だ。

 俺が何度か手本見せてやると、スケルトン達は多少時間は掛かったものの、スラッシュを見事自分の技術として定着させたようだ。

 楽しそうに何度もスラッシュを繰り出している。


 フーガも何やら戦い方の訓練に参加したいらしく、俺はフーガのための戦闘訓練を考える事にした。

 俺が思いついた戦闘訓練は、適当な大きさの枝を空中に放り投げ、フーガが地面から飛び上がって枝を切り裂くという内容だ。

 脚力をアップさせながら、攻撃のタイミングを計る訓練になるだろう。

 俺はすぐに枝を掻き集めてきて、フーガとの訓練を始めた。


「俺が枝を投げるから、フーガが切り裂くんだよ!」

「バウッ!」

「それじゃ、いくぞ!」


 手に持った枝を上空に投げると、フーガは地面から飛び上がって鋭い爪で枝を切り裂いた。

 フーガの一撃は明らかにスケルトン達のスラッシュよりも強力だった。

 攻撃の瞬間、爪から強力な炎が発生している。

 自分の体に属性を纏わせて攻撃するのか……。

 まるで魔法剣士が使うエンチャントの様だな。

 魔法剣士は、自分自身の武器に属性の魔力を込めて攻撃する事が出来る。

 俺は今のところ、その様な高度な戦い方は出来ない。


 それから寝るまでの間、フーガは俺が投げた枝を切り裂き続けた。

 何度も同じ攻撃を繰り返しているせいか、フーガの攻撃力とスピードが少しずつ増してきている気がする。

 スケルトン達は俺とフーガの訓練を横目で見ながら、大きな木に対してスラッシュを何度も放っている。

 威力はまだまだ低いが、いつかきっと強いスラッシュを使えるようになるだろう。


 リーシアはというと、スケルトンとの戦闘で手に入れたアイスの魔導書を読んでいる。

 アイスの魔法を使うために、杖を構えて何度も魔法を唱えているようだが、上手くいかないようだ。

 だが、リーシアの体からは優しい氷の魔力を感じる。

 きっとリーシアならすぐに新しい魔法も使えるようになるだろう。


「そろそろ休もうか。明日もザラスを目指して移動しなきゃならないからね」


 俺は仲間に声を掛けると、早めに休む事にした。

 テントの中にリーシアを呼び、先に寝かせてから、スケルトン達には夜の見張りを頼んだ。

 俺はリーシアと同じ布団の中に入って横になると、リーシアは小さな手で俺の手を握った。


「仲間も増えて楽しくなってきたね。私、今まで一人だったから、レオンと出会えて毎日が楽しいんだ」

「そうだったんだ。これからは俺もフーガもスケルトンも居るし、もっと楽しくなるよ」

「うん……」


 リーシアの過去を詮索はしたくないが、俺と出会った事で彼女の人生が少しでも楽しくなったなら、俺が廃村でリーシアを助けた事が正しかったという事だ。

 これからもなるべく一緒に居られるように、今の良好な関係を維持していきたいと思う。


「そろそろ寝ようか、お休みリーシア」

「うん、お休みレオン……」


 しばらく布団の中で目を瞑っていると、俺はいつの間にか眠りに落ちていた……。

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