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第四十六話「召喚魔法」

 天井が高く、広々した教室に入ると、生徒達の視線が一斉に俺達に注がれた。

 大半の生徒はローブを身に纏い、魔法の杖を持って魔術師の様な服装をしているが、俺達はどこからどう見ても冒険者だ。


 俺はミスリルの全身装備と二本の剣を腰に差し、冒険者ギルドのマントを装備しているし、シルヴィアは剣を腰から提げ、シールドを左手に持っている。

 リーシアだってかなり頑丈な白銀のメイルを装備している。

 ルルはどこからどう見てもレイピアを扱う剣士にしか見えない。

 極めつけはカイだ、鋼鉄のハンマーと鋼鉄の全身装備を身に纏っている。 


「あれって……入学試験で一位だったレオン・シュタインのパーティーじゃない?」

「ああ。Bランクの冒険者だろう? この前ベヒモスと仲良さそうに散歩しているところを見たよ」


 生徒達が俺達の噂をしている。

 生徒は全員で五十人だ。

 俺達は開いている席に座ると、すぐにフリーゼ先生が入って来た。 

 手には金属製の短い杖を持っている。


「皆さん、おはようございます。早速オリエンテーションを始めようと思います。まずは授業の内容についてです。ブライトクロイツ魔法学校の授業は他の魔法学校に比べて、かなり実戦的です。ダンジョンに潜って頂く授業もあれば、モンスター討伐を行う授業もあります」


 先生は生徒の顔を一人ひとり確認する様に見つめながら話を続けた。


「皆さんが当校で学ぶ科目は、召喚魔法、実戦魔法、防御魔法、回復魔法。それから、課外授業と一般教養です。担当の先生は、レーネ・クラッセン学長が実戦魔法。この授業では実際の戦闘形式で魔法の訓練を行います。次に、召喚魔法は私、ハンナ・フリーゼが行います。防御魔法と回復魔法はユリア・ガウス先生。課外授業と一般教養はリーゼロッテ・グラーツ副学長」


 俺は忘れないため、すぐに羊皮紙にメモをとった。

 リリーが俺の肩の上でフリーゼ先生の話を熱心に聞いている。


「召喚魔法の授業は基本的にこの教室で行います。実戦魔法に関しては闘技場を使います。授業の五分前には移動を完了して下さいね。今日の一時間目はオリエンテーションのみですが、二時間目は召喚魔法の授業を行います。三時間目、四時間目はクラッセン学長の実戦魔法の授業です。ここまでで何か質問がある方は?」

「先生! 実戦魔法というのは、戦闘能力試験のようなものですか?」

「そうですね……実際のモンスターと戦う事は少ないですが、主に攻撃魔法を勉強する授業だと思って下さい。ちなみに、一番生徒から人気があるのもクラッセン学長の授業ですね」


 フリーゼ先生は俺の顔をじっと見つめた後、肩の上に座っているリリーを見た。


「私の授業では召喚魔法をお教えします。二時間目には実際に皆さんのパートナーとなる召喚獣を召喚して頂こうと思います! 詳しくは二時間目に説明しますね」


 パートナーか……。

 俺のパートナー達は今頃ノーラとアルバーン姉妹と共にクエストをこなしているだろう。

 俺はクエストを決める権限をノーラとアルバーン姉妹に一時的に預けた。

 勿論、自分達のランクよりも上のクエストを受ける事はまだ許可してない。


 それから俺達は簡単に自己紹介をすると、フリーゼ先生のオリエンテーションが終了した。

 教室はそのままで、二時間目からは召喚魔法の授業が始まる。

 俺は精霊王様の力で自由自在に魔物を召喚出来るが、通常の召喚魔法はどのように使用するのだろうか。

 この機会に通常の召喚方法を学んでおくのも良いかもしれない。 

 今は仲間を増やすつもりはないから、とりあえず授業は見学する事になるのだろうか?

 そもそも、召喚魔法の授業って、一度魔物を召喚してしまえば、それ以上先生から教わる事は無いような気がする。


「それでは二時間目の授業を始めます! 皆さん、私の事はフリーゼ先生と呼んで頂いても構いませんし、ハンナ先生と呼んで頂いても構いません。私はこれから四年間、皆さんの担任を任されていますので、どうかよろしくお願いしますね。それではこれから召喚魔法の授業を始める訳ですが、まず、私の授業では二種類の召喚魔法しか使用しません。一つめは実態のある召喚獣を呼び出す方法。2つめは、実態のない召喚獣を作り上げる方法。まず、実態のある召喚獣というのは、シュタイン君の召喚獣のように、実際の生きている魔物の事です」


 ハンナ先生は俺の肩に手を置いて微笑んだ。

 近くで見るととてつもない美人だな……。

 そして信じられないくらい巨乳だ。


「そして、実態の無い召喚獣というのは……」


 ハンナ先生は金属製の杖を握り、教室の開いている空間に向け、魔力を込めた。

 爆発的な魔力を体に感じる……。

 やはりこの先生は只者ではない……。


『ホーリーエレメンタル!』


 先生が杖を向けた先には、銀色の背の低い人形の魔物が居た。

 魔物というより、人間が透明になったような見た目をしている。


「これは私の魔力が具現化した召喚獣です。知能は術者の魔力に比例します。実際の武器を持たせれば立派な剣士になります。敵陣に送り込んで囮として使う事も出来ますし、魔物との戦いに参加して貰う事も出来ます。自身の魔力で形を作り、操る魔法。これをエレメンタルの魔法と言います」


 先生はもう一度杖を振ると、エレメンタルは一瞬で姿を消した。


「既に召喚獣をお持ちの方は、エレメンタルの魔法を練習してみて下さいね。そして、まだ召喚獣をお持ちで無い方は、これから魔獣クラスの魔物が宿る召喚書をお渡しします。好きな魔物を一体選んで召喚して下さい。召喚書には、魔物のプロフィールや経歴等が記されています。じっくりと読んで理想の魔物を探して下さい。召喚したい魔物が決まれば、私のところに相談しに来て下さい。魔物を呼び出すための魔法陣の書き方を教えます」


 こうして召喚魔法の授業が始まった。

 召喚獣を持たない大半の生徒は、嬉しそうに召喚書を読み始めた。

 俺も召喚書の内容が気になって読んでみる事にした。


 召喚書には魔物の名前、属性、強さや性格、戦闘時の得意なポジション等。

 様々なプロフィールと、魔物そっくりの絵が描かれていた。

 この本と魔法陣を使って召喚するのが通常の召喚魔法なんだな……。

 俺は精霊王様の加護があるから、わざわざ召喚書を使って魔物を呼び出す必要はない。


「レオン。エレメンタルの魔法の練習をしてみようよ!」

「そうだな! 俺達は既に沢山の召喚獣が居る訳だし」


 俺とリーシア、シルヴィアは早速エレメンタル作りを始めた……。

 どうやらエレメンタルの魔法は、召喚獣の姿を自由に考えて作る事が出来るらしく、俺は見慣れてるベヒモスの姿に近いエレメンタルを作る事にした。

 両手から火の魔力を放出させ、形を作る。

 ベヒモスを頭の中でイメージしながら、何度も何度も作り作り直すと、ついに手のひらサイズの小さなベヒモスが完成した。

 小さなベヒモスは俺を見上げて小さく火を吹いた。

 本物の迫力はまるで無いが、なかなか強い火の魔力を感じる。


 ふと隣を見てみると、リーシアはフーガそっくりの狼系のエレメンタルを作り上げていた。

 氷の魔力で作られた狼の様なエレメンタルが、リーシアにお辞儀をすると、教室からは拍手が湧いた。

 シルヴィアはと言うと、レイスに瓜二つのエレメンタルを作り上げた。

 風属性の魔力の塊なのか、緑色の濃い風のような魔力がレイスの姿をしている。

 本物のレイスよりも体は小さいが、風の魔力で作られた弓を持っている。

 エレメンタルに武器を持たせて戦わせるのも良いかもしれないな。

 はやりリーシアとシルヴィアは天才だ。

 俺のエレメンタルとは比べ物にならない程、彼女達のエレメンタルからは強い魔力を感じる。


 しばらくエメレンタルの魔法を続けていると終業のベルが鳴った。

 次は闘技場で実戦魔法の授業を受けなければならない。

 俺は作り上げたエレメンタルの魔力を解除して消滅させると、仲間達と共に実戦魔法の教室に向かった……。

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