表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/50

第三十二話「妖精の加護」

 ザラスから馬車を走らせて森の中を進むと、ベヒモスとゲイザーが率いる第二パーティーが魔物と交戦している最中だった。

 敵はゴブリンがニ十体程。

 剣や斧を手にしたゴブリン達は第二パーティーに襲い掛かるも、三体のレイスの弓による攻撃を受けて後退している。

 剣と盾を装備した五体のスケルトンと十体のドラゴニュート、アルバーン姉妹が徐々にゴブリン達と距離を詰める。

 ゴブリン達の背後にはベヒモス、ゲイザー、フーガが回り込んだ。


「レオン、助太刀しなくていいよね?」

「そうだね、なんだか敵のゴブリンが気の毒だ……戦力に差がありすぎる」

「仲間が強いのは頼もしいわ。ここから見物しましょう」


 馬車を近くに停めて仲間の戦いを見物しようとしたが、勝負は一瞬で決まった。

 ベヒモスがゴブリンの集団に突進すると、鋭い角で次々とゴブリンの体を貫いた。

 ゲイザーはフーガの背中に乗って、触手での連続攻撃をゴブリンに放っている。

 フーガはゲイザーを背中に乗せながら、炎を吐いてゴブリン達が近寄れない様にゲイザーを守っている。

 フーガとゲイザーのコンビが最強すぎるな……。

 ベヒモスとゲイザーの攻撃によって半数近くのゴブリンが倒れた。

 残りのゴブリン達は、スケルトン、ドラゴニュート、アルバーン姉妹によって討伐された。

 召喚獣で作ったパーティーが強すぎて、その内俺の出番なんて無くなるんじゃないだろうか。

 第二パーティーの仲間達は俺達に気が付くと、嬉しそうに手を振ってくれた。

 俺達は仲間達に声を掛けてから、ダンジョン方面に馬車を進めた。



 〈ザラス・ダンジョン〉


 ダンジョンの前に着くと、早速馬車から降りて訓練を始める事にした。

 まずはルルから魔法剣士としての戦い方を学ぼう。

 俺はルルのサンダーブローの様な攻撃を覚えたいと思っている。

 剣から遠距離攻撃を飛ばす事が出来れば、戦い方の幅が増えると思ったからだ。

 それに、ルルのサンダーブローやシルヴィアのウィンドエッジの様な、武器から発生する魔法攻撃は、単純に見た目も良く、使い勝手も良さそうだと感じた。


「ルル、早速だけど、剣から火の魔力を飛ばす方法を教えてくれるかい?」

「わかったよ。まずは剣を抜いて魔力を込めてみて」


 腰に提げているブロードソードを引き抜いて右手で構える。

 体内から火の魔力を集めて剣に込めると、剣からは火が発生した。

 これがいわゆるエンチャントだ。

 武器に属性魔法が掛かっている状態。

 ここまでは出来るが、武器から魔法を飛ばす事が非常に難しい。


「その状態で剣を振って魔力を飛ばすんだよ」

「やってみるよ」


 剣を持ち上げて思い切り振り下ろした。

 だが、ルルのサンダーブローの様に魔法攻撃が発生する事は無かった。

 やり方が間違っているのだろうか。

 一体どうやって攻撃を飛ばすんだ?


「剣に集めた魔力を対象に向けて飛ばすんだよ。剣を杖だと思って振ってみて。剣は一時的に魔力を込めている道具だと考えるの」

「剣を杖だと思うか……それなら確かに魔法を出せるかもしれない」


 俺はもう一度、剣を頭上高く掲げた。

 剣を杖の様に……。


『ファイアブロー!』


 力強く剣を振り下ろして魔法を唱えると、剣の先からは炎が噴き出した。

 剣から魔法を放つ事には成功したが、火の魔力で刃を作り、飛ばす事が目標だ。


「レオン、よく見ていて。剣から刃を飛ばすのよ」


 ルルは俺の近くに立ち、レイピアを抜いた。

 右手で抜いたレイピアを適当な木に向けて構えると、剣に魔力を込めた。

 ルルの体からは強い雷が発生し、体から発生した雷は剣へと伝わった。


『サンダーブロー!」


 魔法を唱えると、剣の先からは雷の魔力で作られた刃が発生した。

 雷の刃が発生している状態で、ルルが思い切り剣を振り下ろすと、雷の刃は木に目がけてかなりの速度で放たれた。

 雷の刃はいともたやすく木を切り裂いた。

 俺が覚えたいのはこの技だ……。


「作りたい攻撃魔法のイメージをしっかり作るの。そうじゃないと剣の先からはただの炎が噴き出すと思うよ」

「そういう事か。しっかりと刃をイメージして魔力を飛ばせば良いんだね」

「そうそう。もう一度やってみて」

「分かったよ」


 再び剣を持ち上げて火の魔力を込める。

 この状態のまま、作りたい魔法のイメージを確定させる。

 俺が作りたい形状は三日月状の刃だ。


『ファイアブロー!』


 剣を振り下ろしながら魔法を唱えると、剣の先からは炎で作られた刃が飛び出した。

 成功だ!

 三日月状の炎の刃は、木に向かって一直線に飛ぶと、木々をなぎ倒しながら遥か彼方まで飛んで行った。


「凄い威力だね……私のサンダーブローよりも強いと思うよ」

「そうかな。ルルのお陰で新しい魔法を覚えられたよ! ありがとう!」

「どういたしまして」


 それから俺は何度もファイアブローを飛ばし続けた。

 既にファイアブローよりも強力な火の魔法を操れるからだろうか、一度覚えてしまえば、簡単に使いこなせるようになった。

 しかし、剣から遠距離攻撃を放てるのは本当に便利だな。

 俺は今まで右手でブロードソード持ち、左手では魔法を使っていたが、武器を持ったまま魔法を放てるなら、左手で盾を持つ事も出来るし、もう一本剣を持つ事も出来る。

 二刀流になるのも良いかもしれないな……。

 俺はファイアブローの練習を止めてから、仲間の様子を見る事にした。


 シルヴィアはゲイルランスとウィンドエッジの練習をしている。

 ゲイルランスの威力は申し分ないが、魔法を完成させるまでに少々時間が掛かる。

 威力が高い魔法だから仕方がないとは思うが、実戦では使い勝手が悪いかもしれない。

 魔法を作り上げるまでに、他の仲間が敵の注意を引く必要があるわけだし。


 ウィンドエッジに関しては、既に完璧にマスターしたのか、軽く剣を振るだけで、風の刃が飛び出す。

 シルヴィアのウィンドエッジは、細い木なら簡単に切り裂ける威力があり、魔力の消費も少ないのか、かなり使い勝手の良い魔法みたいだ。

 威力は高いが、魔法を作り上げるまでに時間が掛かるゲイルランスと、威力は低いが、使い勝手の良いウィンドエッジ。

 これからは二種類の魔法を使い分けて戦ってもらおう。


 リーシアは新しく覚えたソードレインの練習をしているみたいだ。

 上空に作り上げた複数の氷の剣を降らせている。

 信じられない魔法だな。

 俺のアローシャワーとは比較にならない程、リーシアのソードレインの威力は高い。

 それに、剣の数も俺のアローシャワーより多い。

 リーシアのソードレインは氷の剣が十五本だが、俺のアローシャワーは炎の矢が七本だ……。


 ファイアブローを覚えた俺は、早速妖精から頂いた加護の力を使ってみる事にした。

 俺の体には聖属性の魔力が流れている。

 聖属性と言えば、リーシアと同じ属性だな。

 まずは市場で買った聖属性の入門者向け魔導書を見てみよう。

 俺は鞄の中から魔導書を出すと早速読み始める事にした。



 〈聖属性・入門者向け魔法集・魔導書〉


 1.聖属性とは?

 聖属性は、回復魔法、防御魔法、補助魔法に特化した属性である。

 パーティー内に聖属性の魔術師が一人居るだけでパーティーの生存率は大幅に上昇する。

 前衛として戦闘を行う事は難しい属性ではあるが、対アンデッドに関しては他属性とは比較にならない程の火力を発揮する事が出来る。


 2.主な聖属性の魔法の種類。

 対象を回復させる回復魔法。

 対象の物理防御力・魔法防御力を強化させる防御魔法。

 対象の属性耐性や、異常状態を回復させる補助魔法。

 対象を攻撃する攻撃魔法。


 上記の四種類は基本的な聖属性の魔法の種類であるが、聖属性の魔法の中でも最も複雑、かつ難易度が高い魔法は蘇生魔法である。

 (本書は入門者向けの魔導書のため、説明は省略する)


 3.入門者が覚えるべき三種類の魔法。

 『ホーリー』

 対象に向けて聖属性の魔力を注ぐ攻撃魔法。

 闇属性を持つ者に対しては、絶大な効果を発揮します。

 ゾンビやグール、ゴーストの様な闇属性を持つ魔物ならこの魔法で一発です。


 『ヒール』

 対象に聖属性の魔力を注ぎ、傷を癒す、回復魔法の中でも最も基礎的な魔法。

 アンデッドに対して使用すると攻撃魔法になります。

 また、闇属性を持つ人間に対する攻撃魔法としても効果があります。

 液体に対してヒールの魔法を使うと、体力を回復させるヒールポーションに変化します。


 『キュア』

 対象の異常状態を回復させる補助魔法。



「レオン、聖属性の練習をするの?」

「そうだね。試してみたいんだ」

「それなら私が教えてあげる」

「ありがとう。それじゃ早速ホーリーの魔法を練習してみようかな」


 すぐに新しい属性魔法を練習しよう。

 俺は魔導書を鞄に仕舞うと、リーシアから杖を借りて魔法の練習を始める事にした。

 この杖はリーシアがアッシュおじさんから頂いた杖だ。

 リーシアは毎日暇な時間があれば杖を布で磨いている。

 杖の先端に嵌っている紫色の宝石が、自分の目の色と同じだから気に入っているのだとか。


 さて、ホーリーの魔法を使ってみよう。

 ホーリーの魔法は、対象に聖属性の魔力を放つだけで良いらしい。

 どうせならアンデッド系の魔物に対して使用し、効果を確認したい。

 俺達が今居るダンジョン前には、アンデッド系の魔物はおろか、人間と敵対する種族の魔物の姿はない。

 居るのは害のない魔物だけだ。

 きっと俺達が狩りすぎたからだろう。

 だが、定期的にダンジョン内から出てくる魔物は一定数存在する。

 久しぶりにダンジョンに入って、実戦形式で聖属性の魔法を練習してみよう。


「リーシア、ダンジョンの中に入って魔法を練習してみようと思うんだけど、一緒に来るかい?」

「うん!」

「それじゃ早速ダンジョンに入ろうか。ルル、シルヴィア、ちょっとダンジョンの中で魔法を試してくるよ。一時間以内に戻るからね」

「気をつけてね」


 俺はリーシアと共に、ダンジョンの中に入る事にした……。

※2017/11/17 週間総合ランキング、一位ランクインしました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ