第二十八話「合格発表」
俺とルルの戦闘能力試験が終わった。
全ての試験が終わった俺達三十名の受験生は、大広間ではなく一階の食堂に案内された。
戦闘能力試験が終わるまで、他の受験生との接触は禁止された。
次に受ける受験生に試験の内容が漏れてはいけないからだ。
食堂には木製のテーブルが学年順に並んでおり、一番手前が一年生、奥が四年生だ。
テーブルの一番奥には教師用のテーブルがある。
一年生用の机の上には、受験生のためのポーションが用意されていた。
「皆さん、闘技場での試験は楽しんで頂けたでしょうか? 残りの受験生の試験が終わるまでこちらでお待ち下さい。体力と魔力を回復させるポーションを準備しております」
三十名の受験生の中には、ゴーストとの戦闘で小さな傷を負った者も居る様だが、どの生徒にも大きな怪我はなかった。
ゴーストは召喚魔法を担当する先生が作り出した魔物だから、受験生に致命傷を負わせる事は無いだろうが、俺に襲い掛かってきたゴースト達は殺す気で挑んできたような気がする……。
すぐにポーションを飲んで、ルルのサンダーの攻撃によって傷ついた体を癒さなければならないな。
俺はルルと共にポーションを飲んで体力と魔力を回復させた。
「レオン。私達、合格出来るかな?」
「わからないな……他の生徒がどれくらいゴーストを倒したか見ていないし」
「そうだよね、でも私達は頑張ったと思うよ」
「うん、ルルのお陰で楽に戦えたよ。最後のゴーストの大群にはびっくりしたけどね」
「私もレオンが組んでくれたから助かったよ……」
ルルは嬉しそうに俺を見つめて微笑んでいる。
茶色の髪に茶色の目。
身長は大体150センチ程だろうか。
よく見てみると容姿もかなり整っていて可愛らしい。
モフモフした猫耳が可愛らしい。
「パーティーを組んでくれてありがとう。私は獣人だから、なかなか組んでくれる人が居ないんだ」
「え、そうなの? 確かに獣人とはパーティーは組んだ事が無いな。と言うか、俺はいつも召喚獣と一緒に居るからな」
「召喚獣? もしかして魔法能力試験で最高点を出した人の事?」
「そうだよ。俺の召喚獣で、幻獣のウィンドデビルなんだ。名前はシルヴィアって言うんだけど」
「幻獣の仲間が居るんだ……レオンは本当に凄いな。私、小さな村から魔術師になるために飛び出してきて、最近ザラスでクエストを受け始めたのだけど、誰もパーティーを組んでくれなくて、ずっと一人で魔物と戦っていたの」
「やっぱり……随分戦い慣れてると思ったよ。一人で狩りをする事が多いからなんだね」
「そう。だからレオンが私と組んでくれて本当に嬉しかったの。ありがとう……」
ルルは俺の方を見つめると、嬉しそうに猫耳を立てて俺の手を握った。
心地の良い魔力が俺に伝わってくる。
こんなに小さなルルが今まで苦労して魔物と戦っていたのか。
俺の力でルルを守ってあげられないだろうか。
なんだか彼女とは良い友達になれそうな気がするし、正直に言えば彼女の戦闘力は非常に魅力的だ。
これからも彼女とパーティーを組んでクエストに挑みたいな。
「ルルは冒険者ギルドのメンバーなんだよね?」
「そうだよ、先月Dランクの冒険者になったの」
「Dランクなんだね。良かったら今度俺達と一緒にクエストに行かないかい? ザラス近辺の討伐クエストなんだけど、召喚獣と一緒に狩りをしているんだ」
「え!? 本当?」
「勿論だよ。ルルは強いしね。俺のパーティーは皆個性的だけど、ルルならすぐに馴染めるような気がするんだ」
俺がそう言うと、ルルは満面の笑みを浮かべて、嬉しそうに尻尾を動かした。
「パーティーのメンバーが個性的なの? レオンの仲間の事が知りたいな」
「俺の仲間は、精霊、ウィンドデビル、剣士の姉妹、ゲイザー、ベヒモス、ファイアウルフ、アックスビーク、それからスケルトンとレイスにドラゴニュートだよ。少し離れた村にはグレートゴブリンも居るな」
「……」
ルルは驚いて言葉を失った様だ。
「全部レオンの召喚獣……?」
「精霊のリーシアと人間の姉妹以外は俺の召喚獣だよ」
「ゲイザーにベヒモス……十七歳の冒険者がザラスのダンジョンを初攻略したって言う話を聞いた事あるのだけど、もしかしてレオンの事なの?」
「うん、そうだよ」
「そうなんだ……知らなかった。私、レオンのパーティーに入りたい!」
ルルは俺に手を差し出すと、俺はすぐにルルの手を握った。
小さなルルの手は、柔らかそうな見た目とは裏腹に、手の平には剣を握り続ける事によって出来たマメがいくつもある事に気が付いた。
きっと今まで苦労して生きてきたんだな。
「よろしく、他の仲間は後で紹介するよ」
「こちらこそよろしく……パーティーに入れてくれてありがとう」
こうしてルルが俺のパーティーに加わった。
しばらくルルとお互いの故郷の話や今回の試験の話をしていると、リーシアが戻ってきた。
少し疲れた表情を浮かべているリーシアは、俺の姿を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。
「レオン、本当に大変だったよ。他の人はみんなパーティーを組んでいたけど、私は一人だったんだ……」
「え? そうだったの? 実は俺もパーティーを組んでゴーストと戦ったんだよ」
俺はルルと共に戦闘能力試験を受けた事をリーシアに説明した。
すると、リーシアはルルの方に歩み寄っていった。
リーシアが俺以外の人間に自ら近づくなんて珍しいな。
勿論、ルルは獣人だから人間ではないが……。
「ルルさん……レオンを守ってくれてありがとう。私はレオンの精霊のリーシア」
「ルルで良いよ。試験ではレオンの足を引っ張っちゃったけど、これからレオンの役に立てるように頑張るね」
リーシアはルルの事を気に入ったようだ、二人は楽しそうに話し合っている。
俺はリーシアの試験の出来について詳しく聞く事にした。
「リーシア、ゴーストは結構倒せたのかい? リーシアは魔法能力試験で好成績だったからきっと上位で入学出来ると思うけど」
「あまり多くは倒せなかったんだ。新しく覚えたソードレインで大体十八体は倒せたと思うよ。正確には数えていないけどね」
「一人でゴーストを十八体も? やっぱりリーシアは強いな……」
「新しい魔法の使い勝手が良かったからなの」
ルルはリーシアの試験結果を聞いて驚いている。
しかし、ルルもかなりの数のゴーストを俺と共に倒した。
きっと俺達は入学試験に合格してるはず……。
それからしばらくの間、他の受験生が戻って来るまで食堂で待っていると、シルヴィアが嬉しそうな表情を浮かべて食堂に入って来た。
きっと成績が良かったに違いない。
シルヴィア達が最後の三十名だったのか、今回の戦闘訓練試験でゴーストを作り上げた先生も一緒に戻ってきた。
「皆さん! 入学試験の結果が出ました! 大広間にて発表しますので、移動して下さい!」
クラッセンさんの指示の下、俺達はすぐに大広間へ移動した。
〈大広間〉
ついに入学試験の結果が出るのか……。
俺は一次試験の結果が良くなかったから、もしかしたら不合格の可能性もあるな……。
リーシアとシルヴィアは緊張した面持ちでクラッセンさんの発表を待っている。
「まず、魔法能力試験の上位三名を発表します! 一位、幻獣・シルヴィア、850点! 二位、精霊・リーシア、800点! 三位、ザーラ・ベルツ、750点!」
シルヴィアとリーシアの名前が呼ばれると、二人共恥ずかしそうに顔を赤らめた。
俺は魔法能力試験では二十五位という情けない成績だったからな……。
次の発表で上位を取らなければ合格の可能性は極めて低い。
「戦闘能力試験の上位三名を発表します! 一位、レオン・シュタイン、討伐数三十一体! 二位、レベッカ・ブライトナー、討伐数二十九体! 三位、ルル・フランツ、討伐数二十八体!」
え……?
俺が戦闘能力試験の一位なのか?
俺の名前が呼ばれた瞬間、試験会場は大いに盛り上がった。
「冒険者のレオン・シュタインが一位だった! やっぱりBランクの冒険者には敵わないな!」
「ザラスのダンジョンを初攻略した冒険者でしょう? 凄いなぁ。三十一体か!」
まさか俺が一位か……。
信じられないな。
これもルルのお陰だ。
「ルル、ありがとう! 君のお陰だよ!」
「うんん。こちらこそありがとう!」
俺達が喜んでいると、すぐに合格発表が始まった。
「一位から十位までの合格者は、特待生として入学する事が出来ます! まずは一位から発表します! 炎の魔法を自在に操り、自身の強い精神力と高い戦闘能力を生かし、戦闘能力試験では三十一体という、本校始まって以来の過去最高の討伐数を叩き出した、冒険者、レオン・シュタイン! 一位合格おめでとうございます!」
は……?
俺が一位?
教師陣からは拍手が上がったが、未だに俺が一位だという事は信じられない。
戦闘能力試験で得点を大幅に稼いでおいたお陰だな……。
それからすぐに十位までの合格者が発表された。
二位 ザーラ・ベルツ
三位 ルル・フランツ
四位 リーシア
五位 シルヴィア
六位 カイ・バスラー
七位 ヘルガ・ギゼル
八位 アメリア・エーデル
九位 レベッカ・ブライトナー
十位 ミア・ファッシュ
リーシアが四位で、シルヴィアが五位か。
俺はてっきりリーシアかシルヴィアが一位になると思っていた。
一位から十位までの特待生が発表されると、残りの四十名の合格者も発表された。
合格者向けの書類を受け取ると、ついに魔法学校に入れるんだという実感が沸いてきた。
このために毎日必死に魔法の練習をしてきたんだ。
頑張った甲斐があったな。
「シルヴィア、リーシア。合格おめでとう! 俺達、来月から皆で魔法の勉強が出来るよ!」
「レオンもおめでとう。一位で合格するなんて、流石私のレオンよ……」
「三人で毎日魔法の勉強が出来るなんて楽しみだなぁ……!」
「うんうん、俺も楽しみだよ。学校に入って更に強い火の魔法を覚えるんだ。そうだ、これから皆でお祝いでもしようか!」
「お祝い? それならルルも誘おうよ」
「分かったよ、俺から誘ってみるね。ルル! 良かったら皆で合格祝いをしようよ!」
「本当? 私も行って良いの?」
「うん、リーシアがルルと一緒に居たいって。それに俺もルルには世話になったからね! 今日は俺の奢りで食べに行こう!」
俺がルルを誘うと、目を輝かせて嬉しそうにリーシアの手を握った。
既に彼女達は仲良くなったみたいだ。
ルルなら俺の仲間ともうまくやっていけそうだし、何よりゴーストとの戦いでのルルは凄かった。
ルルは安心して背中を任せられる優秀な剣士だ。
俺達はクラッセン先生や、他の先生達に挨拶をすると、学校を出てすぐに酒場に向かった……。




