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1話

「……なんだ、これ」



思わず呟く。

懸念していた遺跡の出口は、あっさり見つかった。

しかし、問題はその先だ。



「日本じゃ……ねえ?」



出口の先。

すぐそこは切り立った崖だった。

その下には荒れた荒野が広がっているが、左を見れば森、右を見ると海があるという、摩訶不思議な世界があった。


当然、日本にはこんな場所はない。ある筈がない。

となると、可能性はひとつに絞られた。



「予想はしてたが、まさか本当に……」



創作物では、もはやテンプレートとなっているクラス転移。それが本当にあって、それも俺たちのクラスが対象にされるとは……


まだ疑わしいが、これを見てしまっては可能性として視野に入れざるを得ないだろう。


……そうなると、いろいろと考ておく必要があるな。

まず問題なのは、異世界の地理が全くもって分からないことか。


こうして上から見渡してみても、見えるのは遥か地平線だけで、それぞれの景色が変わることがない。

抜けるにしても、果てしない距離を移動しなくてはならないだろう。


というか、この崖を降りられるのか? とも思ったが、左に脇道がある。なんとか降りられそうだ。


──他にも問題はある。


魔物や魔獣の有無だ。

もしそんなものが居たとしたら、無力な俺たちは即座に餌にされてしまう。

こういう設定の物語では、クラスメイトたちに何かしらの能力があるのがテンプレだが……



「あ」



もしかして、あの箱か?

あの数字がクラスメイトの出席番号を示しているんだとしたら……いやでも、二人クラス外が居るし、何より1人足りない。

あー……



「やっぱ、確証が欲しいな」



考えること全てに決め手がない。なるほど、論より証拠とは良く言ったもんだな。


……降りてみるか。

上から見た限り、特に生き物の反応は無い。風で木々が揺らいだりする程度で、他はまるで静止画のように停止している。


恐らく小動物程度しかいないのだろう。

もし魔物がいたならそれはそれで危険があることを知れるし、居ないなら安心だ。

それに、もし遭遇したら撒いて戻れば良い。

まぁ、大丈夫だろう。


そう結論付け、早速行動に移した。



「うおっ……高け」



脇道の幅は1メートルほどあるが、崖の高さは余裕で50メートルを越えていて、落ちなければ大丈夫だと分かっていても恐怖心を煽られる。


しかも、かなり風が強く吹いてくる。これは精神にくるな。

というか、この状態で攻撃でも受けたらシャレにならん。即死ぬんだが……あ、これフラグじゃねえか。




と、見事にフラグを回収し、敵に襲われる……ということは無く、無事に降りることができた。


ここまで順調だと何かあるんじゃないかと思えてきたが、あまり不吉なことは考えたくないな。ポジティブに行こう、ポジティブに。



「さて……どこに行くかだが……」



まぁ、これは荒野に決まってるだろう。森は死角が多くて危ないし、海は論外だ。

荒野ならほとんど見渡せるし、何かいたら岩陰にでも隠れられるしな。


この3つの中では一番難易度は低いだろう。










──とは言ったものの、



「足場最悪だな……」



足元がでこぼこしていて、なかなかに体力を消耗する。起伏も激しく、スタートから10分も経ってないのに足がガクガクだ。


……水が欲しい。

そういや、食料や水が必要だよな……どうすんだ?

木の実があるかもしれない森だったら調達は楽なんだが、生憎俺が居るのは枯れに枯れきった荒野だ。


森に移ろうとしても、大分進んでしまったせいでかなり遠くなってきた。

そろそろ戻るか?


荒野だからかも知れないが、魔物どころか動物すらいない。安全性は十分に確かめられただろう。



「方角は……ギリギリ遺跡が見えるから大丈夫だな」



あいつらは大丈夫かな。

なんて考えていると、突然辺りが暗くなった。


なんだ、雲か? さっきまでは快晴だったんだが。



「いや、違う……?」



この影、動いてる。それに、やけに刺々しい上にでかいぞ。

まさかだよな。そんなわけねえよ。



『グオオオォォォォ!』



あ、ダメだこれは。完璧にアタリのやつだ。



「…………」



恐る恐る振り向くと、そこには岩を身体中に纏った……いや、岩でできた竜と言うべき姿のモンスターがいた。

何故か、名前が分かる。


『岩竜』。

レベル140の巨漢モンスター。


……あ、なんかグラ○モスに似てる。



「グオッ!」

「うおぉっ!?」



一瞬、現実逃避に移りかけた俺を引き戻すように、岩竜はその翼爪を降り下ろしてきた。とっさに横っ飛びでかわす。


……レベル140が高いのか低いのか知らんが、少なくともレベル1であるはずの俺より遥か上。勝てる筈がない。



「逃げ……は?」



……今、俺は絶望的なもんを見た。

荒野の地面という地面が動いている。

まるでそれぞれが生きているように、それはだんだんと竜の形をかたどっていき……


荒野全てが、岩竜の巣窟と化した。



「マジかよ……」



俺はずっと岩竜の上を歩いていたのか……もう何体かすら数えきれない。

全ての岩竜が俺をターゲットにしている。


逃げられるか? 何せ相手は巨漢だし、隙間はあるっちゃあるが……



「──っ!」



突然、攻撃を受けた訳ではないのに、胸の奥が裂けるような痛みが襲ってきた。

あまりの痛みに、うずくまって倒れ込む。



「くそ……こんな時に……」



発作だ。

俺に友達ができない理由の1つでもあるが、それは今どうでも良い。


1日に1度起こる発作だが、学校で既に起きていたから油断していた。



「…………」



視界が狭まってくる……

俺の発作は痛みと同時に意識が飛ぶ……こんなとこで気絶したら死んじまうぞ。


でも……動こうにもいつもより痛みが強い。前は自分で保健室に行ける程度だったってのに……



「畜生……」



できることは何もなかった。

為す統べなく……俺は意識を手放した。

独り言多いかな?

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