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プロローグ

この小説を開いてくださりありがとうございます。

拙い文章で頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

何が起きた、とは、恐らくここにいる皆が思ったことだろう。

黒板、机、プリント。先ほどまでの見慣れた中学校の教室はどこにも無い。


辺りを見回してみると、受験でイライラしていたクラスメイトは、まるで信じられないものを見たような顔……いや、その表現には誤りがあるだろう。


今俺たちが居る場所は、コンクリートでできた学校の中ではない。

世界遺産に登録されてもおかしくないような、古ぼけた遺跡の中。

まさしく今、信じられない物を目にしているのだ。


驚きの最中(さなか)、頭のやけに冷静な部分を働かせ、俺はここまでの経緯を振り返ってみた。










「…………」



俺──稲城(いなしろ) 裕樹(ゆうき)には友達といえる人物が居ない。そのため、その1日はとてつもなく密度の薄い、退屈なものだ。


朝はホームルームまで眠り、退屈な授業を聞き流す。大飯喰らいのため、昼休みは大体昼飯を食って終わる。午後の授業も聞き流し、下校後すぐに帰宅。

学校で一度も声を発しない日もあるな。


しかし、俺はよくあるラノベの主人公みたいにコミュ症だったり、カッコいい一匹狼って訳でもない、純粋なぼっち。


とはいえ、今日もその日程に従って生活するのだろうと考えながら席についた時だった。



「な!」



突然、目の前が真っ白になった。まるで厚手の白い布をかぶせられたように、『白』以外何も視認することが出来ない。

ただでさえ困惑する脳に追い討ちをかけるように、体は謎の浮遊感を感じる。


右も左どころか上も下もわからない。そんな混沌の中、唯一正常に働く耳がなにかを拾った。

声とも音ともとれない、まるで鋼を鋸で擦ったような不快な音。しかし、それは明確な意味を持った単語となって俺の耳に届いた。



『おかえり』



その言葉にハッとなった時には、俺たちはこの遺跡に飛ばされていたのだ。


……原因らしきものは一切無かったな。『おかえり』というのも気になるが、もしかしたらたまたまそう聞こえただけかも知れない。


ここは、現状を整理した方が生産的だろう。



「何よここ!」

「おい、ここは何処なんだ!?」

「…………」



人数、面子から推測するに、恐らくこの場に送られたのは、あの時3年1組の教室に居た人だろう。

若干知らない顔が居るが、それは遊びに来ていた別のクラスの奴だと考えられる。



「と、とにかく落ち着け!」

「上田……でもこんなの、落ち着いていられねえよ!」



あいつは……確か学級委員の上田(うえだ) 雄一(ゆういち)か。本人は比較的落ち着いているようだが、この場合は反論した奴が正しいな。



「確かにそうかもしれないけど、雄ちゃんは正しいと思うわよ」

「美玲……」



あれは新川(にいかわ) 美玲(みれい)。学校一とも言われている美貌を持つ少女で、上田の幼なじみらしい。


ちなみに、恋仲だという噂が何度も立ったが、本人達は否定しているというのは蛇足か。


というか、上田は一昔前のラノベの主人公のようだ。ヘタレ気味だが勉強はできるし人望もある。その上美人の幼なじみが居るとは、典型的過ぎて逆に笑えてくるが。



「わ、わかったよ……」

「まぁ……テンパっても仕方ないか」

「うん。上田君と新川さんが言うなら……」



まぁ、この場は人望のある二人に任せておこう。幸い、俺たちは田舎の中学だったからクラスには26人しか居ない。+αで2人ほど居るが、このくらいの人数なら、あいつらに任せておけば問題ないはずだ。



「さて……」



少し周りを見に行くか。流れからして点呼でもされそうだが、ぼっちの俺が消えた所で誰も気づくまいし。


一応ドッキリの可能性も考えてはいるが、ここは見るからに人の手が入っていない。

逆に、ドッキリだったら日本の技術力を讃えるまである。



「……って、俺はなんでこんな落ち着いてんだよ」



周りは上田のおかげで少し落ち着いて来たくらいだというのに、俺は下らない事を考えられる余裕がある。


……昔から変わり者変わり者言われてきたが、ちょっと自覚した。


そうして俺は、揃って上田の方を向くクラスメイト達の後ろを通り、中庭のようなこの場所から出た。


一瞬誰かに見られた気がしたが、まぁ気のせいだろう。

確かに身長は180前後で決して目立たない方ではないが、あれだけ視線が一点に集中していればまず気づかれない筈だからな。



「っと、早速分岐路かよ」



この遺跡はマチュピチュの石壁を高くしたような形状のため天井がなく、空が見える。登って上から覗けばすぐに分かるから迷うことはないだろうが、面倒だ。



「……右だな」



人は本能で右を選びやすいらしいが、今本能に逆らったところでなんだ。そこまで広い訳でもなさそうだし、あまり時間は無いから早めに散策しきった方が良いしな。


そうして、やけにくねくねとした道幅の狭い道を歩くと、四度目の角を曲がった突き当たりに小部屋を発見した。



「ここは……?」



出口……という訳ではないようだ。20畳ほどの部屋に、縦30センチ、横2メートル程の重厚そうな金属の箱がいくつも置かれていた。



「2、4、6……27個?」



謎の数字だ。

あり得ないが、もしこの場所に送られてきたクラスメイトの人数を表しているなら、28でなくてはならない。


とりあえず手近にあった箱の蓋に手をかけると、蓋のずしりとした重さが腕に伝わってきた。



「……開かない……?」



どんなに力を込めてもびくともしない。力には自信がないわけではないんだが。鍵が必要なのか?



「ん?」



よく見ると、蓋には『3』と彫られていた。これが開かない理由と関係しているのか……?



「……考えてもキリねえな」



それよりも外に繋がる道を見つけなきゃな。一応これも大事な発見だし、後で上田にでも伝えとけば、すぐに行動に移してくれるだろう。


あー……消去法でいくと、出口はさっきの分岐路を左か?



「……行くか」

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